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第15話 リクへの欲情

  「もうあなたと会うつもりはないわ。大体、いいの、行かせて」 「……なんだ、引き留めて貰いたいわけ?」  無駄に色香がある艶めいた声が、わたしの神経を逆撫でする。 「誰が! わたしを殺したいんでしょう?」 「……。お前があいつの呪縛から逃れたのなら、それでいい」 「なにわけわからないことを。もしかしたらわたし、ひとの血を啜り始めるかもしれないじゃない。それでもいいってこと?」  するとリクは、かまってちゃんのように叫ぶわたしを後ろから抱きしめていた。  音もなく、離れた距離からどうして……なんて、この男の身体能力を思えば野暮かもしれない。  いや、そんなことより、身体が熱い。  彼の息づかいが、彼の熱が、わたしを熱く蕩けさせていく。 「ちょ、離してよ」  しかしお腹に胸に巻き付いた腕は解けない。  その上、両足の間にリクの片膝を後ろから割られて、さらに密着してきた気がする。  彼の甘やかな匂いが鼻を擽り、わたしの身体の中に、ぼっと点火した気がした。  押さえ込んでいた、彼に対する欲情が。  抱かれたくてたまらない、あの狂おしいほど苦しく切ない感情が。  彼にこうされるのが、懐かしい心地すらしてくる。  そんなこと、ありえないのに。  どくどくと興奮を刻む心臓の音が、わたしの理性を曇らせていく。  ただ本能だけがわたしの中で息づく――。 「……お前が吸血鬼化したら、俺が殺す。お前は俺の掌の上だということを覚えておけ。俺は、お前の傍にいる。……いつでも、お前を見ている。あいつの役目はもう終わった」  心が震えるような切ない声で、ストーカーのような物騒な言葉をわたしに告げる。  わたしは息も絶え絶えに、ぞくぞくと迫り来るものを堪えていた。  もっと強く抱きしめて欲しいと願うのは、罪なのだろうか。  背後からではなく正面から、なにも考えられないくらいに滅茶苦茶にして貰いたいのに。  遮るものもない、ただの男と女で抱擁して欲しいのに。 「……俺は、お前を逃がさない。もう、懲り懲りだ――」  わたしの深層から熱いものが零れる。  淫らにわたしを抱いて、貫いて欲しい――。    わたしは彼の手を握る。  どくんどくんと欲情する心をもてあまし、我慢出来なくなって彼を見上げた。  ……下着がぐっしょりと濡れているのがわかる。  蜜が太股に滴り落ちているのがわかる。  自分ではどうしようもないの。  欲しくて欲しくて仕方がないの。  渇望が苦しくて死んでしまいそうだ。 「リク……」 「そんな顔で見るな」 「どんな顔?」 「……俺を食いたいってそんな顔。とろとろに蕩けたその顔で、俺を誘うんじゃない」  苦しげに目を細めて、わたしを拒みながらもわたしを離さないリクは、わたしの胸の下にあるその手を動かし、服越しわたしの胸を持ち上げるようにして、ゆっくりと揉む。 「は……」  びりびりと走る快感に、甘い吐息を零せば、リクがじっと見ていた。  視線を絡ませたまま、胸を揉みしだくリクの指先が、下着をずらして勃ちあがる先端を揺らし、反対の手でスカートを持ち上げるようにして、じゅくじゅくと溢れる上の方まで滑りあがってくる。 「なんでこんなに濡らしてるの、お前」  どこか上擦った声が肩の方から聞こえる。 「……っ」 「お前を殺したいっていう男にも濡れるように、あの男から仕込まれたのか? 随分開発されたものだ」 「ちが……」 「あいつを思い出しているのか? 俺で代用しようと?」  意地悪な言葉に、泣きそうになってくる。  狼じゃない。  リクを求めて、初めて会った時から欲情してしまっていたのに。 「リクだから……欲情するの」 「なぜ?」  意志的に抑えたような冷ややかな声。    なぜわたしはリクに欲情するの?  そんなの、わたしにもわからない。  そんなの、わたしに教えて欲しいくらいだ。  この渇望を、この欲望を、なぜリクだけに持つのか。  答えられないわたしに苛立ったように顔を歪めさせ、リクの指先が、わたしのストッキングを裂く。びりびりと一方的で暴力的な音は、ますますわたしの欲情を高めた。  これが手を繋いで赤くなっていた男と同一なのだろうか。  あの初々しさはない、わたしを後ろから抱きしめるようにしているのは、ただの男だ。 「会って二度目の、愛する男との仲を引き裂いた奴にこんなにびりびり破かれて、こんなことされて……それでいいのか?」 「いいと……言ったら?」 「淫乱」  囁くその声と言葉にぶるりと身震いすれば、くちくちと耳を甘噛みされる。    ああ、わたしは淫乱だ。わたしはビッチだ。  それでも尚、欲しいの。  リクのすべてを、わたしが欲しいの。 「リクだけなの、こんな風になるのは……」 「……どこで覚えた、その煽り文句を。あいつか? あいつにそんなことをいつも言っていたのか?」 「違……ひゃああっ」  ぞわりとした快楽に身を捩るようにして声を上げれば、ストッキングの破れた穴を広げながら、リクの熱い掌が、汗ばんだ内股の生肌に忍んでくる。  期待するわたしの秘処はじゅんじゅんと熱く濡れてさざめいた。  なんなのだろう、直接リクの熱を肌で感じたことに対する、この異様な悦びは。 「ああ……」  リクの指が、ショーツのクロッチの真ん中を行き来し始め、きゅっと前にショーツを摘まんで生地を伸ばすと、わたしの目にもぷくりと膨れた秘処の形が見えて、羞恥にカッと身体が熱くなる。  その谷間を、リクの長い指が滑るように移動すると、湿った音が聞こえた。  ふっと笑ったリクの笑い声を聞いたわたしは一度息を詰めてから、布越しとはいえ、ひくひくするそこに、欲情してやまないリクが直に与えてくる刺激に悶え、嬌声と共に悩ましく息を吐き出した。
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