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第1夜 キスしたことある?(2)

「可憐!また明日!」  美菜と里沙は手を振って可憐に別れを告げた。二人の後ろ姿が、バスの中に消える。  可憐も、それに手を振って答える。 「またねー」  市街地行きのバスを見送り、可憐は反対方向へ歩きだす。 「え、と…あのスーパーならお野菜が安いはず…と」  スマホを手に取り、買い物情報を検索する。  バス停を見て、時間を確認すると、可憐はため息をついた。  隣町まで、バスがまだあと一時間は来ない。 「これじゃ帰りがまた遅くなるな…」  『彼』に連絡しようにも、『彼』は連絡手段を持っていない。 「また、怒られるかなあ…」  可憐は、沈んでいく夕日を、ぼんやりと見た。  金星が美しく輝き、薄紫の空に満月と一緒に浮いている。  北風が、厳しく吹いている。  ふと、可憐の手に、白いものがふわりと落ちてきた。 「わ、雪…?」  正しくは、風花だろうが、雪には違いない。どうりで寒いわけだ。  見れば、北の空に冬を思わせる厚い雲が浮いている。  風花は、そこから来たのだろうか。  立ち止まった可憐は、唇の辺りに手を添えて、小さく咳払いをする。 「虚月様…、今日は遅くなります…」  呟いてみる。 「………」  何も、聞こえない。 「やっぱり、ダメかぁ…」  可憐は項垂れて頭を掻いた。  以心伝心、という言葉があるが、可憐は、遠く離れた人物と交信を試した。  当然、できなかった。  普通の人間なら、当然できなくて笑い話だが、可憐の場合は違った。 「やっぱり、私、落ちこぼれなんだなぁ…」  人間として生まれて早17年、吸血鬼の使い魔として生まれ変わって2年。  吸血衝動は立派にあるものの、その他の重要な能力が身についてこない。 「虚月さま、風引かないでください…」  吸血鬼が風邪をひくのか、疑問だが、彼の場合病を患っている姿を見たことがない。  こんな事を呟いているのが知れたら、彼は怒るだろう。  いや、自分の呟きなど、相手にさえされないのが事実だが。
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