5 / 17
1st side -Natsume-*Act.3-03
「夏目さんと、夜のデートがしたいです」
カップに口を付けていた夏目は、危うくコーヒーを噴き出しそうになった。
それをどうにかすんでのところで留めたものの、結局、ゲホゲホとむせてしまった。
「大丈夫、ですか?」
心配そうに顔を覗き込んでくる萌恵に、「大丈夫」と笑顔を取り繕って返す。
「ちょっと、君のお願いにビックリしただけだから。気にしないで」
夏目が言い終えたタイミングで、注文していた料理が運ばれてきた。
そこで会話は一旦中断された。
従業員は、夏目の前にミックスフライ御膳を、萌恵の前にチキンドリアとサラダを置くと、「ご注文の品は以上でよろしかったでしょうか?」と訊ねてくる。
夏目と萌恵は同時に頷いた。
「では、ごゆっくりどうぞ」
ふたりの返答を見届けてから、従業員は一礼してその場を去る。
従業員がだいぶ離れて行ってから、萌恵が、「あの」と夏目を覗ってきた。
「やっぱり、ダメですか……?」
どうやら、萌恵のお願いを却下されたと思い込んだらしい。
心なしか、哀しげに顔が歪んでいる。
「いや、そんなことはないけど」
夏目はフライにソースをかけながら言った。
「ただ、夜に出歩いたりしたら君の親御さんが心配するんじゃない? 君は自宅通勤組だろ? しかも女の子だ。俺が君の親だったら、四十過ぎのオヤジと夜のデートなんて快く思わないな」
「どうしてですか?」
「どうして、って……、今言った通りだけど?」
「そんなの偏見です」
夏目の精いっぱいの配慮に対し、萌恵は真顔でキッパリと言い返す。
「だって、私はもう未成年じゃなくなるんです。確かに実家暮らしですけど、少しでも家にお金を入れてます。ちょっとずつでも貯金もしてますし、ある程度は自立しているつもりです。それなのに、どうしていちいち干渉されないといけないんですか? 恋をするのに年齢差はそんなに障害になるものですか?」
マシンガンを撃ち込むように、萌恵が夏目を容赦なく攻撃してくる。
そもそも、ここでは夏目が責められる立場じゃないのだが、うっかり親になった気分で説教じみたことを口にしてしまったから、萌恵に火を点けてしまったらしい。
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい
ともだちとシェアしよう!