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第四章 天女、翻弄 * 12 *

「すっかり冷えてしまったな」  桜桃の嘆きとほぼ同時に降り始めた冷たい雨は外にいた女学生たちを容赦なく襲った。  小環は蹲っていた桜桃を起こし、自分たちの部屋へ舞い戻る。  未だに悄然としている桜桃をひとまず寝台のうえへ座らせ、濡れた制服を脱がせていく。 「小環、なに……?」 「濡れたままでいたら風邪をひいてしまう。ほら、下着も濡れてるじゃないか」 「でも」 「いちどぜんぶ脱がすぞ。冷たくなった身体を温めてやる」  そう言いながら小環は顔を赤らめながら桜桃の身体を裸にしていく。  陶器のように青白い少女の裸体を前にした小環は、言葉を飲み込み、彼女の不安そうな視線を背けるように己の結んでいた髪紐をほどく。  裸のまま寝台の上で恥ずかしそうに、おとなしく固まっている桜桃を見て、小環は苦笑を浮かべる。 「……そこにある敷布を使え。身体を包めるだろ」 「でも、小環の布団が濡れちゃう」 「気にするな」  桜桃は呆れた表情の小環に指摘され、慌てて彼が使っていた敷布を身体に巻き付ける。  冷え切っていた身体がすこしだけ温かくなる。  ほんのり香るのは、彼の匂いだろうか。典雅でありながらすこし野性的な…… 「俺も同じ布団で寝ればいいだけだから」 「……ぇ?」  桜桃が小環の敷布を身体に巻き付けてホッとしている間に、小環も濡れた制服を脱いでいた。  高い位置で結わえていた彼の黒髪も肩までおろされ、いつもより艶っぽい。  女装を解いた彼の姿は凛々しくて、瑞々しい。 「身体が冷えないよう、温めてやるって言っただろ?」  それが同じ布団で、裸で抱き合う行為に及ぶことだと、桜桃は今更のように気づき、唖然とする。  桜桃が包んでいた敷布を奪い、小環は彼女の身体を優しく、寝台へ押し倒す――……
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