7 / 23

第7話 車内での問答

「一年習っても、男一人振り払えないなら時間の無駄だな」 「ふ、不審者と、知り合いに対してじゃ、対応が違って当然じゃないですかっ。隼人先生は私にとって……、あの道場に通うきっかけをくれた恩人みたいな相手だから、……だから」 「恩を盾に取られていれば、触らせて当然と言いたいわけか?」 「そ、そういうわけじゃ……」  相楽道場を後にし、近くの道路に停めてあった輝宮の銀色のセダン車に乗り込んでから十分ほど。……ありったけの文句をぶつけてやろうと思った柚奈は、彼の纏っている怖い無言の威圧感に怯え、結局何も言えないままだった。  比較的空いている車道を走らせながら、ようやく口を開いてきたかと思えば……。  柚奈は助手席で自分のバッグの取っ手を弄りながら、輝宮の方を見ないようにしながら言葉を濁す。 「べ、別にいいじゃないですかっ。気分転換の意味もあるんですからっ」   「で? あのわかりやすい猿との帰り道にも、お前は楽しみを見出しているわけか? ヘタレな奥手猿でも、いずれは本性を出すぞ」 「そういう下品な言い方はやめてくださいって……、この前言いましたよね? 私は貴方に脅されて仕方なくこうやって一緒にいますけど、貴方の奴隷になったつもりはありません。昔の憂さを晴らしたいのなら、さっさと抱くなり、傷付けるなりしたらどうですか? ……早く、こんな事終わらせてください」  耐えよう。何をされても、それですぐにこんな……、逃げ出したくて堪らない、心を甚振られ、嬲られるような日々がすぐに終わってくれるのなら……。  だが、輝宮の視線を一度感じた後、車内はまた無言になった。  柚奈が自棄になっていると見抜かれているのか、……彼の唇から零れ落ちた小さな溜息に胸が痛む。わかっている。輝宮にこんな真似をさせているのは、あの時に選んでしまった道のせいだと……。だから、――私は。 「先輩……、お話します。私が貴方と別れた理由は」 「別れてない。お前は今も、俺の――」 「貴方に、うんざりしたからです。告白してきた時だって、私は一度お断りしました。だけど、先輩は自分が振られるのが許せなくて、強引に付き合いを始めたんです……。私は、貴方の強引さに流されていただけ。都合の良い人形扱いは、もう、うんざりっ!!」  追いかけないで、縛らないで、……私の心を抱き締めないで。  輝宮弓弦という存在の傍にいると、柚奈の『本音』が顔を出してしまいそうになる。  あの時、別れを選んだ……、いや、逃げた理由と、自分の愚かさに苛まれて……。  わざと睨みつけるように輝宮の方を振り返った柚奈は、自分の事を嫌ってほしい、もう、傍に置く価値もない用なしの人形だと彼に思ってほしくて……、その先で、見てしまった。 「――っ」  丁度、輝宮のマンションの近くで停まった車。  彼が柚奈に見せた……、寂しそうな、辛そうな、顔。  ゆっくりと伸ばされたその手が、柚奈の頬を優しく撫でてくる。 「嘘が下手だって……、何度も教えてやっただろう?」 「……ぁ、……あ、ぁぁ」  声が、……輝宮の優しい声音と、あたたかな感触に震えてしまう。  また、自分を思い通りにしようと、淫らな行為を強制してくるかという予感はあったけれど……、こんな反応、こんな、……哀れまれているような視線を、想像なんてしていなかった。どんな嘘を重ねても、輝宮には見抜かれてしまう。  ……いや、もしかしたら、……知っているのかも、しれない。  だから、何を言っても、通じない?  身体に走る甘い疼きと、……彼に対して抱き続けてきた罪の意識が、柚奈の身体を、心を震わせていく。  輝宮は柚奈の額に、やはり変わらない優しいキスを与え、その耳元に囁いた。 「もし、本当にお前が俺を憎む程に嫌いになっても構わない。それで俺の心が変わるわけでもないからな。――俺はお前を愛しながら死んでいく。絶対に、お前の事だけを想い続ける」 「――っ」 「人が本気で過ごしていた時間を遊びだ何だと言ってくれたが、あれが遊びだったなら、俺は気が狂った暇人か何かだったわけか? ――抱く度に、お前は一体何を感じていたんだろうな?」 「か、輝宮……、んんぅっ!」 「……待ってやるつもりだったが、時には荒療治も必要だな」  夜の通りに人の影がないかどうか確認もせずに塞がれた柚奈の唇。  彼の腕や胸にしがみつき抗う柚奈の柔らかな唇を無理矢理に開かせ、輝宮が濡れた舌をねじ込んでくる。苦し気な柚奈の吐息が漏れても、途切れがちな抵抗の声を耳にしても、彼は口内で舌を絡め擦りつけながら角度を変え、深く、深く……。 「んっ、……ハ、ァ、……い、……ゃ、ぁ、……んんぅぅっ」  車内での動きづらささえ乗り越え、輝宮が助手席の窓に柚奈の両手を押さえつけ、下ろされた右手がスカートの中に潜り込んでくる。  もう、熱くなっている大きな男性らしいしっかりとした硬い手が滑らかな太腿をいやらしくまさぐり、輝宮の漏らす低い吐息に柚奈の奥が疼く。 「本当……、お前は鈍い女だな。……俺と、あのヘタレ猿の違いが、まだわからないのか? ……お前が触れられて悦ぶのは、……誰に対してだけか」 「んんっ、……や、ぁ、……っ、……せん、ぱ、……ァッ、……ハァ、……はぁ、ァあっ」 「……ンっ、……あぁ、……焦らされすぎて、お前のココも積極的になってるな。あのヘタレ猿が見たら興奮してその場でイクんじゃないか?」 「はぁ、はぁ……っ、せん、ぱ、ァぁ、……あっ、あぁあっ」  クロッチの部分を擽っていた輝宮の手がショーツの中にするりと入り込み、彼の愛撫に従順な蜜口にくちゅりと硬い感触が押し入ってくる。  重ねられていた唇が、輝宮の興奮の度合いが強くなり、さらに激しく求められながら、柔らかな肉壁の弱い部分を抉りつけられ……。 「……ハァ、……柚奈、少し我慢してろ。駐車場に車を移動させる」 「ぁっ」  今すぐに挿れたい衝動を抑え込み、輝宮が柚奈の首筋を舐め上げ耳にしゃぶりつくと、……ようやく離れてくれた。……力が、入らない。抵抗する意志が、……出て、こない。   「ほんの少しの我慢だ。……遊び相手じゃない、本気の相手にしか見せない俺の一面を、夜通し見せつけてやる」 「せん、ぱぃ……」  罰なのだから仕方がない。そう思うよりも……、柚奈の心は数年ぶりに味わえる輝宮の熱を予感し、蜜口をヒクリと疼かせた。  
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい

ともだちとシェアしよう!