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第42話 俺にしとけよ

   結局、リクととりとめのない雑談をして笑って、吏玖のマンションの前まで送って貰ったのは、十一時十分過ぎだった。 「明日、向かい側のコンビニの前に夜の八時に立っている」  彼はスマホとか携帯電話というものを持っていないらしい。  夜遊び娘の保護監督に付き合わせられる彼は、夜に溶ける黒を纏っているのに自ずと目立つその風貌で、時代の産物というべきコンビニに立とうなどは、なんてミスマッチな挑戦者(チャレンジャー)なのだろう。  しかし本人は特にその美貌を自覚している様子もなく、漫画喫茶だの遊園地だの雑談の中で行ってみたいと幼子のように目を輝かせ、夜が暇なら今度行こうと誘われたけれど、別に黙々と読書しているだけなら、昼間からでも吏玖ひとりでゆっくり行けばいいし、遊園地は夜開いていない。そう言うと、吏玖は明らかに落ち込んだようであった。  時間も時間だし、もう帰るねと片手を上げて背を向けようとすれば、寂しそうにするリクと視線が絡んだ。  どくん。  やばい。  抑えていたはずの欲情がまた首をもたげて来てしまった。  わたしの欲情の餌食になることをリクは快く思っていないのだから、ここはすぐ退散しようと思って背を向けて駆けようとした時、リクに腕を掴まれ、暗い裏路地に引き摺られた。 「な、なに?」  どくん。  暗くなればなるほど、身体が悦ぶ。  これで気兼ねなく、リクから愛して貰えるのだと、身体が勝手に勘違いする。  そんなはずないのだとわかっていても、なにか話があるから連れてきたに決まっていると思ってはいても、熱い身体はリクが欲しいと蕩け始め、立っていられない。 「話がないなら、わたしもう帰――」 「お前が悪いんだからな。あんな顔で、誘いやがって。今日は色々あったから、今回は無事に帰してやろうと思っていたのに!」  そう吐き捨てたリクは、片手でわたしの後頭部を押さえながら、その酷く整った顔を斜めにして唇を重ねた。 「んんんっ!?」  角度を変えて何度も甘噛みするような口づけをしてくる。  わたしの欲情は嫌がったくせに、欲情を誘うような熱っぽいこのキスに、わたしの身体の奥の熱が炎のように妖しく揺らめき、身体の中で弾け飛びたいと激しく疼く。 「ん……ぅ、んんっ」  リクは、わたしの腰を反対の手で彼の身体に押しつけるようにきつく抱擁すると、わたしの胸が潰れるくらい彼と密着して、リクが動く度に胸の尖りが色々と擦れてやばいことになる。  ふと目が合った。  気持ちよくてぽわぁぁんとしていたわたしに気づくと、リクは僅かに苦しそうに眉根を寄せ、今度は性急なキスで、こじ開けた唇の間からぬるりとした舌をねじ込ませた。 「んむぅぅっ」  気持ちよさに全身がぞくぞくする。  秘処は激しく蜜を垂らし、中を擦って欲しいと切なく疼き、きゅんきゅんと収縮している。  欲しい。  リクの熱い杭をわたしの中に深くまで突き刺して、激しく擦り上げて貰いたい。  滅茶苦茶にして貰いたい。  わたしからリクの首に両手を回して、わたしの熱い舌を自分から絡めることで、今わたしがどんな状態になっているのかを詰っていると、リクの手が前回と同じくわたしのスカートをまた捲り上げて、太股をいやらしく撫でた。  それさえも期待するわたしは片足を上げて、リクの手を付け根に誘う。    唇が離れた。 「お前、本当に俺に欲情するんだな……」  揶揄めいた口調とは裏腹に、彼もわたしの熱が移ったかのように熱く潤んだ眼差しをしている。 「ん……。リクと繋がりたくて仕方がない」 「エロ」 「どう言われてもいい。初めて会った時から、わたし駄目なの。前に触ってわかったでしょう? どれだけ濡れていたか」  リクがわたしの耳に囁く。 「ああ、凄くぬるぬるして溢れてた。ここから」  片手がわたしの下腹部を撫でると、子宮がきゅんと疼く。 「他の男にもそうなのか? たとえば狼とか」  僅かに剣呑に細められたその目にぞくぞくしながら、わたしはリクの首筋に唇を押し当て、舌を這わせて言う。 「ここまでなのは、リクだけ」 「……っ、同棲している奴には?」  れろれろと舌を動かすと、リクの声が僅かに上擦る。 「上司に欲情してどうするの」  そう口にして、僅かに胸の奥がつきんと痛んだ。  それに気づかないふりをして、誤魔化すようにして、リクのシャツの中に手を入れて、割れている腹筋を直接掌で撫でる。鍛えられている、いい身体だ。細マッチョという奴だ。 「でも、そいつが好きなんだろう?」 「好きじゃない」 「……じゃあ誰が好きなんだよ、お前は」 「……」  彼の引き締まった裸体に頬を擦りつけ、答えないわたしに、リクが掠れた声で言う。 「俺にしとけよ、真白」  ぎゅっと抱きしめながら。
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