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第22話

昏んだ闇に全てが沈む頃。  城の中は俄に賑やかに、華々しく飾られていた。  漆黒の衣装を纏った楽団が厳かに音楽を奏で、恭しく手を取り合った人々は円を描き踊っていた。  退屈。    イシリスは、言われたまま純白の衣裳に身を包み、何時ものように目隠しのリボンで目元を覆っていた。  レイベンの隣に据える様に座し、静かに辺りの気配を伺ってはいた。レイベンの元へ謁見する者から度々感嘆の息が漏れるのを感じながら、イシリスはただ黙って口を結んでいた。  白く透明な金剛石の散りばめられた純白のドレス。白鳥か、真珠か。真紅の美しい唇を結び、白磁を思わせるなめらかな白い肌。傍から見たその様はまるで美しさを秘した宝石のようだった。  「レイベン様。ご機嫌麗しゅう」  ふと嗄れた声が辺りに響いた。 「今宵もとびきりのものをご用意しましたぞ。どうぞ、お楽しみあれ」  妙に張りのある、特徴のあるこの声を、イシリスは知っていた。目隠しを取れば、それが誰なのかわかるだろう。それだけ見知った者だ。 「そこなイシリス殿にも、きっとお気に召していただけましょうぞ」  喉の奥に籠もった笑いを引きつらせて、爺は不気味に笑った。   イシリスは爺の用意したという「それ」が、悪趣味な物であることは重々承知していた。そして、同時にこの爺の素性を理解した。  ある山奥の城へとレイベンに使いに出された時のことだった。何時ものように、それは舞踏会の名を借りた「狩り場」だった。  逃げ惑う人間たちの中で、一人、浮いた存在の年老いた爺が居た。イシリスは最初助けるために爺へと近付いたが、それは無用であったと思い知らされた。  爺の懐から、次々に魔物が飛び出していた。闇を纏うもの、形の無いもの、捕食を繰り返しながら形を変えていくもの。  狩り場を創り出しているのは、他の誰でも無く、その爺だった。  爺はイシリスの瞳を臆することもなく睨みつけた。そして唇を弧に歪め、一言、「見つけた」とだけ言った。  魔物を人間に売りつける、売人が居るという噂を、イシリスは知っていた。  人間が魔物を買い付ける理由は様々だが、その多くが混血を作るため、人間と魔物の血を使った繁殖のためだった。  選り優りの人間と、魔物をかけ合わせた「それ」は、高値で売買された。多くは、愛玩のために使われるのだという。
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