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1st side -Natsume-*Act.6-02

 あらかた準備が整うと、居間はいい感じに暖かくなっていた。 「じゃあ、そろそろ乾杯しようか?」  夏目はスクリュードライバーの缶を開け、それを萌恵に差し出す。  萌恵は遠慮がちに、けれども素直にグラスを手に取る。  静かに注がれるオレンジ色の酒からは、パチパチと炭酸が弾けた。 「私も注ぎます」  手酌をしようとしていた夏目からビール缶を奪い取った萌恵は、先ほどの夏目のようにグラスにビールを注いでゆく。  だが、慣れていない萌恵が注ぐと、白い泡がグラスの三分の一を占め、琥珀色の液体はわずかしか入らなかった。 「ありがとう」  夏目は口元に笑みを湛えながら礼を告げた。  入れ方が下手であろと、萌恵の一生懸命が何より嬉しかった。 「誕生日おめでとう」  照れ臭さを覚えながら、夏目と萌恵のグラスを軽くぶつけ合う。  夏目が泡だらけのビールを一気に煽る一方、萌恵はスクリュードライバーをちびちびと口にしている。 「ちょっと、苦いかも……」  そう言いながら、わずかに顔をしかめた。  夏目にはジュースにしか思えないカクテルも、酒初心者の萌恵にはまだ無理があるのだろう。 「無理しなくていいんだよ? 体質に合わなければ中毒も起こしかねない」 「いえ、大丈夫です」  夏目の心配に対し、萌恵は首を横に振る。  意地になっているのだろうか。 「どのみち、酒だけじゃ悪酔いしてしまう。ちゃんと食うもんも食わないとダメだよ?」 「――夏目さん、お父さんみたいです……」 「間違っちゃいないな。だって、君のお父さんと俺は同世代じゃない?」 「まあ、近いかもしれないですけど……」  父親と一括りにされたことが面白くなかったのか、萌恵はあからさまに唇を尖らせている。 (ここは逆に俺が機嫌を損ねる立場だと思うけどな……)  やれやれ、とひっそりと溜め息を漏らしながら、残っていた缶ビールをそのまま喉に流し込む。
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