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第1話

 氷の王子様は 斬頭台を (たちま)ち凍らせてしまいました。 こうして村長さんは助かりました。氷の王子様は この村長さんの美しい娘をもらい いつまでも幸せに暮らしました。 めでたし めでたし。  おやすみなさい、白雪。  氷の王子様の話を読んでもらうのが好きだった。色素の薄い髪を揺らしながら絵本を読む姿を眺めているのが。優しい叔父が大好きで、白雪にとって伽話の氷の王子様だった。血は繋がらない叔父。  その叔父は白雪を遺して死んだ。訃報が入ったのはまだ授業中で、2つ下の弟を迎えに行きながら半狂乱になったのを覚えている。  大学生活にも慣れ、今は弟と2人で暮らしていた。時折役所の人が様子を見に来て人懐こい弟と遊んで帰っていく。髭が伸び放しで髪はぼさぼさ、服装も生活態度もだらしない男で、弟と遊ぶというよりかは弟に遊んでもらっているという感じがあった。 「そろそろ帰りますよ。いやぁ、銀灰(ぎんかい)さんはボクの息子くんと違って元気でいいね。ボクの息子くんなんか毎日部屋に閉じこもって勉強ばかりしてますよ。白雪さんと同い年なんですが…」  草臥れた革靴を履きながら役所の男は見送りに来た白雪に語った。毎度この男は呆れたように話すが大体は弟の銀灰を褒めているようですべて息子の話題に変わっていく。別れた妻との間に息子と娘がいるとは聞いていた。 「もう帰るんすかぁ」  弟がリビングから役所勤めの男を呼んでどたどたと玄関へ駆けてくる。 「う~ん、そろそろ帰らないとですからね。ごちそうさまでした」 「お粗末様でした。いつもお世話になっていますから」  この公務員は時々休み時間にやって来て、姉弟と昼飯を摂った。叔父の座っていた席が埋まることにどこか安心感を覚えた。 「また来てくださいっす」 「ええ、またお邪魔させていただきますよ」  自称35歳というこの中年男はへらへらとした軟派な笑みを浮かべて帰っていった。弟はじっと玄関を見ている。捨てられた子犬のような感じが切なくて白雪は彼の腕を引いた。 「行こ」 「うん!」  雰囲気は人懐こい子犬のようだったが面立ちは猫のようで大きな吊り目が白雪を捉えて無邪気に笑った。  あの人かっこよくない?  単純な興味か、それとも反射だったのかは白雪にも分からなかった。ただ黄色い声の先にいた人物が目に留まる。すらりとした脚と小さな頭、細い腰と張った肩の美しいシルエットをした黒髪の男だった。ありがちな赤いフレームの眼鏡が雅やかに整えた風采を壊しどこか俗っぽく見せた。レンズの奥の切長の目から流した視線を向けられる。白雪は慌てて目を逸らした。しかし青年は驚いた顔をした白雪のほうへやって来る。よく磨かれた革靴が小気味良く鳴った。 「姉さん…?」  3歩、4歩ほど離れたところで彼は止まり、虚ろな眼差しを白雪へ向ける。目が合った途端に焦点が合った。先に声を掛けてきたのは相手のほうだというのに心底嫌そうな表情を浮かべられ、目の前から消えていった。  黒髪の青年は講師だった。宗教学の非常勤講師で、白雪にみせたような不可解で嫌味な様子はなく人当たり良さそうな穏やかな笑みで講義を行っていた。授業終わりに提出を求められたアンケートを出しに行くと片付けをしていたその講師に呼び止められる。 「すみません。手伝っていただけますか」  人好きのする柔らかな笑みで、先程の気難しげな印象を拭う。 「はい」  次の講義はそう焦る必要もなかった。アンケート記入のために10分ほど早く終わり、講義の参加者たちは資料を提出すると大講義室から人が出ていった。 「すみません。書類管理室までいいですか。お時間は?」 「大丈夫です」  赤い鍍金のフレーム奥にある目が細まる。翡翠(ひすい)と名乗っていた講師は白雪にアンケートの紙束を持たせ、荷物と機材を抱えていた。地下にある書類管理室に行くと講師は荷物を置いて白雪から書類の束を預かった。 「ありがとうございます。すみませんでしたね。お友達は待たせているんですか」 「先に行ってもらってます」 「ならよかった」  くすくすと彼は笑った。白雪が背を向けた途端、物凄い力で肩を掴まれ扉横の壁に押し付けられる。身体を回され、背を強く打った。転んだ拍子に押されたものかと思った。がくりと項垂れた黒髪が持ち上がるのを待つ。 「大丈夫ですか?」  赤いフレームの眼鏡が光った。突然首に手が回る。容赦のない力で喉が絞められる。 「姉さん」 「ぁ…ぐっ、」  翡翠の手を引っ掻いた。しかし力は弱まらない。 「姉さん…っ!姉さん!姉さんッ!姉さん、姉さん、姉さん!」  酸素が足らなくなる。切なく甘えた声で目の前の暴漢は誰かを呼んだ。白雪は身を捻って逃げようとする。しかし首の拘束は解かれず、喉が痛む。 「カレシと別れたら、やめてあげる。姉さん…」  意識が遠退いていく。安らかな眠気に似ていた。 『だめ…だよ。退きなさい、退きなさい、白雪…』  背は高いが細い叔父を縛り上げて白雪は彼の上に跨った。色素が薄く毛髪も細い叔父が頭を振り乱して白雪を落とそうとする。 『今なら何もなかったことに出来るから…白雪、いけないよ。降りなさい』  肌を触れば性別を表す箇所が反応した。 『叔父さん…どこにも行かないで。ここにいて。行かないで』  固く熱い器官を扱く。まだ叔父といられた頃よりも大きくなった身体を、時間が止まったままの痩身に重ねる。 『白雪、いけない。だめだよ、白雪…』 『叔父さん…傍にいて。叔父さん…』  ショーツを脱いで美しい叔父には似合わない教科書でしか見たことのない男が持っているグロテスクな屹立に乗った。上から穿たれ、何も入ったことのない秘められた場所が割り開かれていく。 『叔父さん…っ!』  中途半端な稲光といった具合の明滅とともに意識を取り戻す。腕が自分の意思と離れたところで動いている。質感と温度を包んでいる。 「…ッ、姉さん、姉さん…ッ!姉さん!」  掠れた吐息が聞こえる。薄らと目を開けた。 「姉さん…っ!」  白雪の手を動かしていた体温が止まる。切羽詰まった声が漏れ、掌に脈動が伝わった。艶を帯びた息切れが響いた。白雪は身体を起こす。ギシ…と寝ていたところが軋む。 「ここは…どこ…?」  片手は濡れているというほどではなかったが水分に光っていた。コンクリート打ちの部屋は心なしか少し肌寒い。 「姉さん」  辺りを見回しているうちに死角から勢いよく抱擁される。 「ずっと探してた。ずっと探してたよ、姉さん…」  頬擦りしながら甘える声は1時間半以上ある講義の中で聞き覚えがある。 「翡翠先生…?」  抱き締めながら押し付け摩擦する頬や髪が離れ、横面に衝撃が走る。 「喋るな!」  翡翠は怒鳴った。白雪はびくりと肩を震わせる。叩かれた頬を汚れていないほうの手で摩る。 「姉さん…俺に会いに来てくれたんだね…」  黙っている白雪に身体を擦り寄せ、腕を背に回す。 「姉さん、ここで暮らそう!姉さん、姉さんッ!」  レンズのない裸眼を輝かせ、翡翠は白雪を覗き込んでまたその肉感を確かめるように力強く抱き締める。 「嬉しい!また2人で暮らせるんだ、姉さん。もう誰にも渡さないよ!」  白雪は気味の悪い講師をおそるおそる突き放した。 「姉さん…?」 「わたし…貴方のお姉さんじゃ、ない…」  首を掴まれ、眼前に迫られる。 「姉さんじゃないなら殺してやる…!姉さんじゃないなら死ね…っ!姉さんじゃないなら死ね、姉さんじゃないなら殺す!」  おそらくベッドらしきものにまた倒され、翡翠は容赦ない体重をかけ首を絞める。 「ぁ…がっ、ぐ、ぅ…っ!」 「姉さんだよね…?」  首を傾げて誰何(すいか)する声音は両手に反して優しかった。 「カレシなんて要らないよね?俺がいるんだもん。他にも何も、要らないよね?姉さん」 「ぁぐ…、ぁ…」  吐気がしたが喉が塞がれ吐くことは許されず、口の端から泡を吹く。意図せず嗽のような音が喉から漏れていた。 「返事できないか。ごめんね、姉さん。疑うような真似をして」  窒素の責め苦が終わり、翡翠の手は優しく白雪の髪を撫でた。目を閉じその感触を愉しんでいるのか感嘆の声を上げている。 「ごめんね、俺が姉さんを殺すわけない。姉さんのカレシじゃないんだから」  白雪の着ていたシャツがどこから出したか鋭い裁ち鋏で切られていく。 「な、に……っ?いや…、」 「怖がらないで、姉さん。俺は姉さんのこと傷付けないよ。だから動かないで?こんなみすぼらしい服いけないよ。カレシのシュミ?」  化学繊維が断ち切られ、低い金属音が鳴っている。白雪は尖り光る刃物を凝視していた。身動ぐが緊張に拘束され逃げることは叶わず、そこに留まるしかなかった。薄手のキャミソールの下にある地味なブラジャーを眺められる。 「清楚な姉さんによく似合ってる」  無地の淡いブルーのブラジャーに薄く大きな手が乗った。 「でも俺に会うために、また来てくれたんだよね?」  キャミソールも切られていく。露わになった肌理細かい小さな膨らみに彼の手が伸びる。 「いや!」  再び横面を張られる。乾いた音がコンクリート打ちの室内に響いた。衝撃と音の後に熱が生まれ、疼きに変わる。 「姉さんの器は黙ってろ…!」  顔の真横を殴られる。白雪は息を詰めた。彼女が動かなくなったことを確認すると講義中に浮かべていた笑みを取り戻す。 「着替えようね。姉さんに似合う下着を見つけたんだ。清楚なのもいいけど俺の前ではこういうの、着てほしい」  黒いレースだけでできた華奢なランジェリーが目の前で揺らされた。抱き竦めるように男の手が背中に回り、飾り気のないブラジャーのホックが外される。 「い、や…!」 「黙れ!お前は喋るな…!」 「いや!やめて…やだ!」  胸が外気に触れ白雪は自身を抱いて隠す。感動に満ち満ちた上擦った声が降る。 「姉さん…」  胸部に触れようとした両手は躊躇い、虚空を揉む。 「俺は姉さんを触らないよ。自分で着てみて。爪が引っ掛からないように気を付けてね」 「いや…、やめ…て…」  ジーンズの中で端末が振動する。電話だ。翡翠の目が鋭く白雪の下半身を射抜いた。 「出れば」  危険な男は身を引いた。白雪は片腕で胸を隠しながら電話に応じる。 『白雪ちゃん?今家お邪魔してんだけど、ピザ頼んだから晩飯要らねェわ。弟くんの分もあっから、テキトーに遊んで待ってる』  へらへらとした喋り方はしつこく勧誘されたまま入ったきりのオカルト研究会の会長だった。寺生まれだという噂があるが外見は大柄で屈強な男だった。 「家、散らかってない?何も出せる物が無くてごめんなさい。弟を頼みます」 『いいって!気にしなさんな。勝手にお邪魔しただけだからよ。弟くんに換わるけ?』 「うん。お願い」  白雪は背後から他人の熱に包まれた。胸を隠す手に腕が重なる。肩に顎を乗せられ、腹にも腕が巻き付いた。 『姉ちゃん?姉ちゃんのお客さん来てるっすよ。ピザ頼んでもらったっす』 「そう、よかった。もうすぐ帰れると思うから待っていてね」  元気な返事が聞こえ、電話を切る。日常をちらつかされて大きな不安の波が押し寄せて凍えた。 「姉さん…」 「帰らせて…!帰らせて、お願い…」  懇願は震えた。ブラジャーを付け直しながら断ち切られたシャツを着るしかなく、袖を通す。キャミソールを失い、ブラジャーは隠せず素肌が見えた。 「…そんな格好をしてどこに行くんです」 「帰らせてください、帰らせて…」  粘着質な光沢を帯びた目が接近する。 「ああ、今生ではもう血が繋がってないのだから姉さんを抱いてもいいんだね…?」  まだ痛みの残る頬に柔らか掌が添えられた。 「やめて!やめ、っ!」  ジーンズの前を乱暴に開かれ、脱がされていく。ブラジャーと揃いの無地のショーツが晒され、目の前の喉が隆起する。 「いや、いやッ…いや!」 「姉さん…」  黒髪がへその辺りを掠め、下腹部に頭を擦り付けた。 「来世は姉さんから産まれたい…」 「放して…!やめて、離れて…」  ずらしたショーツの中に手を差し込まれる。 「いや!ぁあっ」 「姉さん、今の身体ではまだ処女?」  体内に指が入った。柔らかな粘膜が擦れる痛みに白雪は身震いした。涙が溢れ、熱くなる喉が痛んだ。 「狭いね」  関節が膣内にぶつかり軋んだ。 「いつか姉さんに使えるんじゃないかって…用意したんだ。本当に使える日が来るなんて嬉しい」  ベッドの下から道具箱らしき物が取り出される。膣内にはまだ指が入ったままでゆっくり蠢いた。 「初めては痛いからね。きちんと慣らしておいてね、姉さん。気持ち良くなろう?あのカレシよりずっと気持ちヨくしてあげるから」  指が抜かれ、別の質感の物が入ってくる。丸みを持った滑らかな表面のそれは温度がなかった。縦に長いらしく、内部を占領する。カチリという音と共にヴヴ…と甲虫の羽音のような鼓膜にむず痒さを残す低音が響いた。 「あっや、や、や、ぁ…ッ!」 「姉さん、痛い思いしたくなかったら抜いちゃだめだよ。あの男とのハジメテは痛かったんじゃない?」  ショーツの上から膣内に埋まった異物を押し込まれ、振動の核が内壁に強く減り込む。 「やぁっ、や、ぁ…あっ」 「処女なのに感じやすいんだ。姉さん…ゆっくり慣らしていこ?送るから」  綺麗に畳まれた男性物のシャツを着せられていく。 「や…めてっ!とめ、てとめて…!」  腿を摩る手を止めると強く叩かれた。 「勘違いするな。お前の身体は姉さんの容れ物なんだ」  力の入れられなくなった身体を支えられる。洒落たアパートから車に乗せられ、住所を問われた。最寄駅だけ伝える。家まで送ると彼は言ってきかず、さらに家の近くにあるコンビニエンスストアを告げた。それ以上は言えなかった。 「弟でも呼ぶことですね」  冷たく言い放たれる。フロントガラスには雨が打ち付け、ワイパーが規則正しく揺れていた。 「姉さんの身体なんですよ、誰か迎えが来るまで待ちます」  白雪は忠告も聞かずに車から降りた。身体の中では異物が振動を続けている。時折リズムを付けて止まり、そしてまた芯となり彼女を苛む。普段どおりに歩くのも粘膜が抓られるように痛んだ。
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