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第3話

「それくらい分かってる」  昔と変わらない口喧嘩は、楽しいときもあれば、そうじゃないときもある。しかも大抵俺がやりこめられるので、起死回生と言わんばかりに、ここぞと責めてみた。 「今度からは、座って食べろよ」 「はいはい。どうぞ、お礼したげる」  この機を逃さないと言わんばかりに責めたというのに、目の前に差し出された食べかけのホットドッグを見て、思いっきり躊躇してしまった。 「お礼?」 (――もしやこれって、間接キスになるのでは!?) 「遠慮せずに食べなよ」  わざわざベンチから立ち上がり、口元にホットドッグを押しつけてきたので、意を決してかぶりついた。 「……んっ、美味い」  恥ずかしさや照れが頭の中を支配するせいで、味なんてものを感じる余裕はまったくなかった。このひとことを言うのが精いっぱい。  かぶりついた一口を延々とかみ砕いて、間接キスをなきものする作業をした。 「やっぱり美味しいでしょう? 」 「うん」 「だけどアンタ、おっきな口で噛みついたから、口の端にケチャップついてる」  そりゃあ格好悪いと、後悔した瞬間だった。
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