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第2話

 ゴール卿のお屋敷に入ると、三人のメイドが私たちを出迎えた。 「あら。お待ちしておりましたわ、ミシディア様」  メイドの一人――一番背も高く、スタイルが良い――がご主人様に声を掛ける。  それに併せて、二人のメイドが頭を下げた。  私はただご主人様の数歩後ろに立ち止まっていたところだったが、 「……あら、あなたも来ていたのね、メアリー。ミシディア様にご迷惑をかけていないかしら?」  嫌みったらしく、そんなことを言ってきた。  言ってしまえば迷惑をかけているのは、寧ろご主人様のほうではあるのだけれど、そんなことを言ってしまえばメイド失格なことは間違いないので、そこは飲み込んでおく。 「いいえ。何とか今もメイドをさせていただいております」  テンプレートと言ってもいい、当たり障りの無い言葉を返す。  この三人のメイドは、かつてご主人様のお屋敷でも働いたことのあるメイド三姉妹だ。ただまあ、働いたことのある、とは言っても派遣という形で働いていただけであって、とても僅かな期間に過ぎない。  その目的は、私をきちんとした品格のあるメイドに教育させるため。  私の母もメイドだったけれど、先代のご主人様が一人でメイドをしながら教育を進めていくのは非常に難しいと判断したのだろう。一週間という短い期間ではあったものの、この三姉妹がやってきて――私は徹底的にいじめ抜かれた。  いや、いじめ抜かれたと言うと語弊があるか。ただまあ、語弊が無いように言ったつもりではあるのだけれど、いずれにせよ、いじめ抜かれたのは事実だ。  曰く、メイドはいかなる環境にも耐えうる存在で無ければならない。  曰く、メイドは他のメイドから虐げられることもあるから、それを想定して強くならなければならない。  様々な理由をつけられていたようにも思えるけれど、当時からずっとあれは言い訳に過ぎないのでは無いか、なんてことを思っている。  単刀直入に言えば、私はこの三姉妹が嫌いだ。徹底的に大嫌いだ。だからこそ、ゴール卿のお屋敷に行くと若干ではあるが憂鬱な気分になる。ま、直ぐに終わるから良いけれど。 「……ゴール卿はこちらでお待ちしております」  三人のメイドに案内された場所は、いつもの食堂だった。  ゴール卿のお屋敷はご主人様のお屋敷よりも広い。だから三人メイドがいることは当然なのだけれど、だとしても三人居るからかやっぱり余裕を感じる。はっきり言って一人分けて欲しい気分だけれど、それはご主人様が許さないから仕方が無い。まったく、どうして増やしてくれないのかしら。
作者