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リムの告白

 「誰?」 思春期まっさかりの男子のそっけない返事が中から聞こえた。リムは声変わりしていたが、歌が上手くて、どこか透き通るような爽やかな声で、プリシラは幼い頃からリムの声を愛していた。 「あたしよお。また勉強教えてくれない?」 「・・・・・・。オマエさあ、連絡してから来いよ」 ドアも開けず、部屋の中から、リムは愛想なく返事をした。 「ごめーん!隣だし来ちゃったのよ」 そんなプリシラの調子の良い言葉を聞いて、リムは部屋の中で一つ溜息を吐いた。 「今日は何?僕も受験勉強しないといけないし、そんなに教えられないよ」また愛想なく答えたが、無視はしなかった。 「いいわ、少しでも。駄目ならトゥオルに聞いてみるけど」 わざとリムの親友でありライバルでもあるトゥオルの名前を出して、プリシラはリムの自尊心をくすぐろうとした。 プリシラの思い通り、リムは、トゥオルと聞いて、プリシラがトゥオルに教わるのは嫌だと思った。面倒だけど自分が教えたい。 「いいよ、いい。僕が教えてやる。入りな」 それを聞いたプリシラは、ドアの向こうで、作戦成功!とでもいうように、声は出さず、にんまりとしてガッツポーズをし、そっとリムの部屋のドアを開けた。 「えへ、失礼しまーす」 「うん」 リムは、少々困った顔をして面倒くさそうに動かず机に向かっていた。しかし、細目でチラと小学6年生のプリシラを見ると、嬉しそうな顔にドキ!っとした。恋心ではないだろう。顔が赤くなっていないかリムは気になったが、焦る様子をプリシラに知られないようにした。 「ねえ、今日はリムママもケビィもリムも、なんかそっけなくて暗いわねえ?何かあったの?」 プリシラは、慣れたように、ソファに座って、その前の長机に教科書を出しながら心配した。 「別に。父さんがバレジアに転勤して、*¹zoneの店長になるか、単身赴任になるかもしれなくて、そしたら母さんもバレジア大学病院に行くかもって言ってるんだ」 「ええ!?」 「うん。すると家族全員でバレジアに引っ越すかもしれないんだよ」 「えー!!」 リムは、プリシラの声があまりにも大きくて、耳がキーンとし、 一瞬、耳を塞いで目を瞑った。 「それで、僕とケビィは、ケビィがまだ小さいから家族でバレジアに引っ越すか、今考え中なんだよ」 言いながら、悲愴な顔をしているプリシラの方を、心配しないではおれずに向いた。 「え、え?バレジアへ?そしたら、リムはバレジアの高校も受験するの?」 「うん」そう返事したリムの声は、少し寂しそうで、仕方ないというように少し表情を暗くし、肩をすくめて落とした。 「えーっ、えーっ、嫌よ!リムお兄ちゃんがバレジアに行っちゃうなんて!引っ越ししちゃうの?いつ?私と隣同士じゃなくなるの?」 「そうだな」 「じゃあ、今までみたいに、すぐ来て、お話したり、勉強教えてもらえなくなるの?」 プリシラは焦って矢継ぎ早に聞く。 リムは、プリシラの斜め向かいの1人掛けソファに近づき、悪いことをした気がして暗い顔でゆっくりと黙って座り、プリシラの全ての質問にまとめて顎を引いて頷いた。 「そ、そんなあ・・・・・・」プリシラはガッカリし過ぎて、 力が抜けて肩を落とした。 [注] *¹プリシラの祖父が創業した、バレジアのカリスマ美容院(zone:ゾーネ)
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