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第一章 偶然と必然*第四節-01

 外は見事な快晴だった。  透き通った空には筋雲が流れ、太陽も眩いばかりに降り注ぐ。  外気もまた、寒過ぎもせず、暑過ぎもせず清々しい。  暑いのも寒いのも嫌いな美咲には、今がまさに一番過ごしやすい時季だ。 (ずっとこの状態が続いてくれればありがたいって思うんだけどねえ……)  そんなことを考えながら、美咲は、焦げ茶色のストレートヘアに触れる。  昨年の今頃からハサミひとつ入れていないから、すでに背中の中心辺りまで伸びている。  そのうち、美容院に行こうと思ってはいたのだが、タイミングを逃すとなかなか行く気になれず、結局、今日こんにちに至ってしまった。 (あ、枝毛発見)  春の陽気から、美咲の気持ちは、毛先に出来た枝毛へと移った。  一度気になってしまうと、その部分だけ切りたい衝動に駆られるが、今はハサミがないし、仮にあったとしても、歩きながらの枝毛切りは危険極まりない。 (いっそのこと、これごと抜いちゃおっか。でもなあ……)  枝毛の出来た一本の髪を、抜くか抜かないかで悩んでいた時だった。  軽くではあったが、障害物にぶつかった。  痛みが全く感じられないどころか、ほんのりと温かな感触があったから、電柱のような固い物体ではないのはすぐに悟った。 「すっ、すみませんっ!」  美咲は、物体――ではなく、すぐ目の前にいた人間に慌てて頭を下げた。  相手が誰であれ、よそ見をしてぶつかったのだから非常に気まずい。
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