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第43話 リクの懊悩

  「身体だけでも俺を愛せよ。そうしたら俺、お前を抱ける。お前が俺だけを愛してくれるなら、俺はお前の中に挿れられるんだ」 「どういうこと?」 「馬鹿みたいな、おとぎ話に出てくるような呪いさ。真実の愛とやらが、俺には必要らしい」 「らしいって……」 「そういう風に、作られた俺も」  悲しげな目だった。 「わからない。具体的に言ってよ」 「……俺の心理的なものに作用されるのだと思うけど、心を通わせた相手じゃないと、俺のは女の中に挿った途端に、猛毒を発するらしい」 「は、はあああああ!?」 「実際そうだった。ひでぇもんだったよ、その苦しみ様は」  翳った顔には、偽りはなさそうだ。 「でも心通わせた相手に、猛毒にならない保証は……」 「ないよ。ない。そう俺が思っているのは、そう告げられたからだ。俺を作った奴に」 「……」 「俺と相思相愛になったところで、セックス中に死んじまうなら俺も嫌だ。だが……、もしも俺に心もくれるのなら、セックス出来る可能性はゼロじゃない。現に、過去ひとりだけいた」 「それは、リクの恋人という意味?」 「……ああ。もういなくなってしまったけれど」  心の中でなにかが音を立てた。  そうか。  リクにも好きなひとが居たんだ。  そして愛を囁きながら、彼女を抱いていたんだ。  わたしがして欲しいように、彼のあますところなく彼女に捧げられたんだ。  考えてみれば、リクは童貞のようなもたつきや躊躇はない。  公園でわたしをイカせた程だ、それなりに経験や自信はあるのだろう。  だとしたら、わたしはその別れた彼女の後釜なのか。  彼女が悦んだリクの杭で貫かれるのか。  穴兄弟ならぬ、棒姉妹……。  なんだろう、このむかつきよう。  それを求めるリクに、いらっとする。 「……しなければいいんじゃ?」 「だってお前、俺を欲しがるだろう!?」 「なに、わたしのせいなの?」 「……っ、俺だって男だ。お前が俺を欲しいと俺だけに乱れて、あんなに涎垂らして濡らしまくって俺を誘うのに、平気でいられるわけないだろう? 前にわかったろう、俺がどんな状態でお前に触っていたのか。あの後だって凄く大変だったんだぞ」 「……うん」    彼はあの状態でどうなったのか、気にならなかったと言えば嘘になる。  わたしが今の欲情した状態で放置された感覚なのだろうか。 「出来るなら、今すぐここでお前の中に挿れたいよ。お前が嫌だと言っても、無理矢理にでもお前を犯したいよ。それくらい俺は、切羽詰まっているんだよ、お前にねだられると。俺だって、お前のイキ顔を見ながら、一緒にイキたいよ。凄くひとつになりたくて仕方がねぇよ。でも俺だけでは、そうはいかねぇんだよ。お前の心がなければ。お前が俺を愛し、心から嬉しいと思って俺に抱かれてくれなきゃ」 「……っ」 「駄目か?」  リクが頼りなげな顔をして、傾けた。 「お前の心、俺だけに貰えないか?」  この男と結ばれるには、安全だという確証がない大変なリスクを冒すことになる。  だけどわたしは、心はさておき、リクが欲しいんだ。  リクに抱かれたくて、今だって震えるほど切なくてたまらないんだ。  だけど……、同じ顔の吏玖が思い浮かぶ。  リクと結ばれれば、これほどの欲情はなくても、吏玖の愛撫で心が悦んだあの快楽はわたしから消えてなくなる。  それとも、リクを吏玖の代理にしろと?  ううん、もしかしてリクを好きになれば、リクに夢中になるのかもしれない。  吏玖や狼の姿など、ちらつかなくなるのかもしれない。  だけど――答えを出すには早急すぎる。 「考えさせて」 「……ああ。それが賢明だ。お前だって命がけになるんだから」  リクは横を向いて、悲しそうな顔をした。   「でもさ、わたしがリクを一方的に好きになっても駄目なんでしょう? リクもわたしを好きになって貰わないと」 「それは大丈夫だ」 「大丈夫って?」  聞くとリクは、耳まで真っ赤になっているようだ。  なぜ真っ赤になることがあるんだろう。 「お前が俺にOKしたら教えてやるから」 「しなかったら?」  するとリクは明らかに不機嫌で、しかも少しだけ焦ったような顔をした。 「OKするように、必死に考えろよ。なんで今から断るの前提なんだよ」 「だ、だって。そんなこといきなり言われても……」 「お前、俺だけに欲情するんだろう? お前の身体は俺だけを欲しがっているんだ。だったらもっと好意的に考えろよ」 「……なんだか、弱み握られた気分」 「なんで弱みなんだよ。光栄に思えよ!」  リクとだけだ。こうした軽口のような会話が出来るのは。  最初は怖くて仕方がなかった男だけれど、意外に苦労性で気遣いがある点が好きだ。  だけど、欲情がなければ彼を男として思えるだろうか。  まるで同級生のような気安さは、恋になりうるのだろうか。 「わかった。真剣に考えてみる」 「ああ、そうしてくれ。とはいっても、俺は諦める気はねぇから」 「え、だったらわたしに選択権はないの!?」 「だから、断るの前提はやめろって!」  わたし達はどちらからともなく笑った。  笑ってから、次第に笑いを無くし、わたしの身体がカタカタと震えた。 「……辛いか?」 「うん、辛い」 「挿れれねぇけど、それでもいいか?」 「うん」  吏玖はわたしを、壁を背に立たせ、身を屈んでストッキングごとショーツをするすると下に下げていく。 「足、開け」 「……っ」 「言っただろう? 今度は直に舐めてやるって。お前の足を開いて、顔を埋めて……って」  わたしはスカートを手で握りしめる。 「お前が答え出すまで、いいやお前がOK出すまで、お前の欲情は俺が引き受けてやる。だから、ここは誰にも触らせるなよ」  そう言いながら、おずおずと開いた足の間にリクは身を屈ませ、内股を手で掴む。  そして――秘処に、生温かい息がかかったと同時に、ぴちゃりという粘着質な音がして、熱いなにかで秘処を掻き混ぜられた。
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