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「………僕らは、君を守るためにやって来たんだ。 だから………此処に留まっていてくれるね」 「っ………教会には帰れないんですか、」 呟くと、冷たい声音が響く。 「………恐らく教会の人間は殺されているでしょう。 貴女を匿っていたのですから、彼らが容赦する筈がありませんよ」 「………フリート」 咎めるようにフェルアンが呟く。 「お前にとって、此処にいるのが一番安全だ。迷う余地なんてない筈だろ」 ハディクも口をはさむ。 (………帰る場所が、ないのなら) 「わかりました。………此処に、います」 「………!! ありがとう」 温もりとともに、頭上から降ってくる声。 フェルアンに包み込まれているのだと、一拍遅れて気づく。 (どうしてかな。 ………こんなような事が、ずっと前にもあった気がするよ) 「………フェルアン殿」 彼からとまどう彼女をそっと引き離し、フリートは呟く。 「お部屋へご案内いたします。………祈璃様、こちらへ」 こちらを見ようとしないまま、彼女を誘う。 彼の横をすり抜けたとき、ほのかに白百合の香りがした。 「っ…………。」 伸ばした手は、彼女に触れることはなく。 「やれやれ………僕は警戒されているようだね」 苦笑交じりに呟くと、紅茶を一気に呑みほした。 「………あいつはあんたの事、なにも覚えてねえだろ」 思わず彼をみつめると、挑戦的な視線を向けていた。 「それでも………選ぶのは彼女さ」 微笑みを返しつつ部屋を出ていく。 (君がすべてを忘れていても、それでも僕は―――。) 「………祈璃」 呟いた名前は、悲しいほど優しかった。
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