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1st side -Natsume-*Act.6-04

「――夏目さん?」  ぼんやりとしていたら、いつの間にか萌恵の顔がすぐ目の前にあった。  突然のことに仰天した夏目は、自分でも驚く行動に出てしまう。  両手で萌恵の肩を掴み、勢いに任せて身体を突き飛ばしていた。  夏目の腕力は若い男に比べたら大したものではない。  しかし、華奢な萌恵は簡単にバランスを崩し、そのまま畳の上に仰向けの状態で倒れてしまった。  幸い、障害物はなかったために頭を強くぶつけることはなかった。  だが、障害物があろうとなかろうと、か弱い女子の身体を力任せに倒すなど、あってはならないことだ。  冷静さを取り戻した夏目は、膝を着いたままの姿勢でそろそろと萌恵に近付く。 「――大丈夫……?」  恐る恐る訊ねてみた。  萌恵は夏目の視線を逃れるように、強く瞼を閉じている。 「――痛い……」  絞り出すように萌恵が呟く。 「凄く……、痛い……」  もしかして、打ち所が悪かったのだろうか。  そう思った夏目は、萌恵の後頭部と畳の間に手を滑らせようとした。 「胸が……、痛……」  萌恵から嗚咽が漏れた。  両手で顔を覆い、時おりしゃくり上げる。  夏目の手は宙に浮いたまま止まった。  やはり――いや、想像以上に萌恵の心は傷付いていた。  つい弾みで、などというのは決して理由にならない。  夏目は戸惑った。  このまま、萌恵を泣かせたままにしておくのか。  そっとしたい気持ちもないではないが、何もせず放っておくことも出来ない。 「――すまなかった……」  やっとの思いで口にした。  恐々と萌恵の額に触れ、壊れものを扱うように優しく撫でる。 「酷いことをしてしまった……。理由が何であれ、君を……、とても傷付けてしまった……」  言いわけはしなかった。  否、出来なかった。  ただ、萌恵の心をどうしたら少しでも癒せるのか。  夏目は考えた。
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