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已んだ世界(4)
「お~い、陽介生きてっかぁ?」
授業をさぼり、俺は学校の屋上で寝転んでいた。俺を覗き込むコイツは金田。俺の親友だ。
「んだよっ、金田。人がせっかく気持ちよく寝てたってのに。邪魔すんな」
俺は、波とは違い落ち零れだ。女癖も悪く、素行も悪く、悪い噂は耐えない。
俺は仰向けの体を横向きに変える。
「お前さ~最近らしくねぇんじゃね? なんかあった?」
「別に……」
「なんかさ、こう……前は刺々しいっつーか、最近は丸くなったというか」
金田が俺の隣に座りそう言った。
「く……ははははっ、俺が? 丸くなったって? んなわけねぇだろっ」
「いや、でも本当に変わったよ、お前。大人になったっつーか」
「なに、それ。今までガキだったっつーことか?」
金田の顔を思い切り睨んでやる。
そして、ゆっくりと起き上がるとフェンスにもたれかかり煙草を手にした。
「おい、陽介。煙草やめたんじゃなかったのか?」
「ああ、バレたら波の大学推薦取り消しになるかなって思って禁煙してたけど、なんか吸わなきゃやってらんなくてさー」
「お前、何悩んでんの? 俺にも言えないこと?」
「何も悩んじゃいねーよ」
煙草に火は点けなかった。
口に咥えるところまではいけた。
いざ、火を点けるとなると波のことが脳裏に浮かんで、ライターをポケットにしまいこんでしまった。
残りの煙草を一本一本千切って屋上から運動場へと投げ捨てる。
「勿体ない!」という金田の言葉を無視して全ての煙草を千切った。
煙草の屑が風に乗って、ひらひらと雪のように舞った。
俺の楽しみが一つ消えた。だが、それを引き換えにしてでも、手に入れたいほどに恋しいんだ。
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