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第12話 USO800

「あんたなんか、大っ嫌い! 」  辺りに響く大絶叫に、一瞬周りの音が聞こえてなくなった。売り言葉に買い言葉。私は喧嘩した勢いで、そう叫んでいた。 (どうせね、負け犬の遠吠えよ) あれだけ、”如何に私が松本の事を好きか”って説明されてしまった。私がアイツのこと大好きなのは、他ならぬアイツがよく知っているのだ。 『またまた。俺のこと、スキな癖に』  いつもだと私が真剣に怒ると、松本はそれまでの表情をがらりと変えてくる。気を反らそうとするのか、剽軽な態度を取ってくる。そして、油断させて核心に迫ってくるのだ。 --だから今日も、そう揶揄われて、私の嘘はすぐばれると思ったのに。 「っ、」  何故か、アイツは顔を歪ませて。それから、すうっと表情が無くなった。 (アレ? )  アイツは私の手を掴んで、ずんずん歩くと一軒目に見つかったラブホテルに躊躇うことなく、入っていった。  床には、二人の下着とか洋服とかが散らばっている。 (ああ、地べたに放り出された下着をもう一度着けなくちゃいけないんだ) もう、替えないのに。 (せめてソファの上に放って欲しかったなあ) 考えてみれば、シャワーだって浴びてない。 (汗臭いよね、私)  でも、ここで”タイム!”とか言っても無効にされるんだろうなあ。汗臭いのはお互い様なんだけど、私は松本の匂いが嬉しいから。だけど、女子としては自分の匂いは気になるってものです。 「ヲイ、コラ」  ドスの聞いた声に、意識を戻した。真っ黒でキラキラ光っている瞳が私を見降ろしていた。 「なに、余裕かましてんの」 「別に」 (そうでもしないと、凄い事になっちゃいそうだからだよ) なんて、絶対にカミングアウトしない。 「俺のこと、スキ? 」  アイツが私を穿ちながら訊くから。 「ア、ン、タ、な、ん、か、き、ら、いっ」 (ホントの事なんて、言うもんか! )  アイツが与えてくる振動のせいで。言葉がいちいち、飛び跳ねる。 「! 」  すると、アイツはおっぱいとか、くっつきあってる部分の上の珠なんかをねちっこく触ってくるのだ。きゅう、とアソコが締まってナカの松本を抱きしめてしまう。 (大っきい!) みちみちと蜜路を埋め尽くすその感覚は、凄く気持ちがいい。口や手で、あちこち触られている処も気持ち良すぎて、私は喘ぐことしか出来ない。アイツが耳をしゃぶりながら、もう一度尋ねてくる。 (耳を舐めながら、熱い息を吹き込んでくるとか反則だから! )  また、締ってしまう。 「俺のこと、スキ? 」 その声は確信に満ちていた。  ラブホテルの名前は『USO800』。 偶然かもしれないけれど、”私が嘘をついてるのは御見通し”っていう松本からのメッセージにも思えた。 これだけ、きゅうきゅう締っている。私の躰が悦んでいるのは、バレバレだ。 (これはバレてないかもしれないけれど)  松本に抱かれている。 この事実が、私の心身に及ぼす影響は絶大だ。彼に触られた処は、どこもかしこも感じてしまう。松本がくれる刺激に酔ってる処なんて見られたくないのに、見て欲しいと思う。重なる肌の感触と重さが、どうしようもなく嬉しい。 (この時間が永遠に続けばいいのに)  もしくは天井が落っこちてきて、繋がったまんまの私と松本を一瞬で潰しちゃえばいいのに。 だけど、私は嘘をつく。 「ア、ン、タ、な、ん、か、き、ら、いっ」  燃え盛った眼とは反対に、極寒の口調で囁かれた。 「なら。俺の事を好きで仕方なくさせてやるよ」  更なる突き上げと、激しい愛撫が再開された。私は揺すぶられながら、思う。 (だって)  スキって言ったら、終わっちゃうでしょ。 今、こうしてエッチしているのは、私が”嫌い”って言ったからだ。自分の事を好きだと思っていた女が実は自分の所有物じゃなかった、とわかったから。子分にしたいだけなんでしょ。 (せっかく抱いてくれたのに)  勿体なくて。終わらせることなんて、出来ない。
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