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1st side -Natsume-*Act.3-01

 その日も夏目は萌恵と外で逢った。  いつものように映画を観て、終わってから食事をする。  今日は映画館近くのファミリーレストランへ入った。  今までは萌恵を飽きさせないため、夏目なりにリサーチし、イタリアンや洋食、和食や中華と様々な店に行ったが、今日に限ってそこまで頭が回らず、結局、無難な線に落ち着いてしまった。  萌恵は相変わらず、不満を漏らさない。 「食べたいものがあるなら遠慮なく言っていいから」  そう促すも、萌恵は「大丈夫です」と口元に笑みを湛えた。 「それに、ファミレスだったら何でもあるじゃないですか。専門店に行くより、かえって選ぶ楽しみがあると思いますよ?」  萌恵の言うことはもっともだと思う。  だが、それでもいたたまれない気持ちになってしまう。  かと言って、他に良い店を探す時間もなかった。  ファミレスの従業員に案内され、窓際の席に着いてから、わりとすぐに注文するものを決めた。  萌恵が言っていたことに矛盾しているような気はしたが、夏目はあえて突っ込みを入れなかった。  料理が届くまでの間、それぞれドリンクバーから飲み物を選ぶ。  夏目はコーヒーを、萌恵はレモングラスのハーブティーを淹れて再び戻った。 「夏目さん」  ハーブティーを一口啜ってから、萌恵はカップを持ったまま夏目に真っ直ぐな視線を注いできた。  夏目は砂糖もミルクも入っていないブラックコーヒーを口にしたまま、「どうした?」とわずかに首を傾げる。  萌恵は少しばかり躊躇うような仕草を見せた。  両手で包み込んだカップに視線を落とし、それを揺すってハーブティーを波打たせる。  だが、再び顔を上げると、意を決したように口を開いた。 「私、来週の今日でハタチになるんです」 「ああ、もう君もハタチになるのか」 「いえ、〈やっと〉です」  真顔で強調するように修正され、夏目は肩を竦めた。  四十を超えている夏目にとって、一年が経つのはとても早く感じるものだが、若い萌恵にはまだまだ緩やかに思えるらしい。
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