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そう思った瞬間、突然電話の着信音が聞こえてきた。 それは部屋の隅にあったテーブルの上にあるスマホからだ。 「ったく、タイミング悪りぃな」 チッと舌打ちをした櫻木は私から離れテーブルへと近づく。 着信音が鳴り止まないスマホを手にすれば、はい。と電話を取ってそのまま部屋を出て行った。 「危なかったぁ…」 まだ胸のドキドキが止まらない。 私は崩れ落ちるようにその場に座りこめば、 はぁと大きく息を吐いた。 キスだって初めてじゃないし、 男女の関係だって何度も経験してる。 なのに、気持ちと体が追いついていかないのはどうしてだろう。 あんな男に触られて本当は嫌なのに、 体は正直だった。 「…」 自分の体を自分の腕でぎゅっと抱きしめる。 まだ触られた温もりが残っているような気がして、胸の鼓動が中々収まってくれない。 顔の火照りだってきっとひいてない。 「どうしちゃったんだろ、私」 初対面の人に対してこんな簡単に弱い部分を見せるほど、自分自身甘くないのに…。 その時ガチャと扉の開く音が聞こえてきて、すぐ後背中から布の様な物が頭上からパサッとかぶってきた。 「お前が欲しがってた服とバックだ。さっさと帰れよ」 ドサッと私の隣にカバンを放り投げられ、 その拍子で入っていた書類が飛び出てしまった。 「ちょっと、もう少し丁寧に渡せないの?」 さっきまでの態度とは一変、再びぶっきらぼうな性根悪い姿に、 私はイラッとしつつ書類を再びバックに戻し渡された自分の服に袖を通し始めた。 漸く着替え終えた頃には、壁時計の針は朝の八時近くを指している。 ーーこのまま会社行くしかないか。 とりあえずここを出たらタクシーでも呼んで…。 寝室の窓から見える景色は都内のオフィス街が一望出来て、 会社近くにある大きな複合施設も確認できた。 この建物から会社まで遠くも無さそうだ。 化粧道具もあるからコンビ二でメイク落としを買い早めに出社して、髪の毛とかメイクもやり直さないと…。
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