6 / 72

第4話 欲情の相手

   なぜ、あの男に欲情するの?  初めて会った、少しだけ顔を見ただけの男に。 「ぁ……」  肌から脂汗にも似た汗が頬を伝い落ち零れる。  その汗とは関係なく、下着がぐっしょり濡れて床に滴り落ちている。    彼が欲しい。  彼に抱かれたい。  わたしを殺すと言った、殺気を飛ばしたあの男に。  指が感じる十字架の冷たさ。  見知らぬ男を求めて、わたしの舌が十字架を這う。  この苦しみは渇望しすぎているからだ。  欲しくてたまらなくて、涙を流す。  あの男が欲しい。  シラヌイリクが。  欲しい、あの男が。  あの男に、悶えるこの身体をぱぁぁんと弾けさせて貰いたい。 「真白!!」  呼びに来たのだろう……狼が、床に座り込んで蹲るわたしの異変を感じ取ったようで、戸惑いが感じられた。  わたしは震えながら、狼に抱き付く。 「義兄さん……抱いて」 「真白?」 「義兄さんが欲しいの。義兄……狼に滅茶苦茶にされたいの! されたくて、溢れて止まらないの!」  床の上には、わたしから垂れ落ちる卑猥な粘液がいやらしい淀みを作っている。  どこから?  そんなの狼だってわかっている。  わたしの震える内股から筋を作って愛液が垂れる様に、目を向けているのだから。  狼の目が苦しげに細められ、その視線は不意にわたしの握る十字架に向けられた。 「真白……なにを持っている」  そんなのどうでもいい。  脳天まで痺れるほどわたしを貫いて、この身体の乾きを癒やして欲しい。  なにも考えられなくなるように、すべてを壊して欲しい。 「真白っ、お前誰に会った!!」  それは初めてみるような荒々しさで。 「し、知らないひと……」 「そんなもの、捨てちまえっ!!」  狼が十字架を壁に投げつけた。 「駄目、駄目ぇぇぇぇっ!!」  なぜわたしはこんなに必死になって十字架を守ろうとするのかわからない。  だけどどうしても失いたくないと思ったその十字架を、ベッドの上に落ちたその十字架を両手で握りしめて泣いた時、狼はわたしを俯せに押し倒すと、持ち上げた尻から下着を乱暴に取り払う。  そして、狼ではない男を求めて淫らに溢れさせる蜜壷に、灼熱の楔を一気に打ち込んだ。 「あああああっ」  わたしの身体は仰け反り、狼をきつく搾り取るようにして絡みつけば、狼はまるで獣のように唸りながら、淫靡な音をたててわたしの中を強く擦り上げてくる。 「忘れろ、そんな奴」 「激し……狼っ、壊れる、壊れちゃうっ」 「お前が……っ、煽ったんだろ、真白!!」  狼は後ろからわたしの首に噛みつき、後ろからさらに荒々しく突きながら、幾度もわたしの尻をぱしんぱしんと叩く。  その度に声をあげてよがるわたしも、狼に負けずに獣なのだろう。 「お前を抱いているのは誰だっ」 「義兄さん……」 「お前は俺に抱かれたいんだろう!? 壊されたいんだろう!?」  最奥を穿つような大きなストロークに、わたしは悲鳴を上げる。 「ああ、あああああっ、狼、狼……っ」  仰け反ると狼の顔が見えた。  粗暴な抱き方をしているのに、彼の顔は曇っていた。憂えていた。  そしてわたしの唇に、傾けた顔を近づけては止め、唇を噛んでぎりりと歯軋りをすると、 前に回した指でわたしの前にある秘粒をくりくりと指の腹で擦り、獰猛な律動を繰り返す。 「駄目っ、駄目っ、狼、狼――っ」  粘着質の淫液が音をたてて混ざり合い、わたしの腿を伝ってシーツに染みを作る。  容赦なく打ち込まれて、何度も何度もわたしは果てるが、狼の芯は衰えることなく、本当にわたしを壊すかのように、彼はいつも以上の絶倫ぶりを見せる。 「真白……っ、俺は……ぐっ……、真、白っ……受け止めろっ!!」  そして最奥に放たれる、白濁の熱い迸り。狼は、わたしの首に強く噛みつき叫びながら、何度もわたしの中に迸った。  狼はわたしの中から抜き出そうとしなかった。  まるでわたしの胎内から、彼の種が流れ出ないようにするかのように。  後ろからわたしを抱きしめ、首に顔を埋めたまま、静かに夜は更けて行く。  きっと狼は感じ取っているのだろう。  わたしが、狼を見ながら依然リクに欲情し続けたことに。  ……違う男に抱かれていることを想像して、何度も果ててしまった……薄情な義妹の仕打ちに。
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい

ともだちとシェアしよう!