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第5話

 インターホンが鳴った。目の前の濡れた甥と視線が()ち合う。 「俺が出る」  嘲弄が降ってくるものと思われたが京美(みやび)はしかつめらしい顔をして耳元で囁いた。  雨天ではあるけれど気温はそう急激には下がっていないはずだった。しかし朋夜(ともよ)は寒くて仕方がない。  京美はチェーンロックを掛けてから玄関ドアを開けた。弟の声がした。 「今日は叔母さん、いないから」 「どこに出掛けたんですか?」 「知らない」 「一緒に暮らしているのに?連絡取り合わないんですか?」  神流(かんな)の声は嫌味たっぷりであった。姉とその義甥(ぎせい)が上手くいっていないことを彼は察している。 「姉が出掛けているにもかかわらず、チェーンなんてするんですね。まさか締め出した……とかじゃないですよね?この前みたいに」  内容は嫌味であるが、まるで嫌味を言っているつもりはないとばかりに彼の声音は朗らかだ。 「家庭のことだろ。神流(かんな)おぢさんには関係ない」  京美は19歳だが、叔母の弟は16、7歳の高校生だ。年齢と立場で彼も複雑なところにいる。 「姉が暮らしているんですよ、僕の家族が。関係ないだなんて、心外だな」 「叔母さんは外出中だから。出直したら」 「残念だな。せっかく来たのに。姉さんに伝えておいてくれますか。いつでも帰ってきてって」 「一字一句間違えずに伝えておくよ。じゃあね、おぢさん」  京美は言い終えると相手の返事も聞かずに玄関ドアを閉めた。壁際で凍りついている叔母の元へ戻ってくる。 「で、帰る?俺に嫌味言われるのと、優しい弟のところに帰るの、どっちがいい?」  妙に乾いた冷たい手が身動きのとれない叔母の頬に添わる。彼女は自分に身体の自由があることさえ忘れているようだった。 「帰って実の弟とセックスするのと、ここで非血縁者(たにん)の俺にレイプされるの、どっちがいいか、選べよ」  ただでさえ寒くっていたが、さらに冷え切っていく。 「何………言って…………」 「まぁ、いいや。自分で選んで」  頬に沿う手が唇へと移動する。紅を引くような所作でありながら、淡いピンクのリップカラーが拭われていきそうだ。 「京美くん……」 「いくら弟でも、これって叔父貴に対する不倫じゃない?」  身を裂かれるような一言である。弟に暴かれたことは本意ではなかった。そこに付随して不倫の烙印を押されてしまった。 「ごめ……んなさ、い」  弁解するよりも肯定したほうがダメージが少ないことを学んでいた。そして尊敬する叔父を裏切られた京美にとって、義理の叔母の事情などどうでもいいのだろう。問題は有無である。程度や経緯などは関係ない。  朋夜は引き攣って強張った愛想笑いを浮かべた。それでいて視界は滲む。 「叔母さん……?」  甥は顔を覗き込むように首を捻る。それは威圧に違いなかった。 「ごめんなさい」  不倫した立場でありながら、甥の前で笑みを浮かべている。 「悪いと思ってるの?」  目の前の甥の肉体に張り付いた服の繊維にすら焦点が合わない。視覚は曇り使い物にならなかった。瞬けば涙が溢れ落ちてしまう。果たして唯一の保護者に裏切られた義甥の前で裏切った側が落涙することなど赦されるのか。 「うん」  「本当に?」 「はい」  壁につけた拳の中で爪が掌に突き刺さって戦慄く。 「じゃあ責任取れよ」  頷いた。 「どう責任取るか、分かってるの?」  首を振る。雨の匂いと弱い汗の匂いと甥の香水の匂いが接近し、重なる影を濃くした。 「―清純ぶるなよ。シャワー浴びてくる。部屋で待ってて」  壁から引き剥がされて、京美の自室前に放られる。彼はシャワーを浴びに行ってしまった。朋夜は部屋の扉を開けることもせず、そのまま玄関へと走ってしまった。外へと出た瞬間に声がかかる。 「見~つけた」  全身の毛穴が締まる。肌が粟立った。 「でもおかしいな。京美兄さん、姉さんは外出中って言っていたのに。コミュニケーション取れてないんだな」  他人であればそれは楽園天国から落ちてきた白翼の徒に見えたかも知れない。しかし朋夜からすれば姉を肉欲の捌け口にする牡獣である。 「姉さん、来ちゃった。学校早く終わったんだ」  弟に身長を抜かされたのは彼が中学3年生のときだった。しかし弟はまだ小さい頃のように姉に抱き付く。 「そう。神流ちゃん、でもわたし、これから用があるの」  姉のほうはいつまでも昔のようには居られない。弟はもう牡犬や牡猫と変わらないのである。突っ慳貪(けんどん)に弟を撥ね除ける。 「姉さん」 「この前は急に帰って、びっくりさせちゃったよね。心配させちゃったよね。でも大丈夫だから。わたし京美くんと、ちゃんとやれてるから」  弟を置いて行くあてもない散歩に出ようとしていた。 「姉さん。用って何?どこ行くの?僕も途中まで一緒に行くよ。帰るところだったんだし」  一度振り解いた腕がまた絡みつく。恋人にするような、朋夜の認識としては主に女側が惚れた男にするような仕草だった。 「神流ちゃん」  姉から見ても、また姉として周りから掛けられる評価としても神流は明眸皓歯(めいぼうこうし)の美少年である。獣欲をその身に秘めている点を除けば物腰は柔らかく、品行方正で聡明な弟だ。線の太い、体臭のきつそうな、髭面の似合う、色黒い男性が好みという者を除けば誰もがこの弟を隣に置いておきたいに違いない。朋夜も過ちを犯した夜まではそう思っていた。選り取り見取りなのである。引く手数多(てあまた)のはずなのだ。それがこのように姉にばかり懐いているのは彼の高校時代にもやがて影を落とすだろう。 「恥ずかしくないの?」 「恥ずかしい?どうして。自慢の姉さんなのに」  絡めた腕が不穏な動きをする。朋夜の手に辿り着き、指を絡めた。 「放して神流ちゃん」 「姉さんは僕のカノジョなのに?」  身体中、五臓六腑までが低体温症といわず凍傷を起こしそうな悪寒に襲われる。 「やめて、神流ちゃん。冗談でも……気持ち悪いよ」  もしこの珠のように美しい弟と一線さえ越えていなければこのような厭悪感を催すことはなかったのかも知れない。 「冗談?やだな、姉さん。冗談なわけないよ」 「嫌な冗談。もう言わないで」  柔軟剤が薫る。瑞々しい制服の巻きついた腕を引き抜く。 「姉さん……?もしかして意識してるの?」 「やめてよ!」  朋夜は叫んでしまった。エントランスに差し掛かり、響きやすい材質と相俟って(こだま)する。エクステンションしているのかと問いたくなるような弟の長い睫毛がぱちくりと上下する。何が姉を怒らせたのか分かっていないようだった。 「姉さん……?」 「やめて。もうここには来ないで。わたしは仁実さんと結婚しているの。おかしなこと言わないで。あなたは学校でカノジョ作りなさい」  甥から放たれた「不倫」の一言が彼女を圧迫している。そういうつもりはなかった。弟と禽獣のような関係になるつもりはなかった。況してや夫や義甥を裏切り嘲笑うつもりなどなかった。 「姉さん」 「帰りなさい。わたしはもう:飛髙(ひだか)の人間です」  ガラス玉のような目が姉を見澄ます。 「僕がそんな簡単に諦めると思ってる?姉さん……こっちは昔から性癖捻じ曲げられてんのに」 「何を言って……」  美少年は桜色の唇を儚く綻ばせる。 「姉さんは甥っ子が可愛いんだもんね。分かったよ。もう姉さんは、僕だけの姉さんじゃないんだもんね」  彼は簡単に腕を放す。 「帰るよ。でもまた来るからね、姉さん」  神流は柔らかく笑んで、もう振り返りもせずに帰っていった。幼少期から年の離れた弟を構ってきた姉に仄かな罪悪感を植え付ける。  エントランスから見える外はまだそういう時間帯ではなかったけれど天気によって暗くなっていた。弟を突き放した後で、何もあのような態度をとる必要はなかったのではないかと思いはじめた。 「ねぇ」  肩を突然掴まれて後ろへ引かれる。立ち眩みを起こしたみたいに片足が後ろに踏み込んだ。 「せっかく俺が弟追っ払ったのに何してんの?本当にどっか行く気だった?」  京美がそこにいる。まだ湿った服を着てい、シャワーを浴びる前のようだった。 「京美くん……なんで……………」  甥を見上げると彼は外方を向いた。そして小さく(くしゃみ)をする。 「帰ろ。ほら、早く」 「ちょ、ちょっと用を思い出して……」 「なんの?どんな用?傘ないの?財布も持たずに?そんなかっこうで?」  朋夜は濃いピンク色のエプロンを下げたままだった。 「あ……」 「別にいいけど」 「ごめんなさい」 「叔母さん、謝罪し過ぎて叔母さんの謝罪に価値なんて無くなってるからね。びっくりした。飛び降りるんじゃないかと思った」  彼は朋夜の二の腕を掴んで引っ張る。エレベーターに乗る。ドアが閉まる。湿った匂いを纏う甥が窮屈そうに身を寄せた。しかし重量制限は約800kgのこの空間で乗っているのは2人きりである。まるで義甥には大勢の乗員でも見えているかのようであった。 「京美くん、苦しい……」  壁と水気を含んだ布越しの筋肉で彼は叔母を圧死させるつもりなのかも知れなかった。 「さっき弟に何言われたの」  弟との接触を彼は見ていたようだ。 「何も……」 「嘘だ。何か話してた」 「学校で、カノジョを作りなさいってこと……」  ちょうど良いところでエレベーターのドアが開いた。しかし京美は叔母の前から退かない。つまりエレベーターから降りようとしない。 「京美くん」 「ふぅん」  腕を乱暴に掴まれ、引き摺り降ろされたといっても間違いではなかった。力尽くで引っ張っている。この甥は叔母と散歩を拒否する飼犬とを勘違いしているのかも知れない。 「何、何?京美くん……」  自宅の玄関に朋夜は放り投げられた。鍵とチェーンロックが掛かる。靴を脱ぐのも忘れて彼女はたじろいだ。日々この義甥から鈍臭いというようなことを遠回しに言われている。仁実の元交際相手で京美も懐いているらしかった"奏音(かのん)さん"は機敏で察しが良く、気が利いたそうだ。 「あんたは、」  甥はチェーンロックに触れたまま、朋夜に背を向けていた。 「あんたは俺に、レイプされろよ」  項垂れている。剣呑な雰囲気を漂わせている。 「弟のところになんか帰るなよ」 「か、帰らない……よ、?」  激しい怯えと警戒でその返答は掠れて消え入る。返答の要るものだったのかも定かではない。 「俺が怖い?叔母のクセに」  鼻で嗤い、彼は朋夜を壁に押し付ける。肩を掴まれ彼女は目を泳がせた。小さい頃から仲の良かった実の弟すら今となっては恐れている身である。 「叔母のクセに……!」  骨と肉を握り潰すような力加減に朋夜は顔を顰める。それが生意気だとでも言わんばかりに顎を持たれ、途端に顔が衝突した。唇と唇がぶつかる。事故だったのだろう。触れてすぐに離れた。おそらく(つまず)いたのだ。事故だ。朋夜は何事もなかったように振る舞う。しかし甥が怖い。 「ごめんね、心配かけて。でも、早くシャワー浴びてきたほうがいいよ」 「そう言って、また逃げる気なんだ」 「逃げ……」 「責任取る、悪いと思ってるっていっておきながらこれか。もういいよ。もういいから。叔母さんなんかに最初から何も期待してない」  壁と背の狭間に彼の腕が割り込んだ。腰を抱かれる。 「ごめ……」 「いいよ、もう謝らなくて。何の価値もないし、思ってないんだろ、最初から。"あたしが悪い"だなんて、微塵も」  歩かされて脱衣所へと入る。朋夜は奥に押し込まれ、出入り口を京美が塞いでいた。湿った匂いのするシャツを脱ぎ、鍛えられた上半身が露わになった。 「脱げよ。服着たままシャワー浴びんの?」 「あ……えっと、シャワーって……」 「目、離すと逃げるんでしょ。もう期待しないし信用もしない」  ぼやぼやしている朋夜のエプロンにしなやかな腕が伸びた。 「ちょっと、いや……!」 「服破られたくないなら自分で脱いで」  エプロンだけは自ら脱いだ。しかしそれ以上は躊躇する。服の裾を摘んで、それから脱ぐ動作に移れない。 「破られたかった?仕方ないな」  靴下を脱いでいた京美がなかなか服を脱がない叔母に気付くと、彼女の襟元を両手で握った。 「ぬ、脱ぐから……自分で………」 「ふぅん。俺は別にいつでも破いてあげられるけど」  今にも服の繊維を裂こうとしている手が落ちていく。普段は節くれだった嫋やかな感じさえ覚えていた長く細い指が今ほど凶悪に見えたことはない。  朋夜は勢いに任せて服を脱いだ。キャミソールと透けたブラジャーが晒される。靴下を脱ぎ終え、ボトムスの前を寛げた京美が顔を上げる。長く濃い睫毛に囲われた切れ長の目の奥で、眸子が爛と妖しく照った。紺色の地に紅色や金色で花の刺繍が入っているブラジャーを甥が滾りきった眼差しで眺めている。 「下は?下も脱いで」  彼はタックボタンを外し、ファスナーも下ろしていた。しかしそれらを直し、腕を組んで叔母に力強い視線を注ぐ。 「恥ずかしい……」 「これから裸になるんだけど。このままシャワー浴びる?」  首を振る。甥が怖い。ブラジャーと揃いの紺色のショーツを見せる。擦り切れそうな吐息が聞こえた。大学で若い女を見ているだろう。何故わざわざ忌み嫌っている叔母の肌を見たがるのか。否、彼女は考えて理由を突き止めた。忌み嫌い、憎み恨んでいるゆえにこのような嫌がらせを敢行しているのだ。 「ごめんなさい、京美くん…………赦して……」 「赦さない。赦せるわけないでしょ。赦さないよ、叔母さん」 「赦して……ごめんなさい。これ以上は……」  甥が怖い。朋夜は自分自身を抱いた 「なに、寒いの?じゃあさっさと脱いで。シャワー浴びようよ」  しかし下着を脱げない。小さくなって首を振り続けることしかできなかった。 「ふぅん。じゃあいいや、そのままで」  京美はひょいひょいと着ているものを籠に放った。逞しい肉体を直視できず朋夜は顔を覆う。 「甥のカラダ、意識してるの?叔母さんのクセに」  そう言う口の下方、脚の間で甥のものは(いき)り勃っている。目に入ってしまった瞬間から朋夜はもうそのほうを見られなかった。 「俺は叔母さんのカラダ、意識してるよ」  汗ばんだ温い手に自身を抱いていた手を剥がされ、導かれた。朋夜は顔を逸らし、目を伏せる。指先に硬く熱を持ったものが当たった。 「こんなことしちゃ……だめ……」 「俺って母さんの顔知らないでしょ。叔父貴から聞いたと思うだけど。だから女ってものにコンプレックスあるわけ。俺がそこら辺の女襲ったら、叔母さん、困らない?困るよね。こんな若い叔母さんと二人暮らしなら、どうして叔母さんが俺のこと満たしてくれなかったのかって、世間はそう言うよ。可哀想な被害者もその家族もきっとそう言うんじゃない?ねぇ?叔母さん」  膨張が手を擦る。摩擦させられている。それに気付くと指が動いた。硬度のある弾力が引っ掛かる。 「ぁ……っ、叔母さん………」  その反応から爪で引っ掻いてしまったのかと思われた。 「ごめんなさ、……っ」  腕を引き戻す。しかし甥の温かいものに触れた手指が一体誰のものなのか、彼女は分からなくなってしまったのか、曖昧に宙に置かれた。 「もう我慢できないよ、叔母さん」  まだ湯は沸かしていない。外は雨で気温は下がっている。しかし朋夜の晒された皮膚を蒸れたものが駆けていった。鼻に生々しい人肌の匂いが纏わりつく。それはおそらく嗅覚を働かせるものではなかった。  爛れそうなほど熱く濡れた掌が彼女の肩を掴んで後ろを向かせる。何をするのか疑問に思う暇もなかった。すぐさま熱気は背筋を炙った。腿を強く押される。甥がいつもにも増して、何がしたいのか分からない。彼はポージングにこだわりを見せ、叔母の脚が交差したとき、彼女の腿と腿の密接した狭間を熱塊が割り開いた。 「な……に、」  溜息に似た冷えた微風が髪と耳に吹きつける。腿を押していた手が朋夜の腹を抱く。 「脚、閉じてて」 「京美くん……何、するの?」 「………挿れないから、」  とうとう風邪をひいたのか、彼の肌も声も息も熱っぽい。外は寒いはずだった。しかし脱衣所は蒸れている。 「京美くん、体調、わ……る、んっ、」  腿と腿で挟まされているものが前後に動いた。妖異な温かさとくすぐったさに朋夜は眉根を寄せた。口腔が潤っていくが嚥下を忘れた。 「叔母さん………っ、叔母さん………」  聞き慣れた嫌味な調子がなかった。甘えるような、寂しがるような声色に鼓膜が蕩けそうになる。哀れな孤児(みなしご)に助けを求められている。縋られ、頼られている。歳の離れた弟を長いこと看ていなければならなかった、またそういう性分であった朋夜に妙な悦びを覚えさせる。 「あ………っ、」  しかしこの状況は何なのか。相手は甥である。互いに密室で肌を晒し、尚且つ触れさせ合っている。 「いけ、ないよ………っ、京美く………、だめ……」  腿と腿の間が激しく摩擦される。そのもの自体が熱いなのか、擦れた熱なのか分からなかった。身体中が蒸れていく。湯中(ゆあた)りを起こしたみたいだった。熱帯夜にみる夢のようでもある。やがて熱源が上へと向かっていく。紺色のサテン生地で行き止まる。  深い嘆息を朋夜は真上で聞いた。腹に粘り気の強い液体が飛び散った。 「そんな……」  真後ろにいるのはもう甥ではなかった。暴走した牡獣が一頭、目の前の牝に飢えて唸っている。紺色の布地が震えている膝まで下ろされる。朋夜は前で茂る薄い叢を両手で隠した。滴る粘液が不快だった。 「やめて、京美くん。やめて……?わたしが悪かったから……」  だが牡獣は話を聞くどころか彼女のブラジャーの留具を外した。ストラップが左右に開く。肩紐が二の腕まで落とされる。  忙しない息遣いに身を竦める。その直後に紐の滑り落ちて無くなった肩が湿った。べろりと舐められ、歯が減り込む。甥は獣で、それは獅子だった。 「痛……っ、」  あとは力尽くだった。ブラジャーもショーツも剥ぎ取られ、成す(すべ)のない獲物は浴室へ引き摺り込まれる。放り投げられ、撥水加工された壁へ背を打った。すぐには熱くならないシャワーを目の前の牡獣が頭からかぶる。 「京美くん、風邪ひいちゃうよ……」  捕食者に自ら触れた。爛々とした目は水を浴びた程度では冷めなかった。非捕食者の唇に噛み付く。シャワーヘッドが落ちる。持っていた手は餌の瑞々しい肌を鷲掴んで放さない。鷲掴む、文字通りそれは猛禽類の如く叔母の肉に爪が刺さる。肉食獣が夢中になって唇を吸う。 「ぃ、や……、!」  朋夜は力一杯、捕食されることを拒絶した。咄嗟に顔を(はた)いていた。整いすぎている横面を見て、彼女も冷静になる。 「ごめ………っ、でも、」  京美は無言だった。スプリンクラー同然というには虚空に噴水するシャワーヘッドを拾い上げた。引き締まった尻と緊迫感のある腿、膝裏、脹脛が野生的な色気と危うさを醸し出している。 「痛、かった……?」  彼は黙っている。身体をシャワーで流してから狼狽している叔母にシャワーを向けた。彼女の腹に粘こく滴る体液が落ちていく。そして京美はホルダーにシャワーを戻す。 「ごめんね……」  謝る叔母に彼は何も返さない。ただタイルの壁に彼女を突き飛ばす。屈んだかと思うと股を隠す腕を剥がし、そこに頭を埋める。朋夜はあまりの奇行に驚いて、胸を隠すのも忘れた。両手で濡れかけた甥の艶やかな髪に指を入れる。 「いや……、いや、京美くん、どうしたの?」  蕾んだ肌を舐め上げられる。秘められた敏感な蕊にその感触が響いた。 「ん……」  甥を離すつもりの力が弱まる。膝が震えた。京美は叔母の両腕を彼女の腿に縫い留め、舌はさらに奥へ進み、秘芽に至る。 「あ………あっん」  シャワーがタイルを叩く。そこに甘い声が混ざる。朋夜は唇を噛んだ。しかし京美の舌技に彼女は溺れたみたいに口を開いた。淫花の萌動は至近距離にあるこの甥に伝わっているだろう。温く濡れた若花弁が慎ましく熟れた小花弁を甚振る。  もう自力で立つことできなかった。朋夜は壁伝いに落ちていく。京美もそのまま彼女の火照った肉体を支えたまま下降していく。尻をタイルの床につけた女の無防備な膝を割り開き、さらに奥へ頭を沈める。内股を毛先が掠めていく。 「だ……め…………」 「イって、朋夜。俺で」  虚空に噴き上げるシャワーが彼の言葉を掻き消していく。何か言っているのだけが叔母には伝わった。的確な舌の悪戯に彼女は昂り、やがて突き抜ける。
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