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それは二十代後半をターゲットにした、スキンケア商品のことだ。 当社のオリジナルブランドのもので貴重な植物性由来成分がブレンドされたフェイスオイル。 値段も思い切った価格設定で三十グラム一万円する程高価なものだった。 「その広告にね・・・」 「ちょっともったいぶんないでよ。早く早く」 フフフと含み笑いしながら焦らす親友に、もう一人の親友が痺れを切らしている。 内心私はこの流れを読んで、 もしかして・・・。と嫌な予感がした。 想像したくないけど、広報からの情報とならば間違いないだろう。 「実はーーーーー!」 世間は四月に入り一気に春の季節になった。 桜の開花も見事に咲き誇り、会社の前にある桜並木もピンク色に染まっている。 「見た!?見た!?」 「超かっこいい!!」 朝から浮き足だっていた社内が一気に黄色い声で染まる。 何でも今日発売の新商品の広告モデルが会社を表敬訪問するらしく、 企画部でもその盛り上がりは凄かった。 「みんな何だかそわそわしてるな」 コピーしていた私の近くを通った部長が少し呆れ顔で言った。 無理もないだろう。 本来なら広報のみの訪問だったらしいが、突然企画部にも顔を出す関係者から言われたのだ。 私からしたら迷惑以外の何者でもないし、 二度と逢いたくない人物だ。 「服部は随分冷静なんだな」 周りの女子社員の騒ぎっぷりに比べたら、 淡々とコピーをこなす私の姿は少しだけ浮いていたのかもしれない。 「芸能人には興味ないので・・・」 「お前らしい」 次々とコピーされる紙を確認しながら言うと、 フッと笑って手に持っていたコーヒーカップを口元に近づけ、そのまま一口飲んだ。 「そういえばまだ企画書出してないの服部だけだぞ?まだ出来てない?」 その言葉にコピー機から部長へと視線を変え、実は・・・。と申し訳なく切り出した。 その時だった。
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