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第4話 せめて今夜だけ

「……嬉しい。リリーも、僕を求めてくれてるんだね」  しばらく舌を絡めあっていると、唇を離したユーリがうっとりしたように言う。その目はさっきよりもさらに熱を持って濡れ、淫靡な光を帯びている。 「僕は、リリーが欲しい。リリーは、僕が欲しい?」  整った美しい顔に切なげな微笑みを浮かべ、ユーリは小首をかしげる。そんなふうに問われればリリーの心がどんなにかき乱されるのか、きっと知っているにちがいない。 「……私」  言いかけて、まだ迷っていた。“欲しい”という言葉の意味がわからないほど、リリーは子供ではない。だから、最後の最後で理性が、それを口にするのを拒んでいる。  ユーリには想い人がいて、今は変な薬でおかしくなっているだけ。これからも良い友人でいたいのなら、ここはきっぱり拒絶して、むしろ正気に戻るよう介抱するべきなのだ。  だが、この恋は叶わない片思いだとわかっているからこそ、ユーリを受け入れたいと思ってしまった。 「……ユーリが、欲しい……」 「……リリー!」  再びユーリに激しく腕に閉じ込められ、そのまま抱えて移動された。狭い工房の中だ。あっという間に寝台にたどり着いてしまう。 「ああ……リリー、大好き……今から、僕のものにするから……」 「んっ、んん……」  ユーリは無我夢中という様子で、口づけながらリリーの服を取り去っていく。身につけているのはゆったりとした部屋着だから、あっという間に脱がされてしまった。  リリーを一糸まとわぬ姿にすると、ユーリは今度は自分も服を脱いでいく。シャツにズボンというラフな格好ではあったが、ボタンひとつひとつを外していくことすらもどかしいようで、手つきが荒々しい。 「……こうして触れるだけで、すごく気持ちいいね」  やっとという感じで裸になると、ユーリはリリーに覆いかぶさった。少し汗ばんだ肌と肌が触れ合って、たったそれだけで気持ちがいい。  角度を変え、何度も何度も口づけされるたびに胸がユーリの胸板に押しつぶされる。胸の頂はこすれ、やがてぷっくりと立ち上がって存在を主張しはじめる。 「かわいい……リリーのここ、僕に触れられたいんだって」 「んんっ」  花の蕾のように色づいたそこを、ユーリは子供がいたずらするようみたいにぴんと指先で弾いた。だが、その顔に浮かぶのは無邪気な表情ではなく、おそろしいほど艶めいた雄の表情だ。  ペロリと舌なめずりをするのを見て、リリーは全身が総毛立った。 「ちょっと触っただけでかわいい声が出たね。……じゃあ、もっと気持ちいいことしてあげたら、どんな声が出るかな?」 「あっ……だめぇ……」  クスクス笑いながら、ユーリはリリーの胸に舌を這わせた。濡れた舌先が触れるだけで、全身に鋭い痺れが走る。痺れは消えてなくなることなく体内に蓄積していくようで、やがて爪先から足裏をジンジンとさせはじめた。  それに合わせて、脚の付け根も疼きだす。そのもどかしさをどうにかこらえようと、リリーは無意識のうちに内股をすり合わせていた。 「んっ……んふ……」  音を立てて、ユーリはリリーの蕾を吸い上げる。時折上目遣いにリリーの様子を確認しては、満足そうに笑う。その鼻から抜ける息が肌にかかるだけで感じてしまい、リリーの身体はぴくんと跳ねた。  胸の頂を吸われ、やわやわとふたつのふくらみをもまれ、リリーの吐息はどんどん熱を持つ。それに合わせるように、じっとりと脚の間からあたたかいものがあふれだした。  太股に押しつけられるユーリの中心が、硬くなっているのを意識してしまったのもあるかもしれない。 「ふふ……感じてるリリー、かわいい。そろそろここも、僕の想いを受け入れる用意が整ったかな?」 「あっ……」  膝頭を掴んで、折りたたまれるようにして両脚を大きく開かされる。すると、その中心がまるで粗相でもしたかのように濡れていることに気づかされる。 「……すごい。リリーのここ、小さく口を開けて蜜をあふれさせてる。リリーも、僕のことが欲しいんだね」  リリーの脚の間から顔をのぞかせて、ユーリはとても幸せそうに微笑んだ。その笑顔を見て、リリーは錯覚してしまいそうになる。  ユーリも、リリーと同じように想ってくれているのだと。  そんなふうに思ってしまって、あわててその考えを振り払おうとした。  きちんと弁えていないと、終わったあとで傷つくのは自分だ。  今夜のユーリは何か悪いものを口にしておかしくなっているだけ。本当は他に好きな人がいて、こうして肌を重ねているのは、何かの間違いなのだ。 「……リリー、ちゃんと僕のことだけ考えてくれないと嫌だ」 「あっ……ん……」  意識を他へそらしていたことをとがめるように、ユーリが荒々しく唇を重ねてきた。そして、蜜をあふれさせる中心には指をあてがい、数度すべらせてから中へと侵入させてくる。  そこは十分とけきっていて、だが初めてだからやはり狭い。その拒むような狭さをなだめるように、ユーリの指は内側の襞を優しくこすりながら進んでくる。  たった指一本なのに、リリーの中はいっぱいになった。気持ちよくて、感じて、下腹に力を入れるたびにその指を食い締めてしまう。締めつけるたびによりいっそうその存在を感じてしまい、さらに蜜があふれた。 「リリーのここ、あったかい……やわらかい……もっと、リリーに包まれたい」  言いながら、ユーリの指はいつの間にか二本に増えていた。  蜜をかき出すように指を動かされながら、再び口内を蹂躙される。その異なるふたつの快感がひとつになって、大きな波となって、リリーに迫っていた。 「……いいよ、リリー。もっと感じて。もっと、もっと……」 「あっ、だめ……ああぁっ……!」  その大きな波でさらってしまおうと、ユーリは最後のとどめとばかりに空いたほうの手で胸の頂を刺激した。  新たに加わった刺激によって、リリーは快楽の階をのぼりつめていった。 (……もう、だめ……頭の中、真っ白になる……!)  一際激しくユーリの指を締めつけ、激しく身体を震わせてから、くったりとリリーは意識を手放した。
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