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決意(4)

               賑やかな商店街を抜け、駅についた。適当に切符を買うと、学校とは反対方面のホームを選んだ。 「あー重っ……」 背中に背負っているリュックサックが重く、電車を待っている間辛かった。 寒さも増してきたし、何より今日はクリスマスイブだ。 周りのカップルのいちゃつき具合がたまらなく煩わしい。 チッと舌打ちをすると、俺はホームから覗く夜空を見上げた。 しばらく見上げてみると、白い雪がふわふわと舞ってきた。 ホワイトクリスマス……か。どうりで寒いわけだ。 『2番線に到着の電車は……』 駅のアナウンスが聞こえ、電車がホームへと入ってきた。 電車のライトが眩しくて目を細める。 俺の目の前に各駅停車の電車が止まった。 ゆっくりと中へ入り、奥の閉まった扉に体を預けると車内の温かさに思わずため息を漏らす。 発車の合図が聞こえると、俺は目を閉じた。 しばらく、サヨナラだ。波……。 そう心の中で呟いた瞬間「陽介!」と、ホームから聞こえてきた。 何事かと、周りがざわめき始めた。 俺もその一人であり、ましてやその当事者になろうものとは考えてもみなかった。 「波っ?」 俺は思わず開いた扉まで駆け寄って、顔を出した。 発車の合図が止まった。 その瞬間に波は俺の姿を確認すると、今にも泣き出しそうな顔で車内に飛び込んできた。 間一髪の所で扉は閉まった。 「うわっ」 勢いよく飛び込んできた波の体を慌てて受け止めるが、俺の足はもつれて床へと二人雪崩れ込んでしまった。 「な……波? どうして……」 「あたしも……連れてって」 波の言葉に俺は目を見開いて驚いた。 あの真面目な波がそんなこと言うはずがない。 ましてや、今は三年生にとって一番大事な時期だ。 将来が左右されるほどに大切な期間なのだから。 「ばっか! お前、受験はどうすんだよっ?」 「ちゃんと参考書持ってきた。通帳も、着替えも準備万端!」 笑顔を向けた波の目には、うっすらと光る雫が見えた。 目尻が垂れ下がった波の熱意が溢れ、俺の胸を打ち付けた。 波の涙を指の腹でそっと拭った。 「お前……どうなっても知らねぇぞ」 声が震える。 波を抱きしめる手も、震えている。 こんなにも、愛しいと思ったことはない。 「どうなっても……いい」 波の声も震えていた。 周りの乗客の目なんて気にしない。 俺は、波の唇にキスをした──。
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