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見下した月(5)
行為を終えると、波は枕に顔を埋めたまま泣き止まない。
俺に背を向け、ただひたすら声を押し殺して泣いている。そんな波の頭を俺は優しく撫でることしかできない。
どんなに罵倒されても、神から見放されたとしても、どうしてもこの腕の中で抱きたかった。
「……叶うなら、俺の中に流れている血を全て抜き出して……他人の血と入れ替えたいよ」
か細く呟いた言葉に、波は気付いただろうか。
「ごめん。もう二度と……姉貴には触れない」
言いながら俺は波の顔を一度も見ることもなく、部屋から出て行った。
扉を閉めてドアの前で深呼吸をした。強く目を瞑り、先ほどの行為を思い返す。
そして、ゆっくりと再び目を開いた。薄く笑った俺の姿はきっと、悪魔のようだろう。反省などしていない。するわけがない。
姉貴はきっと、俺を求めてくる。
そう確信した。俺とのセックスが忘れられず、他の男じゃもの足りなくて俺を求めにくるだろう。
だから俺はそれまで待つ。俺の部屋の扉を姉貴が自分自身で開けるのを。
あれから数日、俺の部屋の扉がノックされた。母さんか? 父さんか? それとも……。
「陽介」
顔を覗かせたのは、姉貴だった。波は扉を閉め、部屋の入り口に立ったままだ。
俺は口元の端を持ち上げ不敵な笑みを浮かべながらベッドに座る。
「……来いよ」
言いながら、俺は波に手を差し伸べた。ゆっくりと、波はその手を握り返す。
「やっと捕まえた。姉貴はもう……」
俺のものだ。
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