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序章 誇りと誓い*第一節-04

 やがて、男から深い溜め息が漏れた。 「面白い」  男は口角を吊り上げた。 「私も長きに渡りこの世のものを見続けてきたが、そなたのような考えを持つ者に逢ったことは未だかつてない。どの人間どもも、ただ、自らに課せられた宿命に縛られ、自らを追い詰め、破滅への道を辿っていった。  しかし、そなたはそんな愚かな者どもとは違うようだ。まだ、私と対等にやり合うにはまだまだ未熟ではあるがな」  男は一呼吸置き、続けた。 「十年後、またここへ来るが良い。あれもちょうど、その時に完全なる目覚めの時を迎えるであろう。あれが私の元へ再び戻るか、それとも、兄であったそなたの胸に飛び込むか……」 「――もし、お前ではなく俺を選んだら、その時はどうするつもりだ?」  少年の問いに、男は少しばかり瞼を閉じて思考を巡らせ、ゆっくりと目を開いた。 「そのようなことは、決してあってほしくないものだ」  男の答えが不満だったのか、少年はなおも、何か言いたげにしていた。  しかし、男はもう、これ以上は何も言う気はなかった。 「私もさすがに疲れた。ここに縛られている状態では、本来の半分も力を出すことが出来ぬ。  そなたも〈現〉へ戻れ。もう、話すことは何もない」  男はそう言うと、桜の幹に身体を溶け込ませる。  今度こそ、深い眠りへと落ちていった。  残された少年は、男が消えてもなお、幹を睨み続けた。 「俺は絶対、全力で守ってやる!」  声高らかに宣言し、両手で刀を構えて刀身を天へ翳す。  少年の強い信念に呼応するように、銀の刃は、桜舞う宵の中でキラリと眩い光を放った。 [序章-End]
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