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第14話 ようやくのカミングアウト

 イっちゃうと終わってしまう。 懸命にイかないようにしていた。なのに、私の躰は急激に絶頂までの坂を登り始めていた。イキナリ抱き起された。だけど、私の躰に松本が刺さったままだ。 「う、あ……」  自重で、深く呑み込んでしまう。 トンネルの行き止まりを先端でぐりぐりと擦られている。私の入口が根元を締めてしまったからなのか、ナカの松本の増量感が半端ない。 (もう少しでイけたのに)  ここまでくると、我慢より達したかった。 それを無理矢理にストップされて、切ないし苦しい。松本の肩に手を置き、無意識に腰が揺らめいてしまう。 「そんなに、俺が嫌いか」  瞑っていた眼を思わず開けてしまったのは、松本の声に深い絶望があったからだ。 眼の前にあった松本の顔は、さっきまで私を意地悪そうにイタブって優位だった時と全く違っていた。哀しそうな貌に思わず、手を伸ばしてしまった。 「……どうして、そんな哀しそうな貌をしているの」 出た声は掠れていた。 「お前が、俺を好きだって言ってくれないから」 (なんだよ、それ) 弟が、まだ小学生で拗ねた時によくやってた。 (我儘だなあ) 私は呆れてしまった。 「松本はブンブンが好きなのに。どうして、私の心も欲しがるの」 つい、口に出てしまった。 「は? 」 松本が眼をぱちくりしてみせた。 (やばっ)  私は口を噤んだが、手遅れだった。 とうとうあのイラストを、私が持ったままであることをバラしてしまったのだ。言い訳を口にしようとしたら、先に話しかけられた。 「藤倉の事を俺が好きって……。なんだよ、それ。何時、何処で? 」 (小学生か、その尋問の仕方) 「お前、俺のスケッチを拾ったんだよな? なのに、なんで。そう思ったの」 (決定か) コイツの中では最初っから私が中身を知ってて、持っている事で揺らがなかったんだ。 「だって、セーラー服」 高校の時の、ブンブンでしょう? 「ウチの高校は男女共にジャケットだ」 ……そうなの?じゃあ、あれは誰。古びた感じからすると、現役の高校生って感じでもないけど。 (まさか。カテキョーの生徒なの?! ) だとしたら、私の知らない”FF”でも可笑しくないっ。私が青ざめていると、松本が話し出した。 「あれは高3の予備校の時に書いたスケッチだ」 (そんな前から) 「”FF LOVE”って」  そう呟けば、松本は頬をほんのりと染めた。”可愛いな、こん畜生めぇ♡”とか。絶対に思わないからっ! 「あれでバレたと思った。でも、きちんと告白したかったのに、ずっとお前に避けられてた」 「……私に、ブンブンへの橋渡しを告白したかったって事? 」 恐る恐る訊ねながらも、御免だと思った。 (そんなの、勝手にやれ) ん? とでも言うように、松本が私の眼を覗き込んで来た。 「あのスケッチを見て、しかも”FF”て書いてあるのに。どうして藤倉だって勘違いする要素があるんだ? 」 「え、だって”FF"って」 私、ブンブンの他に知らないもの。 「俺の知り合いに、FFってイニシャルは一人しかいない」 「……私もFFなんだけど」  ハイハイ、どうせブンブンの事でしょうよ。ちょっとイラついて、嫌味を言ってみた。 (そんな事も意識してなかったのか、コイツ) ムカついて、ホッペを抓ってやりたくなる。 「そう。俺の知り合いの中でFFは、藤代 誌歌お前一人だけだ」 「……はい? 」 (何を言っちゃってんの、コイツ! ) 有り得ない返答に、私はまじまじと松本を見て、詰問してしまった。 「なんで、そこでブンブンを忘れるのよ! 」 まさか、イニシャルを意識してない位、ブンブンの事を好きなの?  (もしかして、既に”俺のヨメ”扱い? 松本の中ではもう、ブンブンは『松本 文』になってるのっ? ) 松本は眉をしかめた。 「お前、藤倉のフルネーム何だと思ってるんだ? 」 (何言っちゃってんの? ) そんなの、3年前の新歓コンパから知ってるよ。 「ふじくら・ふみ」 はあああ、と大きいため息をつかれた。繋がっている私の躰も上下した。 (あんっ) 「違う、アイツはアヤって読むんだ」 「えっ! 」 耳元で思いっ切り叫んだので、松本がのけぞった。
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