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已んだ世界(6)
「停学って……どういうこと?」
息を切らした波は、空き教室でもある社会科資料室へとやってきた。
千尋を殴った後、ここに隠れた俺は波をメールで呼び出したのだ。
ここなら誰もやってこない。
俺はそういう隠れ家的な場所をいくつも知っている。
そういうことに関しては他の皆より長けている。
「千尋を殴った。ただそれだけ。たぶん……明日から停学」
「それだけって……なんで殴ったの? 千尋くん、陽介になんかしたの?」
俺は椅子に腰かけていた。
波の声に、俯いていた顔を上げる。
そして、冷めた目で、波を下から舐めるように見つめた。
「ねえ、陽介。なんか言って……っ」
そう波が話しかけた瞬間、俺はその言葉を遮る。
唇を重ねたのだ。
そして、一度離すと波の鼻に自身の尖った鼻を擦り付けた。
「やっぱ……こんなの俺じゃねぇ」
言いながら俺は制服のネクタイを解き、波の両手首に縛った。
突然の出来事だった所為か、いつもの俺じゃない所為か、波は呆然としていた。
身動きできない体を机に押し付けると後ろから下着を撫でつける。
「陽……介?」
俺の指に、波の体は反応する。
「感じた? 家では声出せねぇもんなぁ? ここでは声出していいんだぜ? 誰も見てねぇ
よ」
「や……無理だよっ。私達の関係、バレちゃダメなんだよ?」
「ほんっと、糞がつくほど真面目だね。その真面目臭さが俺に染み付いたってわけか。俺が禁煙とかしちゃうなんて、信じられなくない?」
机に押し付けた体を反転させ、俺はその足を思い切り開かせ顔を埋めた。
下着をずらし、舌を這わせる。
それだけで溢れる波の味。
波はほとんど喘がない。
果てるときも声を押し殺してイキやがるんだ。
この関係がバレないために顔を歪ませて唇を噛み締め、快楽に耐える波の表情は俺を奮い立たせた。
「波、太股まで伝ってる」
言いながら、波の蜜を掬う。
そして、再度後ろを振り向かせると、俺は一気に波の中まで入っていった。
こんなに激しく律動を繰り返しているというのに、波は声を一切漏らさない。
「出せよ、声」
「……無理」
「なんで?」
苛々しながらも、波の背中を指先でなぞった。
「だって……」
「俺が弟だからか? 血が繋がっているからか?」
俺の問いに、波は小さく頷く。
「ばれたら終わりなんだって……分かるでしょ?」
うっすらと瞳に涙を浮かばせて、俺の胸に顔を埋める波。
「ばれるの嫌だったら、なんで俺に抱かれんだよっ?」
悲痛な叫びが教室にこだました。
その叫びで誰かがやって来たとしても、俺は波の中にいることをやめないだろう。
思いの丈をぶつけたせいか、俺の息は乱れていた。
大きく呼吸を繰り返して、少しの間、腰の動きを止めていた。
ふいに、波の右手が俺の左頬に添えられた。震える手は、仄かに染まった頬と唇をなぞる。
「……き……だから。陽介が……好きだから」
涙目の波は顔を寄せ、俺の唇にキスをした。
まさか、波から「好き」という言葉が出てくるなんて思いもよらなかった。
俺の頭の中は真っ白で、かなり混乱していた。
無理矢理犯して、家や学校でセックスして、相手の気持ちを考えていない行為の度に、波はいつも涙を流していたというのに。
少なからず、好かれてはいないだろうと思っていたはずだったのに……。
驚きのあまり、いつ果てたのかも分からずただただ律動を繰り返していた。
俺は、波を一人教室に取り残して、その場を去った。
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