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第3話

 紅く濡れた仮面を、イシリスは剥ぎ取り、捨てた。  頬に垂れた銀の髪。白い肌に、紅い唇と、銀の縁取りのエメラルドの孔雀の瞳。  ……全てのものを誘惑し、夢現のうちに命までも奪い去る呪いの瞳。  その孔雀緑が舞踏会場を見据える。  仮面の下の、人々の歓喜の瞳。 「さぁ!狩りの始まりだ…!!」  どこかで、叫んだ者がいた。  イシリスは小さく舌打ち、素早く短剣を仕舞うと、宝飾が付いた上に血まで浴び重くなった上着を乱雑に脱ぎ捨てた。  人間と、そうでは無いもの。  闇の生き物。それは、自分を含めたうえで。  イシリスは何度か同じような場に遭遇していた。  兄に連れられた舞踏会で。  兄に命じられた舞踏会で。  兄の開いた舞踏会で。  また、だ。  今回は兄が絡んでいるのか分からなかったが、同じことだ。  この場を去るのには一つ、条件があった。  『監視者』を葬り去ること。  これは舞踏会に似せた『狩場』だ。  人間が、魔を。  魔が、人間を、狩るための庭だ。  どちらか一方の『主』を守り、また、狩る事がその主旨だ。  必ずこの場には『監視者』と呼ばれる審判がいる。それを倒せば、この狩場は無効となり、人々は逃げ惑い、魔は闇に帰っていく。  いままで、イシリスは『監視者』を真っ先に倒しては『狩場』を台無しにしてきた。  噂は人間、魔物問わず広まり、ある意味賞金首である。
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