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先ほどの茜色の夕焼けから一変、 空はあっという間に漆黒の闇に覆われた。 しかし風は収まること無く吹き続けてるせいか、雲の流れはとても早い。 タワーマンションの最上階から眺める東京の夜景は、とても綺麗で宝石箱を散りばめたような輝きだった。 ・・・でもこの場所はどうも居心地が悪い。 街を見下しているような感覚になる。 自分は誰よりも成功し優れた人間だと錯覚してしまいそうな気分になるからだ。 それ以上に―――! ガチャ。 その時背後から扉が開く音が聞こえてきて、 私はそのまま夜景から扉へと目線を向けた。 「よぉ。今日はお疲れだったな」 薄笑いしそう言いながらあの広いリビングに入ってきたのは他の誰でもない櫻木だ。 大きな牛皮のソファーに持っていた荷物をドサッとほおり投げ、勢いよく腰掛ける。 「お前も座れば?」 「マネージャーさんが持ってた企画書返しなさいよ。貴方が持ってるんでしょ」 櫻木の問いかけをスルーして本題に入る。 背もたれに寄りかかる櫻木は無表情で私を見つめてくるが、 私はひるまず話を続けた。 「大事なものなの。貴方には関係ないんだから早く返してよ」 大事な企画書は部長と一緒に考えて意見を取り入れて、構成して作りあげたものだ。 今まで作ってきたものとは訳が違って、 明らかに仕上がりがいいものだった。 あの時紙が無いとわかった瞬間、この場所に置いてきたんだ。とすぐ確信した。 もう櫻木と会うこともないし企画書も戻ってこないんだから、 提出期限の今日部長に言ってまた一から練り直そうと思っていたのだ。 「・・・わかったよ」 私の真剣な表情を見た櫻木が小さくため息をつき呟けば、 自分が履いていたジーパンの後ろポケットへ腕を回しゴソゴソと手を動かす。
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