18 / 20

第一章 偶然と必然*第六節

 入学式後、各クラスに戻って担任からの学校説明と一人一人の自己紹介を終えてから、ようやく下校となった。  明日からは早速、通常の授業が始まる。  新生活は嬉しいものだが、勉強は全く別で、考えただけでうんざりしてくる。 「おべんと忘れちゃダメだからね」  しっかり者の優奈は、校門前で美咲に念を押す。  美咲は、「分かってるってば!」と、頬を膨らませた。 「いくら何でもおべんとは忘れないよ。――教科書は怪しいけど……」 「そっちのがマズいでしょっ?」  美咲ならばやりかねないと思っているのか、優奈は心配そうに美咲を見つめる。 「もう……。こっちも気が気じゃないから、あとで確認のメールするから。今晩のうちから、忘れ物しないようにちゃんとチェックしときなよ?」 「やーん! 優奈ちゃん愛してるーっ!」  美咲は優奈に抱き着こうとしたが、サッと身体を翻して避けられてしまった。 「ちょっとそれ反則」  不満をあらわにして抗議する美咲に、優奈は、「『反則』じゃない!」と、突っ込みを入れてきた。 「こんな公衆の面前でなんて恥ずかしいに決まってんでしょっ? それに、あんたに抱き締められたら窒息しちゃうじゃない!」  何を大袈裟な、と思ったが、確かに、小柄な優奈を強く抱いたりしたら、必要以上に苦しませてしまいそうだ。 「しょうがないなあ……」  美咲は諦めて、広げていた両手を戻した。 「じゃあメール待ってるから。――絶対忘れないでよ?」 「忘れるわけないじゃん。私を誰だと思ってんの?」 「蒼井優奈さまです」 「結構。そんじゃまた」 「バイバーイ!」  優奈は美咲に手を振り、先に背を向けてしまった。  美咲はしばらく、優奈の背中を見届ける。 「また明日」  ポツリと口にすると、美咲もクルリと向きを変え、駅へ続く道を歩き始めた。
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい

ともだちとシェアしよう!