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第四章 天女、翻弄  * 7 *

「……びっくりした?」 「あ、うん」 「でも、いつものことだ。翌日にはまた仲良く顔を見せるから心配しなくても大丈夫」 「そうか」  同じカイムの民とはいえ部族によっては主義主張も異なるのだろう。  小環はふと疑問を感じて四季に掴まれた腕をほどく。 「どうした? 桂也乃たちのところに行くか?」 「いや。もうすこしはなしをききたい……カイムの民のはなしや、きみのこと、それからこの地でいま、何が起きているのかを」  一気に吐き出して、小環は思わず顔を赤らめてしまう。  まるで気になる女子に接近するための言い訳のような言葉だ。  下手をすれば口説いていると理解されてもおかしくなかった気がする。 「いいよ」  とはいえ、四季の返答は軽かった。 「こっちも曖昧な説明を受けるより、本人から事情を知りたいと思ったところだからさ。皇子サマ」  あえて茶化すように、四季は小環の正体を口に乗せる。 「な……」  最初からわかっていたよと嘯く四季の微笑に、思わず魅入って更に顔を赤らめる小環。そんな彼に、四季はあっさりと告げる。 「『雨』でも『雪』でもないカイムの民だけど、土地にまつわる神々のことなら誰にも負けないよ。なんせうちは『天』の巫女姫さまから神職を引き継いだ『逆斎さかさい』だからね」 「……逆さ斎いつき。そうか」  桜桃の母、セツが空我樹太朗に嫁した際、巫女姫の職務は『天』の傍流にあたる一族が引き継いだという。生粋のカシケキクではないため、彼らは神の加護を放棄しその土地に仕えるためにちからを持つとされている。皇一族の人間も、彼らの仔細については知らない。  天に逆らい地に従ったことを揶揄するように、逆さ斎などと呼ばれていることは知っていたが……  小環は我に却って四季を見つめる。 「そ。こっちも天女に春を呼んでもらいたくて必死なのさ」 「もしや、黒多桂也乃が接触を図る以前から俺たちのことを知っていたのか」 「いや。桂也乃が報せてくれたから慌てて帝都へ式神を飛ばしたところ。海軍の連絡船でやりとりしている文より正確で迅速に情報を手に入れられるよ。お望みなら、提供するけど」 「いいのか?」  小環が突っかかるように口を開くと、四季は安心させるように無邪気に笑いかける。 「つづきは部屋で語るよ。彼女を失ったら困る者同士、仲良くしようじゃないか」
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