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第14話 輝宮の休日1

【SIDE:輝宮弓弦】 「輝宮先輩!! す、すみませんっ、お、遅れてしまいましたっ」 「……ん?」  ぼんやりとしていた思考が、少し焦った愛らしさを含んだ声音によって覚醒を促された。  ……自分は、今、何をしていたのだったのか。  息を切らして駆け寄ってきた少女の可愛らしい浴衣姿に、輝宮の相好が和む。  耳に届く祭囃子の音色。周囲を行きかう人々の装いは夏の風情にあったものばかりだ。  あぁ、そうだ。自分は恋人の柚奈と夏祭りに行く約束をして、この待ち合わせ場所で待っていたのだった。 「可愛いな」 「えっ!? あ、ありがとう、ござい、ますっ。……輝宮先輩も、……あの、その浴衣姿、と、とても、素敵、です」 「ありがとう」  輝宮の方が恋人の愛らしい姿に倍以上は胸をときめかせていたわけだが、彼は柚奈の頭を撫でそうになった手を引っ込め、彼女の細く小さな手を取った。  町の小さな祭りだが、最後には花火もあるそうだ。  大学や、他の場所で群がってくる女共が望む豪華なものなど何もない場所とイベント。  だが、柚奈は包み込まれた恋人のぬくもりに喜びの熱を抱き、彼の横に並んで歩きながら、祭りの賑わいに好奇心いっぱいの眼差しを向けている。 「か、輝宮先輩っ! わ、綿菓子っ、綿菓子買ってもいいですか?」 「あぁ。一緒に買いに行こう。俺も食べてみるか」 「? ……綿菓子を、ですか?」 「似合わない、って、今にも噴き出しそうな顔だな?」 「うっ、い、いえいえっ!! い、意外だとは思いましたけど、……ふふ、嬉しいですっ」 「何がだ?」  微かに肩を震わせながらも、何だか嬉しそうな顔で見上げてくる恋人の蕩けるような笑顔に、輝宮の胸がさらに高鳴っていく。   「輝宮先輩と一緒にお祭りに来れて、その上、同じ物を食べたりして時間を共有できるのが、すごく、嬉しいなぁ、って、そう思いまして」 「――っ!!」  無自覚だな、あぁ、無自覚に違いない。  何を言えば輝宮が喜ぶか、この愛らしい恋人は無意識に悟っているのだろう。  いや、柚奈という存在そのものが、輝宮の喜びのツボを全て押さえている、のか。  女にモテ過ぎて困った経験は多いが、本気の恋に対する免疫は……、ない。  いや、柚奈に出会うまで、輝宮は正真正銘の女嫌いだったはずだ。  金や権力に縋って美味しい思いをしたい大量の害虫を目にする度に悪態を吐きたくなる事が多く、告白などをされても、嫌悪感しか感じない。  中には、損得関係なしに輝宮を想ってくれた相手もいたが、心が動く事はなかった。  それなのに……、あぁ、この少女は難攻不落の砦を正面から易々と突破してくる猛者だ。  好きになってしまったのは確実に自分が先だと自覚はしているが、……どこまで好きになってしまうのか。輝宮は赤くなった顔を横に逸らして柚奈の手を引っ張り、道を急ぎ始めた。  早く綿菓子の出店を見つけよう。柚奈の視線をそっちに向けさせて、その間にこの熱をどうにかしなくては。  ……だが、どうかこの胸の奥で心を擽っている喜びの気配だけは、消えないでほしい。 「――先輩!! 輝宮先輩!! 今の、すっごく綺麗でしたね!!」 「そうだな。この町の規模にしては奮発した物だったな。まぁ、客寄せには多少の損も必要だろうが、……とても、綺麗だったな」 「はい!!」  と、微笑んだものの……。  隣にいる恋人の袖を引っ張ってはしゃぐ少女の笑顔の方が、何にも勝る美しい華だと、輝宮はそう思っていたが、口に出来なかった。  背伸びをして自分を見上げながらまだ花火の感想を伝えてくる少女に、完全に心を奪われ、見惚れてしまっていたから。 「柚奈」 「はい?」 「親には……、ちゃんと言ってきたか?」 「……は、はぃっ。友達の所に泊まる、って、そう、言って……、出てきました」  求めているのが自分だけではないと、柚奈の気恥ずかしそうな表情の中に、その瞳に、輝宮は彼女もまた、深く愛される事を望んでいるのだと感じ取り、喉を小さく鳴らした。  柚奈の手を掴み、祭りの行われている神社の敷地内を早足で急ぎ、隣接している小さな竹林の中へと入っていく。 「あ、あのっ、ま、まだ帰らないんですかっ!? 皆、あっちの方から帰って」 「……」 「先輩? 輝宮、きゃっ!!」  祭りに参加する者の中には、その賑わいの気配や、恋人の艶やかな姿に男心を煽られ……。   「んっ……、ハ、ァ、……んんぅっ!」  輝宮のように、頃合いを見計らって茂みの中や人のいない場所に潜む場合も、ある。  竹林の中で柚奈を抱き寄せ、ずっと堪えていた欲情を瞳に滲ませる輝宮。  しっとりと柔らかな唇を啄み、浴衣越しに柚奈の感触を手のひらで味わっていく。 「んぁっ、……や、ぁ、……そ、外、ですよ、ここっ」 「柚奈……、気にするな。ここに誰か来るとすれば、それは俺達と同じ目的の奴らだ」 「やぁっんっ、……はぁ、はぁ、せん、ぱ、……んっ」  太い竹の幹に柚奈の背中を押し付けながら、輝宮は浴衣の合わせ目を乱して中の膨らみを引き摺り出した。親に言われたのか、それとも自分が選択したのか。  柚奈は下着を身に着けておらず、輝宮の大きな手のひらに直接その膨らみがおさまってしまった。少し汗ばんでいる肌。指の隙間からぷくっと顔を覗かせた桃色の突起がとても愛らしい。 「だ、め、……ぁっ、……輝宮、せん、ぱぁ、……ひ、ァアッ」 「花火大会の前や最中に消える奴は多いが……、お前が楽しみにしていたからな。最後まで辛抱した俺は、待ての出来る良犬だろう?」 「ぁんっ、……い、犬、って、……ハァ、……ァッ、あ、ぁぁっぁ、せん、ぱ」 「俺は、お前に飼われるなら犬になっても後悔はない。……だが、そうなると、こうやってお前に触れたり、悦ばせる事に苦労しそうだからな。やはり人間の方が……、愛し合う行為においては便利だ。色々とな」 「ふ、ぅぅっ、……ぁっ、あああっ」  左右に大きく開いて両胸を外気に晒させ、濡れた舌で右胸の突起を舐めまわし、輝宮は徐々に帯の下へと顔を移動させ……、柚奈の秘部を可愛がる為に足を開かせた。  どうやらこちらの方には下着を身に着けていたようだが、どうせ無駄になる。   「柚奈、……柚奈、お前の可愛いココが、待ちきれずに漏らし始めているようだぞ?」 「んやっ! せ、先輩が、先輩、へ、変な事ばかりするからっ。あっ、……ハァ、ぁ、……ぁあっ、やっ、ぁあ、……ひぅぅっ」  ショーツの中心を横にずらして秘部を舌先で弄ってやれば、すぐに可愛い声が輝宮の耳を楽しませてくれる。期待を抑えきれずに蜜口から漏れ始めた愛液が、男の巧妙な舌の感触に悦び、奥へ誘い込もうと腰を揺らす。 「あっ、……ひ、くっ、……ァアッ! んんっ!! や、やぁぁぁっ、……せん、ぱ、……ハァ、ハァ、……ぁあぅぅ、……んんぅぅぅっ!!」 「ちゅっ、……んっ、柚奈、……ちゅっ、中にも欲しいだろう?」 「えっ、ぁあっ! い、いやぁあっ」  ぐちゅりと、輝宮の舌が柚奈の蜜口を抉って膣内へと忍び込んでいく。  輝宮が入り口の辺りを意地悪く嬲りながら柚奈を見上げる。  こんな、誰と出会うかもしれない場所で男の好きにされている事に怒っているのか、それとも、女としての本能が野外での行為に悦んでいるのか。  まぁ、後者の可能性が高いだろう。こんなにも絶え間なく蜜を漏らしているのだから。 「ぁっ、あっ、……ふ、ぁ、……ひ、ぁぁんっ、やぁ、……だめ、だめぇっ」 「んっ、……んっ、……ちゅっ」  乱れた浴衣。開かされた足の間に埋まっている男の頭部。  生暖かい夜の気配に交じって小さく響く、少女の淫らな声。  逃がしはしないと、蜜口の中でぬるりとした舌を動かし続けた輝宮は、やがて小さく彼女が震え、声を抑えながら果てる様を愉しげに見届けた。   「はぁ、はぁ……」 「車の中だけじゃなく、こういう場所でも感度が良くなるんだな」 「うぅぅ……っ!! も、もうっ、嫌です!! こ、これ以上は駄目ですからね!!」 「……その場合、我慢に我慢を重ねてこうなった『コレ』を、お前が口で慰めてくれるのか?」  そうニヤリと嗤って輝宮が指差したのは、男性用の浴衣越しに反り返り大きくなっているアレの姿だった。愛しくて堪らない恋人に煽られ続けたのだ。  こちらもこの想いを受け止めて貰わなくては割に合わないだろう。   「な、なんでそんなにおっきくなってるんですかぁ……っ」 「安心しろ。ゴムは持ってきた」 「準備良すぎですよ!! 輝宮先輩っ、頭の中どうなってるんですかっ!! 一体!! スケベ!! 変態!! 悪魔!!」 「……お前と出会ってからは、お前の事ばかりだな。会ってる時も、会ってない時も、お前の事を抱きたくて堪らない」  普通にそう伝えてみると、柚奈は怒った顔になってまた酷い罵倒の言葉をぶつけてきた。  だが、本気で言っているわけでもなく、音に親しみがあるので、輝宮にとっては何故か嬉しく感じられてしまうご褒美のような罵倒だ。   「惚れたんだから仕方がないだろう? ただのヤリたいだけの感情じゃなく、好きになった女を身体の、いや、心の内側から俺の愛で満たしてやりたいという」 「ぁああああああああああああああっ!! そ、そういう恥ずかしい事を物凄く嬉しそうな顔で言わないでくださいぃいいいいいいい!! だ、駄目です!! 今度は、押して駄目なら引いてみろ的な寂しそうな顔で続きを催促しないでください!!」  普通だったら、こんなギャグ的な反応で抵抗して来られれば、逆に萎えてしまう事だろう。  柚奈は普通の、いや、何をもってして普通と言うべきか……。  いや、ともかく、他の女子とは少し違っている彼女が見せるこういう反応も、輝宮にとっては今までにない最高に楽しいと感じられるものだった。   「柚奈、……お前の中で俺をあたためてくれ」 「今は真夏です!! 真夏です!! 熱中夜万歳なんです~!! って、きゃああああっ!! 何素早くゴム装着して挿ってこようと、ちょっ、や、駄目です、って~!!」 「んっ、……く、……はぁ、柚奈、……柚奈っ。限界だ……、お前のノリツッコミ漫才の相手は後でしてやるから……、ハァ、……もう、こっちに集中してくれっ」 「んぁあっ、……ぁっあっ、……だ、め、……んんっ、はぁ、はぁっ、せん、ぱぁっぃ」  柚奈の片足を抱え、下から熱く滾っている欲望をずちゅりと突き入れ、輝宮は性急に求め出してしまう。自分がこの少女を女に変えた。女にはあまり触れたくも、関わりたくもないと思っていたのに、柚奈に対してだけはこの衝動を抑えられない。  触れたい。手や足、唇、額、首筋、胸、それ以上に、自分だけに許されたこの秘められた場所に埋まり、奥まで行ける限界まで、彼女に触れたい。 「んぁあっ! あっ、……はぁ、……ァァッ、……輝、……みゃ、……せん、……ぁああっ!!」 「柚奈、……柚奈っ!! んっ、……んんっ、……はぁ、……くっ、……んっ、……ちゅっ、……はぁ、はぁ、……柚奈、……柚奈、愛して、るっ」 「せん、ぱ、……はぁ、はぁっ、……ぁっあぁあっ! やぁああっ、だめぇっ!!」 「はぁっ、ハァッ……!! お前は、……俺の、……柚奈、柚奈、……好きだっ、ずっと、ずっと、俺の、傍に……、くぁっ」  輝宮の激しさに、柚奈が両胸を揺らしながら翻弄されている。  止める事の出来ない腰の動きが柚奈を襲い、蕩けている蜜口を逞しい肉棒がずちゅずちゅと卑猥な音を零しながら抽送し、一人の男しか知らないその場所を乱暴に掻きまわす。 「傍、に、……はぁ、はぁ、……ずっと、俺の傍に、いてくれ。柚奈……っ、はぁ、柚奈、柚奈……!! 絶対に、離れないで、……ぐっ、ハァ、ハァ!! 柚奈っ!!」  たとえ、まだ正規の職に就いてはいなくとも、輝宮は株や他の事で多くの財を成している。  柚奈の意思を尊重した上で、と考えてはいるが、出来れば、彼女が高校を卒業次第、結婚したい。誰にも彼女を奪われないように。柚奈の愛情を、心を、この手にする為に。  勢いよく身体を揺さぶられ突き上げられ翻弄されていた柚奈が、涙目になって輝宮に何か言おうとしている。輝宮は一旦動きを緩め、彼女に顔を寄せていった。 「……ま、す」 「柚奈?」 「はぁ、……はぁ、……んっ、私、は、……弓弦さんの、事、が、……大好き、だから……、はぁ、はぁ、……絶対、……ぜっ、たぃ、に、……離れ、……な、……ぁああっ!!」 「柚奈っ!!」  結婚の話は別としても、柚奈は確かに約束をくれた。  離れない、ずっと傍にいる、と。  輝宮は喜びのあまり加減を忘れてしまうと、そのまま柚奈の唇を奪いながら絶頂を迎えた。 「はぁ、ハァ……!! くぅぅっ、はぁ、はぁっ!! もう、……柚奈っ」 「ぁんっ、ぁあっ、あっあっ!! ハァ、はぁ、せん、ぱっ、……私、もっ」 「柚奈――っ!!」  渾身の力で柚奈の最奥を突き上げ、輝宮は避妊具越しに喜びの熱を大量に吐き出したのだった。  ――ピピピピピピピピピピピピピ!!!!!!!! 「……ぁ?」  けたたましい音と、自分の間の抜けた掠れ声で目が覚めた。  真っ白な天井が視界いっぱいに広がっている……。ここは、どこだ?  のっそりと気だるい身体を起こした輝宮が見たのは……、いつもの、自分の部屋。  白い殻から元気よく何度も顔を出して鳴いているヒヨコ……、のような目覚まし時計のそれを軽い手刀で黙らせ、……大きな溜息を吐く。  夢だった……。夢だった……。……あの頃の、実際に出かけた先の祭りの場所で柚奈と愛を交わした日の再現そのままだったが、……柚奈の可愛いイキ顔を見逃した。最悪だ。 「はぁ……。ついでに、こっちも最悪だな」  毛布をぺらりと剥ぎ、視線を下に落とすと……、残念な夢精の跡が。  朝一の洗濯だな、これは。輝宮はベッドから下りて昨夜の内に用意しておいた着替え一式を手に持つと、洗面所へと向かった。  今日は日曜日だ。……とあるイベントに恋人が出かけた事は把握している為、孤独な休日が決定しているわけだが。  本人はきっと友達との約束がどうとか書置きを残していそうだが、輝宮にはお見通しだ。  案の定、キッチンを通りかかった際にテーブルの上を見ると、書置きを発見した。  予想通り。……そして、律義に朝食が用意されていた。 「普通にトーストでも食べる気だったが……。脅迫されているくせに、律義にも程があるな」  クスリと零れ落ちた微笑ましそうな音。  輝宮は卵焼きや焼き魚など、一通り揃っている和食の光景を見渡し、洗面所に急いだ。  さっさと汚れ物を洗濯機に叩き込み、愛する妻の手料理を味わうとしよう。  ここに柚奈本人がいれば、勝手に関係を進めないでください!! と、そう怒るに違いないが。 「……ん? 誰だ?」  寝室から聞こえてきた携帯の着信音を耳にし、輝宮は洗濯機のスイッチを押してから寝室に戻った。急患か? それとも、病院の関係者か……。  だが、ディスプレイに表示された名前は残念な相手のものだった。  携帯の音を無視し、キッチンに戻る。――華藤(あの馬鹿)の相手などしていられるものか。 「ふぅ……」  それにしても……。柚奈の趣味や楽しみを邪魔する権利などないと思い、陰でコソコソと何かやっていても口を出さずにいたが……。  同人誌即売会なるものには、確か、男も来るはずだ。  過去に柚奈から聞いた話によれば、売り子をしていると時々変な人に絡まれたりする事もある、とか何とか言っていた気が、する。  まぁ、今まで無事だったという点で考えれば、柚奈はあしらい方を心得ているのだろう。  そこまで過保護に心配する必要はない。ない、が……。 「…………」  もぐもぐと、手料理の腕前がプロ級と言っても差し支えないほどに素晴らしい恋人の味を堪能しながら、輝宮は暫し思考を彷徨わせる。  柚奈が帰って来るのは、夕方頃のはず。いや、イベント会場の近くにある漫画やアニメの関連物がどっさりと売ってある店に寄る可能性も考えると……、帰りは夜、か。  それまで自分は何をしていればいいのだろうか?  などと、御年二十七歳のいい歳こいた大人の男が哀愁を帯びた顔でシュンッと……、子犬のように顔を俯けてしまう。  やる事なら幾らでもある。だが、柚奈と再会し、このマンションで一緒に住むようになってから……、どうにも、不安が付き纏って仕方がない。  脅迫という卑怯な手段で繋ぎとめたところで、柚奈を一生縛っておけるわけでもない。  彼女も気づいている、いや、わかっているはずだ。  輝宮が大事な恋人の痴態を他所に流す事などあり得ない、と。  それでも柚奈が輝宮に従っているのは、脅迫されているからでも、輝宮が怖いからでもない。――同じ気持ちだからだ。  なんでもいいから、お互いに寄り添いあい、傍にいたいのだ。  だが、……柚奈が心に抱えている何かを突き止めない事には、安心などまだ先の話だろう。 「……はぁ」  素直に話せばいいものを。どんな話だとしても、輝宮は柚奈を丸ごと受け止める気でいるのだ。 「あれだな。とんでもない罪悪感を抱えている、というのは、顔を見ればわかる事だが……」  柚奈が時折見せる、拒んでいる時の顔。  なんというか、……あの物凄く微妙な絶望感満載の顔はなんだろうかと、輝宮は得体の知れない表情の意味に恐怖を感じていた。  普通の女性が恋人に隠し事や後ろ暗い事を胸に抱いている時の気配に当てはまるとは思うのだが……。何か、根本から種類? が違う気がしてならない。  踏み込んではならないカオス領域。……何故だか、そんな気がしている。  だが、知らなくては前に進めないのだ。何が何でも調査を進め、柚奈の心から澱を取り除いてやらなくては。  と、輝宮が大好物の卵焼きをしっかりと堪能し、喉の奥に流し込んだその時。  コンシェルジュからの連絡を知らせるチャイムが鳴った。  玄関の近くにある受話器を取り、応答用のボタンを押して用件を聞く。 「――という事でございまして」  付属の画面には、コンシェルジュの男性が困った表情で頭をぺこぺこ下げている。  貴重な休日が、さっき無視した馬鹿によって台無しにされようとしているようだ。  輝宮は仕方なく自分の部屋の道を開かせ、――同僚の外科医、華藤を通す事を許した。
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