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第5話初めての絶頂

「はぁーっ……」  ベッドに腰かけたオルネッタは、額に手を当てて、もう一度大きなため息をついた。  ギャロウグラス三歩前に立ち、泰然自若として熱くも冷たくもなく待ち受けていた。  すでにコートと手袋をとって、シャツと洋袴姿だった。  この男の変態性癖には慣れてしまっていたつもりだったが、今度はお互いが自慰に耽る痴態を見せ合おうなどと言いだした。  いままでも性的な接触はあった。  勃起をつかんで尿道を責めさせられたり、下着の上から局部を揉むように踏ませられたり、乙女にあるまじき行為を要求された。  しかしまだ、オルネッタはその柔肌をギャロウグラスに晒したことはない。  ところがいまや、ギャロウグラスはとうとう、オルネッタの裸体を見せろと要求してきたのだった。  オルネッタも、いつかはそのときが来ると心構えをしていたものの、いざそうなると尻込みしていた。  ギャロウグラスはあきらかに特別な人間であり、彼に求めているものも特殊な仕事だった。  この特異な状況下にあっては、貴族の自分が肌を晒すことになってもしかたないのかもしれない。  そうは思いつつも、オルネッタは逃げ道を探した。  さも妥協したという口調で、思いつきを言ってみる。 「わかりました! しっかり見ていてさしあげます! それでいいでしょ?」  ギャロウグラスは凛と引き締まった顔で異議を唱える。 「確かにわたしにもそんな時期がありました。男を知らぬ高貴な乙女を前にして、己の男根をしごいているさまを見せつけることによって至福の喜びを得る。確かに、それで満足していた若輩の時代もありましたが、いまのわたしはより洗練されてしまった。男を知らぬ高貴な乙女が自らの火照りを処理しようと、実体験もあらずに己の想像力と拙い技能を駆使して自らの身体を慰め悦びに震えるさまを眺めながらにしての、自らも自慰を見せつけてお互いのままならぬ興奮を高めていく行為こそ至高。そのさいの当事者二人には性的接触が少なければ少ないほうがいい。顔見知りで言葉を交わしたことがあるにはしても、お互いの身体の様子は知らない二人がここに至って秘部を露わにし、羞恥の炎に身を焦がしながら、己の秘された部分を自らが編みだした方法で刺激し、満足するまでお互いを観賞する。目の前の熱い肉体とそれに関連する妄想、その狭間にあって自らを慰めなければならないという倒錯。それが深い愉悦を呼びおこすのです。わたしはそれを悟ってしまった」  一気にまくしたてられて、オルネッタは目の回るような思いをした。  もはや雄弁さにこもる熱気以外、ギャロウグラスがなにを言っているのかわからない。  ギャロウグラスは冷静な表情のままでありながら、隠し切れない熱意をこめて言った。 「というわけで、見せていただきましょうか、オルネッタさま。十三歳のころより始めて妄想と身体の感覚によって研ぎ澄まされたあなた独自の秘められし手淫の技で御身が高みに昇りつめるさまを」  オルネッタは瞬時に耳まで赤くなった。反射的に拒否を叫ぶ。 「嫌です! そんなことっ!」 ギャロウグラスは眉ひとつ動かさずに言い返す。 「では、エスコートはここまでになりますよ。きちんと報酬を払ってもらえねば、わたしも仕事を継続できません。馬車はあなたのものですから、どこへなりと行くがいいでしょう」  オルネッタも肝を据えて応酬する。 「いえ、あなたはわたくしを置いていきません。あなたにはそんな真似できないはずです」 「おやおや大した自信ですね。確かにわたしはあなたに興味を持っています。ですがそれはあなたが高潔なままわたしの要求にしたがってくれるのが愛しいからです」 「……」  急に『愛しい』などと言われて、オルネッタは言葉に詰まった。  ギャロウグラスは余裕の態度で続ける。 「ですが、貴人の契約不履行とは醜く、非常に恥ずべき行為です。あなたがわたしの要求を飲まず契約不履行となれば、あなたは高潔でなくなる。わたしが興味を失っても不思議じゃない。そうでしょう……?」 「う……」  オルネッタは口をつぐみ、頭のなかで様々な理由や可能性を検討した。  そしてその結果、ここは折れるしかないと悟った。 「わ、わかりました! 脱げばいいんでしょう! 脱げば!」  ギャロウグラスが変態だということは理解していたが、その胸中深くはなにを考えているか計り知れない。  万が一、本当にエスコートを辞められたらにっちもさっちもいかなくなる。 「はぁー……、本当にこの男は……」  オルネッタはため息をつきながら、ボディスの前紐を解きはじめた。 「プリンセスにあってはここまできて二言もありますまい」  ギャロウグラスもベルトを鳴らして服を脱ぎはじめた。  無言のなか、衣擦れの音がしばらく続くと、二人は一糸まとわぬ姿となっていた。  オルネッタは胸と秘部を手で隠して、ベッドに横たわると、ギャロウグラスの身体を眺めた。  ランプの灯す柔らかな明かりがギャロウグラスの肢体を舐める。  均整のとれた引き締まった身体に筋肉の隆起が陰影を落としている。  オルネッタは身体の芯が熱くなってくるの感じた。  男を知らぬ乙女の目にも、惚れ惚れするような肉体美だった。  股間では見慣れた物体が硬く天を向いている。 「ではいきますよ」  ギャロウグラスもベッドへあがってきた。  オルネッタは慌てて端へ寄りながら非難するような声をだす。 「ど、同衾するのですか!?」 「なに、ここまでくれば大したことありません。わたしはすぐ隣であなたの弾む息づかいと変化していく体臭を楽しむのです」  ひとつのベッドの上で二人はしばし見つめあった。  ギャロウグラスの瞳がつと下へ動く。 「おや、オルネッタさま、あなたの可憐な乳首はすでに硬く尖ってますよ。あなたは見られるだけで身体を反応させてしまうお方のようだ」 「イヤっ!」  オルネッタは逃げるように反対側へ向けて転がった。 「それはなりません」  ギャロウグラスの手がオルネッタの肩を掴んで転がし戻す。  ギャロウグラスは下になった右手で己の男根をしごきながら言った。 「さあ、ごらんになってください。わたしのここはあなたの裸を見てこんなに硬くなっているのです。この分身があなたのなかへ入り、快楽を与えるものとして、これをとらえていただきたい。万が一にも、これがあなたのなかへ入ることはありませんが、あなたを欲して震えていると思って、あなたもご自身の技を披露してください。さあ」  オルネッタはギャロウグラスの言葉を信じる。いまここで純潔を奪われることはないだろう。ただ、つばを飲みこんでギャロウグラスの硬く反り返った分身を見つめ、言われるままに自分の秘部へ指先を伸ばす。 「ん……っ!」  驚いたことに、そこは自分でも気づかないあいだに濡れそぼっていた。  その事実に愕然として、すぐ手が止まる。  ギャロウグラスは的確に状況を読みとっていた。自分のしごく手を早めながら口走る。 「おやおやオルネッタさま。そのお顔、ご自身の身体の反応に戸惑っていますね。予想以上に熱く湿っていたに違いない。そうです、それです、その意志を超えた身体の反応に戸惑う乙女の表情こそが……うっ!」  ギャロウグラスが目をつぶり、身体を震わせた。  その表情がオルネッタの琴線に触れた。  ギャロウグラスが快楽に落ちた苦悶の表情を浮かべているあいだだけ、オルネッタも我知らず指を使う。  羞恥を忘れて湿った音を部屋に響かせる。  ギャロウグラスが大きく息を吐いた。 「おかげでドライオーガズムに達しました」  息を弾ませながら、オルネッタも指の動きを止めた。  ギャロウグラスに問う。 「では……、これで……、終わりなのですね……」  ギャロウグラスは早くも平静に戻って言った。 「わたしは満足しましたが、乙女の火照りを放っておくような男ではありません」  言うが早いか、ギャロウグラスはオルネッタの身体の覆いかぶさる。  オルネッタは驚いて声をあげた。 「そんな! 約束が!」 「フフフ、あなたの純潔は奪いませんよ」  ギャロウグラスは器用に動き、オルネッタの熱く湿った秘部へ口を当てていた。  そのままオルネッタの膨らみきった秘玉を吸い、舌で転がす。  オルネッタの背中がのけぞり、その姿勢で身体がこわばる。  男から与えられる初めての性的快楽は衝撃的だった。 「ん……っ! あはぁっ! だめ、ギャロウグラス……っ!」  オルネッタはギャロウグラスの頭を押さえ、身体をひねって逃れようとする。  しかし屈強なギャロウグラスから自由になれるはずもなく、秘玉から快楽の波浪が押し寄せる。 「あ、あぁっ! だめ、うぅん……っ!」  もがくうちにもオルネッタは高みに誘われた。  腰が勝手にはねて快楽を吸収する。  瞬く間に羞恥と理性の堤防は決壊した。 「あぁっ、いやぁ……っ!」  オルネッタは首を反らせて身体を痙攣させた。快楽に震え、波が引いていくまで耐える。  男を知らぬ身でありながら、初めて男に導かれた快楽の頂点に達したオルネッタだった。    
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