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プロローグ
夕空を眺めては、ため息を吐いていた。
学校から家に帰る途中、いつも立ち寄る川沿いに腰を下ろして空を仰ぐ。
学ランの第二ボタンまでを外すと、そのまま後ろへと寝転んだ。
明るい。
冬だというのに、空はまだ闇ではなくオレンジ色で嫌気がさすほど明るくて、思わず瞼を閉じてしまった。
枕代わりの手はじんじんと痺れてきたが、目を瞑ると時間が止まったように感じているため、さほど気にはならなかった。
ここでこうして暇を持て余しているのには理由がある。
とにかく、家に帰りたくないからだ。今の時間、家に帰れば必ずアイツがいる。
「波……」
呟いた言葉が、切なげに響いた。
今すぐにこの世なんてなくなればいいのに……。
宇宙に漂う死んだ星が地球に衝突して、目の前のこの空が真っ赤に染まったとしたならば、俺は唇の端を持ち上げてほくそ笑むだろう。
だって、この世の全てがなくなるってことは、この世を縛りつけているぴらぴらとした薄っぺらい戸籍やらそんな紙切れ一枚なんて一瞬で燃えおちるじゃないか。
そうなればいいのに。
現実味なんて一切ない馬鹿げたことだ。そんなことあるはずないって分かっている。分かっているはずなのに。
それが、今の俺の願いだ。
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