17 / 20

第一章 偶然と必然*第五節-02

「美咲がどんだけヤな思いをしたかってのはよーっく分かった! けどね、まずは場所を考えようか?」  そう言うと、優奈は顎をしゃくった。  その先には、黒だかりの集団がいる。  しかも彼らは、掲示物から視線を外し、そろって、美咲と優奈に注目していた。  美咲自身は全く気付かなかったが、どうやら、かなりの大音声だったらしい。  美咲と優奈は、彼らに向けて同時に愛想笑いを浮かべ、そそくさとその場を去る。  クラス編成は見られずじまいだったが、優奈が先に確認してくれたらしく、靴箱近くまで来てから、優奈と同じ三組になっていたと教えてくれた。 「また出席番号が前と後ろになったね」  満面の笑みを浮かべながら言う優奈に、美咲もまた、「だね」と、笑みを返した。  ちなみに、優奈とは小学、中学と同じ出身で、小学校では一年から四年まで、中学校では三年間ずっと同じクラスという不思議な縁で繋がっていた。  おまけに、互いの苗字が〈藍田〉と〈蒼井〉だから、出席番号も前後の並びとなることが多かった。  そして、今回もまた、その〈縁〉は続いた。  偶然であれ、必然であれ、一番の親友だと信じている優奈が側にいてくれるのは心強い。 「けど優奈、中学を卒業してから急に引っ越しちゃったもんねえ……」  外用の黒いローファーから学校指定の上履きに履き替えながら、美咲は口にした。 「高校も同じだから、一緒に通学出来るって楽しみにしてたのに……。すっごく淋しかった」 「うーん……、私も突然でビックリしちゃったんだけど……。でも、親の仕事の都合じゃ、子供の私にはどうにも出来ないしね。  ま、一緒に学校来るのは無理でも、学校では毎日逢えるんだし。それに、お昼だって一緒に食べれるんだから!」 「それもそっか」 「でしょ? だから落ち込む必要いっさいなし!」  優奈は腰に両手を当てて、大きく頷く。  150にも満たない小柄さの上、顔立ちも、未だに小学生と間違われるほどの可愛さだから、一見すると頼りなさそうだが、精神年齢は、美咲よりもだいぶ大人だ。  だから、優奈の成熟した大らかさに、美咲はいつも、おんぶに抱っこの状態だった。 「今はちょっとあれだけど、も少ししたらウチに遊びに来なよ。あ、私も美咲んトコ行ってもいい?」 「ウチのお母さんはお客様大好きだから、いつ来てもらっても大丈夫! じゃ、私は優奈さんからのご招待がくるのを楽しみに待ってますわ」 「ええ。その時は、美咲さんにとびっきりのおもてなしをさせていただきますわよ」  美咲と優奈は、わざとらしく澄ました敬語で会話を交わしてから、互いに顔を合わせ、クスクスと笑った。
いいね
ドキドキ
胸キュン
エロい
切ない
かわいい

ともだちとシェアしよう!