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第2夜 キスよりあまい(3)

  『可憐、お誕生日、おめでとう』  パソコンの画面に、父と母が映っていた。 「ありがとう、パパ、ママ。…元気?」 『元気よ。可憐は?』 「うん、元気…」  会話は、三十分ほどだった。 『じゃあ、元気でね、可憐。愛してるわ。パパも、ママも』 「うん。私も。大好きだよ、パパ、ママ」  ふと、画面の母の顔が、じっと可憐を見た。 「ん?なに?」  可憐は、首を傾げる。 『可憐、何か、変わった?』 「え…」  可憐は、母の言葉に驚いた。 「そ、そうかな?」  画面を、食い入るように見る母に、可憐は動揺した。 『少し、大人っぽくなったわね…』  微笑を零す母は、目を細めている。 「…そう?」 『ええ、好きな人、いるのかしら?』 「…、好きな人…」  可憐は、思い出していた。  銀の髪が、目の前を過ぎる。 『あとで、紹介してね』 「…うん…、ありがとう、ママ」 『おやすみ、可憐。またね』  「またね」  画面の中の母が、手を振って、画面にキスをした。  通信は、そして終わった。  傍らを見れば、香島が微笑んでいた。 「お待たせしました」 「いえ。大丈夫ですよ」  帰りましょうか。香島は、可憐に言って、その手を取る。 「はい。…あ、れ…」  視界が、ぐにゃりと歪んだ。 「可憐さん…?」  香島の手を握ったまま、倒れ込む可憐の肩を抱いて、香島は可憐を呼んだ。 「……っ」  喉が乾いている。  吸血衝動だ。  今まで、血は虚月に定期的に与えられていた。  それが、今は無い。 「香島、さ…、わたし…」  血が。  可憐の唇が、声も無く動く。 「可憐さん…」  香島が、襟元を開く。  白い肌を目の前に、可憐は目を見開いた。  だが。 「…どうしました?」 「あ…私…」  牙はあるものの、直接肌から飲んだことは無かった。  血は、虚月の唇を介して、貰っていた。 「肌から、飲んだこと、なくて…」 「…月の主は、どうやってあなたに…」  可憐は、顔を赤らめた。 「…く、口から…」  香島の顔を見ることができなかった。  香島は、可憐の様子を見ていたが、その顎を、掴んだ。 「…ぁっ」  引き寄せ、可憐の唇を、塞いだ。 「…ん」  可憐の咥内に、香島の血が流れ込んだ。  虚月とは、明らかに違う。  違う甘さだった。  ふと、香島の舌が、可憐の舌に触れた。 「!…ふ…っ、…しま、さ…」  可憐は、離れようとした。  だが、香島はそれを離さなかった。 「ん…っんぅ」  香島は、可憐に己の舌を絡ませていた。  痺れる様な快楽が、可憐の舌に伝わる。 「…や…ぁ…、ん…」  意識が、混濁する。  今、可憐に口付けているのは、誰なのか。  誰に、誰が。  可憐は、怖くなり目を開いた。
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