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第70話 溺れてはいけない

  「男に、可愛いっていうのは使うな!」 「どうして? 吏玖のヤキモチ、とっても可愛くて……」 「可愛いは俺がお前に使う言葉だろ!?」  唇を塞がれ舌をねじ込ませられながら、レースのブラが吏玖の指で下にずらされ、両指で尖った胸の先端を捏ねられた。舌を絡ませたままびくんびくんと反応してしまう。  吏玖はわたしの足を割った足を震わせて秘処を刺激してくると、散々抱かれたはずのわたしの身体はもうトロトロに蕩けてしまう。  あ、やばい。  細いレースのTバックだから、垂れてきてしまうと足をもじもじとさせてしまえば、勘違いしたらしい吏玖が、片胸から外した片手を秘処に差し込み、その下着の感触に驚いたようだ。  わたしの裾を両側に捲ると、卑猥な下着を見て真っ赤になって固まっている。 「吏玖? おぉい」  手を振ると、なんとか吏玖の魂は戻ってきてくれたようで、それからお説教が始まる。 「真白! いくらあなたがいやらしいからといって、真っ昼間からそんなエロい下着をつけているなんて、俺をどうするつもりだ!? 僕を本気で枯らす気ですか!?」 「吏玖。リクとごちゃごちゃの言葉遣い……」 「うるせぇって! お黙りなさい! わかりました。あんたがそんなにいやらしいのなら、俺だって遠慮しないから。さっさとすべきことをして、抱き潰します!」 「ひっ。こ、これは深山さんの趣味で……」  まるで二人同時に責められている感覚だ。 「さあ、出かけましょう。この屋敷では、あなたがエロエロ小悪魔になって僕を堕落させようとするから、やることやって夜に俺が全部受けてやるから! 行くぞ!」  ひぃぃぃぃ。    深山さんのおかげで吏玖&リクにおかしな火が着いた気がするけれど、部屋の外で聞いているだろう深山さんが、にやにやとしていることが容易に想像がつく。  しかし吏玖とリクが乖離して独立した状態でお出かけをしていいものなのか。 「吏玖様。西宮寺次期当主としての本日の予定は……」  車内で男声の声が響く。  彼は音無(おとなし)(はじめ)といい、三十二歳の御曹司の秘書をしているらしい。  深山さんはSJ総合商社としてだけの秘書であり、ある程度は次期当主としての動きも確認しながら把握出来るものの、当主……即ち吏玖の父親命令で使わされたという音無さんを、無下に扱うことも出来なかったようで、今日は音無さんを秘書にするようだ。  音無さんは吏玖とは正反対にいる強面のゴリラみたいなひとだ。  秘書というよりSPのようで、本当のSPは助手席に座っており、後続車には吏玖も味方だと認める深山さんが、SPを乗せて運転をしている。もしもこの車がおかしな事故に巻き込まれそうになれば、元トラックの運転手である深山さんが黙っちゃいないだろう。深山さんなら、乗っている車に加速装置でも出してマッハで駆けつけ、吏玖を助けるように思えるのは、わたしの目にも、吏玖と深山さんの信頼関係が強いと思えるからだ。  ゴリラの運転に、チンパンジーのような黒服のSP。  まるで動物園を巡回しているかのような錯覚をしながら、音無さんの語る吏玖の今日の予定というのが長すぎて、驚愕した。  最初のお花だのお茶だのいうの以外に、顔出しをしないといけないのが十は下らず、わたしは秘書だというのに、イベントと場所が頭に入ってこない。  運転しながら空で言える音無さんも凄いが、すべて反芻できる吏玖も凄い。わたしとは頭の出来が違うようだ。  ただその予定の中には吏玖の父君か母君の同席も入っていて、親子なら一緒に行動するかと思いきや、まるで別行動らしい。  まあ、わたしとしては、なにがなんだかわからないまま西宮寺家に連れられ、嫁宣言をされた挙げ句、両想いになったからと散々とセックスをして、それで再びご両親で屋敷の外で会うのは複雑なりにも、吏玖の敵ばかりだというあの屋敷に放置されるのも勘弁だった。  深山さんが暗躍していたとはいえ、恐らく激しい情事中の声は筒抜けだったろうし、仲を見せつけるこんなぽっと出の小娘に仕えるなど、わたしが給仕の立場でもプライドが許さない。  深山さんとわたしとの三人きりだった時に比べて、吏玖の顔は緊張したように強張ってリクを引っ込めていられるのは、このゴリラとチンパンジーに心を許していないからなのだろう。  ぴりぴりとした空気を感じ取りながら、いつ吏玖に牙を剥くかわからない彼らに、わたしもいつでも危機を察知できるようにとアンテナを張らせる。  わたしは自分の役目を忘れてはいけない。  いくら吏玖がヤキモチを妬いてくれるような関係になっても、いつかは別れないといけないのだ。吏玖に嵌まり込む前に、吏玖を救うことに頭をいっぱいにしていないといけない。 ――僕はこんなに浮かれきって、今日ずっとでもあなたと交わっていたいのに、こんなに夢中になっているのに、あなたは平然としている。  それが肌を重ねた後の、わたしと吏玖の温度差だ。  わたしは、今以上吏玖に夢中になってはいけないのだ。どんなに自分から抱き付いてキスをして、睦言を交したくても、引き返せるところで足を踏み留めていなければ。  たとえ余裕だとみられても、わたしは彼に溺れてはいけない。  彼と愛あるセックスを出来る状況に、ありがたいと思わなくては。  わたしの心の奥が、軋んだ音をたてていることに、気づかないふりをしながら。 
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