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ハロウィン番外編 コスプレ博士と包帯乙女(後編)

 大倉琉が八月の下旬に実家を飛び出しワンルームマンションへ引っ越したのには理由があった。  みっつ年上の姉、海玖(みく)が帰省してきたからだ。  五年前に結婚して九州へ嫁いだ彼女がわざわざ都内の実家へ戻ってきた。妊娠五ヶ月。お腹には両家待望の赤ん坊がいる。はじめ、嫁ぎ先で出産を考えていた彼女だったが、実家の方が両親が整形外科医とはいえ医師であるし、何かあったときに利便性のある都会に位置しているからと心配性の夫や義両親たちに説得され、渋々やって来た形だ。  ちなみに海玖の嫁ぎ先は病院ではなく、農家だ。医師の家系に生まれながら、我が道をいった姉は、高校時代に医療分野からバイオテクノロジー科学に興味を持った末、農工大へ入学、そのまま大学院まで進み農学博士になり、卒業と同時にサークル仲間だった農家の息子と結婚してしまった変わり者である。  医学博士号を持つ琉も同年代の医師のなかでは変わり者扱いされているが、姉と比べればまだまだマシだと思っている。  戻ってきた彼女は相変わらず弟が実家でひとりのうのうと暮らしながら勤務先との往復をしているのを見て失望したらしい。恋人くらいいると三葉のことをのろけても、職場と実家の往復にラブホが加わっただけじゃないと一蹴されてしまった。  ――付き合って二年だっけ? あんたも来年で三十だもんね。え、まだ二十八? 似たようなものじゃない、年下の彼女かぁ……別にひがんでなんかいません! ふーん、薬剤師さんなんだー。  実家暮らしじゃそう簡単に彼女を家に連れ込めないだろ、と言い訳をしたものの、じゃああんたが実家を飛び出して一人暮らしをすればいいだけのことでしょと言い返されてしまった。  姉の出産予定日は一月十日だという。なんだかんだ翌年の春までは実家でのんびりしてるから、この機会に半年でも一年でも実家から離れてみたら、と提案され、はじめは面倒臭そうに考えていた琉も、だんだんその気になってきた。  ――社会人三年目だとそろそろ結婚も考えてるんじゃない? 待たせたら逃げられちゃうわよ? それに、実家暮らしのお坊っちゃんのまま一緒に生活を始めたら、あたしみたいに苦労させることになると思うよ?  その言葉に琉が素直に頷き職場の近くの新築物件を賃貸契約したのは姉が帰省してきてから一週間後のことだった。  どうせ職場と家の往復は変わらない。すこし時間が縮まるくらいで、その空き時間も家事と睡眠に費やされることになった。  もともと外食が多いから自ら食事の準備をすることもない、せいぜい掃除洗濯の手間が増えるくらいだろうと思った琉だったが……引っ越しの手伝いを三葉にしてもらって以来、自分のテリトリーに愛しいひとがいるという状況に興奮して、あらぬ妄想ばかり繰り返すようになってしまった。  合鍵を渡したら、来てくれるだろうか。いきなり合鍵だと驚かれるだろうから、徐々に距離を詰めていった方がいいよな……  困った――部屋に呼ぶきっかけを、考えないと。  仕事帰りにラブホで逢うのが当たり前すぎて、自分の部屋にわざわざ呼ぶ、という行為が高尚なもののように思えてしまう。五月の彼女の誕生日はもう祝ってしまったし、クリスマスだとあと三ヶ月も先だ、きっかけになりそうなイベントなんかあったか……?  一人暮らしを初めて一ヶ月が経った残暑が厳しい九月のある日、カレンダーを睨みつけていた琉は、十月に用意されたお誂え向けのイベントを発見して、ニヤリとほくそ笑む。 「そうだ、仮装をしよう!」  ふたりきりの特別なハロウィンパーティを演出するため、琉は心を踊らせながら考える。  ――ミイラ男にフランケンシュタイン、仮装をするなら何がいいだろう? 仕事帰りにすぐ変身できるものの方がいいよな、だとしたら黒いスーツに赤いカラコン、牙をつければお手軽吸血鬼だ。そうだマント? 黒いマントのかわりに黒いバスタオルを首に巻くのはどうだろう、だけどごわごわするから別になくてもいいか……  そんななか、恋人が職場の包帯を廃棄処分すると言い出した。薬局から譲ってもらったダンボールには使用期限が切れた大量の包帯がある。そこで琉は思いつく。医療用として使えないのなら、思う存分楽しませてもらおう、ミイラ男に変身するのは時間がかかるから、三葉をミイラ女にするのはどうだろう。もちろん服は着せないで……    * * *  ――三葉ちゃんはコスプレしないの? 可愛いと思うんだけどなぁ。  店長の言葉を思い出して、全裸の状態で包帯をぐるぐるに巻かれた三葉は瞳を潤ませて恋人を睨みつける。 「もうっ、こんなことに使うなんて……っ、バカ、変態っ」 「一度包帯プレイしてみたかったんだよね〜、どう? ハダカで包帯巻かれるのって」 「ふつうに巻いてください……っ」  いまの三葉は蜘蛛の糸に囚われた蝶のような状態だ。蕩けるような口づけを浴びながら服を脱がされ、そのまま包帯を無造作に巻かれて手足を拘束されたかと思えば、四方八方に包帯が散らばるベッドの中央に大の字で縛り付けられて、さらに身動きの取れない状態にされてしまう。ぷっくり勃ちあがった乳首にも包帯をきつく巻かれ、太ももの付け根にまで包帯が絡みつく。くすぐったいとじたばたもがくたびに包帯が秘処をこすりたてて三葉を感じさせるのを嬉しそうに眺めながら、琉はうんうんと頷く。 「いい眺めだ……なんだか絵画みたいで」 「イヤです……見ないで……恥ずかしいっ」 「そう言われると、もっと愛でたくなるんだけどなあ」  淫らな格好のまま包帯で拘束された恋人を視姦していた琉は、もどかしそうに頬を赤らめ恥辱に震える三葉を、コスプレ用のカラーコンタクトレンズ越しに見つめ、満足そうに彼女の下肢を撫でていく。ふれられてひくっ、と反応する腰にも包帯が巻かれていて、ミイラ男ならぬミイラ女のような彼女の包帯を巻いたりほどいたりしながら琉は彼女をいやらしい気持ちへ導いていく。  ――今宵はハロウィン、生け贄に選ばれた乙女は全裸で包帯を巻かれ、闇の王である吸血鬼に捧げられるのだ。  鼠径部に巻きついていた包帯をしゅるりとほどけば、包帯には三葉の身体が分泌させたいやらしい愛蜜がたっぷり付着していた。こんな状態で感じちゃうなんて、やっぱり三葉くんは淫乱だよと勝ち誇った表情で、琉は牙のレプリカを放り投げてから、彼女の太ももの付け根にキスをする。 「はぁ……せんせ……」 「俺がミイラ男に変装することも考えたんだけど、包帯で淫らになる三葉くんが見たくてさ……」 「ひゃぁ」  しゅるしゅると胸元の包帯をほどいて、勃ちあがった乳首にしゃぶりつきながら、琉は快感に打ち震える恋人を追い詰めていく。 「ラブホじゃこんな風に包帯を散らかして思いっきりえっちなことできないものね? 俺のベッドで包帯に縛られて感じる三葉、可愛い。吸血鬼になった俺に食べられてくれるよね?」 「は、はい……っん!」  両方の乳首を啄まれながら、溢れる蜜で下肢に巻かれた包帯を湿らせる生贄の乙女は、ふだんとは異なるシチュエーションに胸を騒がせたまま、愛する吸血鬼に身体を捧げる契約に乞われるがまま首を振る。 「いい子だ……たくさん気持ちよくしてあげるからね」 「う――ぁあんっ!」  琉はそんな彼女の秘芽に蜜をまぶして、器用な指先でくちゅりくちゅくちゅ音を立てながら、擦り立てていく。全裸で包帯を巻かれベッドに縛りつけられた状態で、愛しい恋人はいとも簡単に自分の指で絶頂を迎えた。 「興奮しているのかな? まだまだ夜はこれからだよ?」 「だ、だって、せんせ……もう」 「だめだよ、味付けはまだ終わってないんだから」  蜜壺から新たに滲み出す愛液を膣奥に押し込むように己のひとさし指を動かして、達したばかりの彼女の膣壁のひくつきを堪能した琉は、空気を混ぜ込むように彼女の膣奥へ更に中指を挿入し、二本の指で彼女のナカを思い思いに掻き混ぜていく。 「ぁああっ――あっ」 「おへその下に、三葉くんが感じる場所があるんだものね。まずは俺の手と口で、たっぷりイって」 「はぅ……いじわる」 「素材を美味しく食べるために必要なことだよ、おとなしく感じてなさい」 「んっ――……ゃあっ!」  抵抗しようにも包帯に縛られた状態で、三葉は琉に蕩かされるばかり。ふたりでハロウィンパーティをしようと誘われて、はじめて彼の部屋で過ごす夜。もちろんエッチな展開があることは予想していた。けれど、こんなことになるなんて……!  三葉の期待を思いっきり斜め上に裏切った恋人は、吸血鬼のコスプレに興じるだけでなく、使い物にならない包帯を淫らなイタズラの道具にして、嬉しそうに三葉をイジメている。イヤだと拒めば彼はやめてくれるだろう。けれど勃起不全だ早漏だと落ち込んでいた頃が嘘のような彼の獰猛な姿にときめいてしまう自分がいるのも事実だから、たちが悪い。 「三葉のアソコ、ひくひくしてるね。どうしてほしいのかな?」 「……わかってるくせにっ」  何度も軽く達してはいるものの、どうしても最奥の、子宮口までは届かない。もどかしさに瞳を潤ませる三葉を見て、琉はようやく己の装束を脱ぎ始める。ほら、すっかり勃起しているじゃないの…… 「俺は三葉の可愛い口でおねだりしてほしいんだけどなぁ」 「いれて……」 「ん?」  弱々しい声で応えれば、焦らすようにスキンを装着していた彼にもっと大きい声でと促される。顔を真っ赤にして「せんせの、いれて!」と絶叫すれば、「よくできました」とばかりに彼の屹立が、彼女の蕩けきったナカへ突き刺さる。 「!」  貫かれ、声にならない悲鳴をあげる三葉の肩をぎゅっと抱いて、琉は腰を動かしはじめる。ガツガツと、余裕のない彼の動きに、三葉も甲高い喘鳴で応じて、絶叫する。  呼吸困難になりそうな彼女の絶頂を前に、琉もスキン越しに精を吐き出し、人工呼吸を行うように、三葉の唇へ自分のそれを重ね、深く、舌を絡めていく。  吐精を終えても琉の分身はかたいままだ。一瞬、意識を飛ばした三葉は未だに挿入されたままの彼の楔に我に却って、うそ、と目をまるくする。 「抜かないで、もう一回しよ?」  コンドームのなかの精液を気にすることもなく、三葉のナカで二回戦をはじめる琉の瞳は、カラコンよりも真っ赤に血走っている。 「ん……せんせ、気持ちいいこと、いっぱい……して」 「ふふ……三葉のナカ、絡みついていていやらしいなぁ。すぐにイきそうだよ」 「そしたら、またする?」 「ああ。しよっか?」  顔を見合わせてクスクス笑いながらキスをして、腰をゆるゆる動かしはじめた彼につられて、いつしか三葉も甘い啼き声をあげていた。  ふたりきりの甘くて特別なハロウィンの夜は、未だ、はじまったばかり。  包帯は、全裸で淫らに巻きつけられたままだけど……気持ちいいから、もうすこし、このままでもいっか、と三葉は観念してしまうのだった。 “劇薬博士の溺愛処方 ハロウィン番外編「コスプレ博士と包帯乙女」――fin.”
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