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第2話なめらかな棒

ギャロウグラスはもともとオルネッタの家来ではなかった。  秘密裏に城を抜けだすために、オルネッタは家来以外のエスコートを求めていた。  しかもその男は、たったひとりでオルネッタを守れるほどの腕利きでなければならない。  そんなエスコートが簡単に見つかるはずもなく、オルネッタは頭を抱えていた。  そこへ侍女がよい報せを持ってきたのだった。  なんでも城下町において、暴れ馬を素手で取り押さえた男がいたらしい。  話を聞いてみれば、その男はちょうど東の戦場へ向かおうとしていた傭兵だという。  その男がギャロウグラスだった。  素手で暴れ馬を抑えるほどの技量、そして行く先は同じ戦場。  渡りに船とはこのことだった。  金品ならいくら求められてもかまわない。  その心づもりで、オルネッタはギャロウグラスと接触を持った。  意外なことに、ギャロウグラスは金品を求めてこなかった。  その代わり、涼し気な顔で無理難題を二つ提示してきた。  ひとつ、連れていくのはオルネッタのみ。侍女の随伴は許さない。  二つめ、戦いがあった場合には特別報酬をオルネッタの手で支払うこと。  戦いの興奮を鎮めるために必要なことだという。  オルネッタはそれを聞いて、怒りと羞恥でめまいがするほどだった。  さらにギャロウグラスは身分の違いもわきまえず、正直に答えねば依頼を受けないと前置きしたうえで、オルネッタの極めてプライベートなことに対して、いくつも質問を浴びせかけてきた。  とても公女としては人に話せたものではないことを根掘り葉掘り聞かれ、オルネッタは顔から火のでるほどの恥ずかしさを味わった。  怒りで気を失いそうになり、何度も途中で席を立ちたくはなったが、どうにか堪えているうちに質問は終わった。  そこまでで、この美男子が顔に似合わぬ極度の変態であることが、世間知らずのオルネッタにもはっきりわかった。  二十年の生涯で初めての、真性変質者との出会いであった。  しかし、ギャロウグラスほどの腕利きは二度と見つからないだろうと思われた。  背に腹は変えられず、けっきょくこの男を頼りにして城を出てきたのだった。  そしていま、ひとつの戦いが終わり、オルネッタは特別報酬を支払わなければならない立場にあった。  三つの死体が転がる静まりかえった峠道の上で、オルネッタとギャロウグラスは向かいあっていた。  ギャロウグラスは先端の丸い、表面の滑らかな細い棒をオルネッタに差しだして、柔らかな微笑みで言った。 「もういちど言いましょうか、プリンセス? この滑らかな棒で、わたしの尿道を責めてください。それが報酬として必要です」  オルネッタはおずおずと手を伸ばしながら聞く。 「これまさか、何度も使ったものじゃないでしょうね?」 「もちろん、愛用の品です」 「ひぃっ!」  オルネッタはおぞましさに手を引っこめる。 「そんなことでは日が暮れてしまいますよ、プリセンス。さあ、こうです」  ギャロウグラスはオルネッタの右手をとり、なかば無理やりに滑らかな棒を握らせた。  滑らかな棒は、どこかしっとりとしていた。 「うぅ、もういやぁー……」  しっとりた棒を握りながら嘆くオルネッタ。 「なにを言ってるんですか、オルネッタさま。これからが大事なところです」  嘆くオルネッタにかまわず、ギャロウグラスは自分の準備を進める。  素早い動きで黒いコートの前を開き、ベルトをカチャカチャいわせて洋袴をおろすと、引き締まったなだらかな腹筋の下に、雄の茎が雄々しく天をついて反り返っていた。  ギャロウグラスは快活に言った。 「さあ、プリンセス」 「うぅ……」  オルネッタは眉をしかめて目を逸らした。  もうすでに何度も目にしているが、この物体を瞳に焼きつけたくはない。 「その表情もいいですが、目をそむけている場合ではありませんよ。まず左手で茎を握って……」  ギャロウグラスがオルネッタの左手をとって、自らの雄茎を握らせる。 「そして、右手はこっちです。滑らかな棒の先端をわたしの穴に合わせて」と、右手も導く。  オルネッタがちらりと確認すると、確かにギャロウグラスの赤い先端に棒があてがわれていた。 「そのまま、ゆっくり、滑らかな棒をさしいれてください」 「うぅ……」  オルネッタは言われたとおりに、棒を刺していった。  肉を裂いていくような感触がおぞましく、オルネッタの首筋に鳥肌が立つ。  それでもギャロウグラスは悦びの声をあげた。 「ああ、いい、オルネッタさま、「あなたには素質がある。そこで止めて、くりくり回してください。ああ、そうです、くりくりです」  オルネッタは左手に熱く脈打つ茎を握りながら、右手を器用に操って言われたとおりにしてやった。  ギャロウグラスは整ったかんばせに悦びの色を浮かべて指示をだす。 「次はすこすこです。すこすこ上下に動かしてください。少し乱暴でもかまいませんからね!」  オルネッタは言われたとおりにした。  ギャロウグラスが熱っぽく続ける。 「ああ、いいですよ、プリンセス。すこすことくりくりを組み合わせて責めてください。アドリブが大事です。聡明なるオルネッタさまなら、可能なはず!」 「うぅ……っ!」  ギャロウグラスを早く満足させてしまいたくて、未知のことながらも、オルネッタは頭をひねって責めたてた。  ギャロウグラスは喘ぎ、熱に浮かされたように口走る。 「ああ! 武勇で知られるフォルダム公タイグロイドの愛娘、白皙のオルネッタがわたしを責めている! まだ男を知らない身でありながら、男の責め方ばかり覚えてしまう、純真なオルネッタが! オルネッタが初めて手にした雄茎は、わたしのものに違いない! 聡明なるオルネッタが、初めて知った男の熱さはわたしの熱だろう!」 「くっ……!」  オルネッタは耳まで赤く染めて、この辱めに耐えた。  出発に先立つ質問責めで、ギャロウグラスはオルネッタの次くらいにオルネッタのことを知っている。  その知識がこのうような形で使われるとは想像もしていなかったので、いまとなってはしかたない。  オルネッタは涙目になりながら、ギャロウグラスを責め続けた。 「うっ!」  突然、ギャロウグラスが息をつまらせた。  立ったままで、しなやかな体躯を小刻みに痙攣させる。 「きゃっ!」  オルネッタは驚いて動きを止めた。  ギャロウグラスは恍惚と目を閉じて、快感を味わっているようだった。  身体の震えが治まると、大きく息を吸って告げる。 「ドライオーガズムに達しました。わたしは満足しました、プリンセス……」 「よくわからないけど、もうよいのですね……」  オルネッタは滑らかな棒をギャロウグラスの尿道から引き抜く。  そのまま投げ捨てたい衝動を抑えて、ギャロウグラスへ返した。  ギャロウグラスは満足気にうなづいて、滑らかな棒を受けとる。  これで辛いひと仕事が終わった。  オルネッタは赤い顔をしたまま、手の甲で、額に滲んだ汗をぬぐう。 「はぁ……、本当にもう……。手を洗ったらすぐに出発しますからね!」 「御意に」  ギャロウグラスはすっきりしたような笑顔で答えた。  すでに着衣はもとへ戻っている。  そのとき不意に、オルネッタはギャロウグラスとの紐帯を感じたような気がした。  自分たち二人はどちらも、己の欲望に忠実な似たもの同士なのかもしれない。  しかしオルネッタは、その考えを乱暴にかき消した。  本来の想い人がいるオルネッタには、納得しかねる感慨だった。
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