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第参幕 嘘ツキたちの革命前夜 * 4 *

「嫌い……こんなことするアマネ、嫌いっ……ぅ」 「嘘ツキ。俺の手と口ですぐに気持ちよくなるくせに」 「それは、アマネが……」 「そうだね、純真無垢なお嬢様をあの手この手でここまで快楽に従順なお人形さんにしたのは、歌姫の演技指導のおかげかな」  軽く達してすすり泣く翡翠を見下ろし、周はうん、と頷き履いていたズボンのベルトに手をかける。  いつものアマネなら、ここでよくできましたと翡翠の身体に口づけて行為をおしまいにする。  だけどいま、ここにいるのは歌姫としてのアマネではなく、婚約者としての周だ。  カチャリ、と異質な音で我に却った翡翠は、はじめて目にする彼の裸を前に、いまさらのように頬を赤らめる。 「莫迦――……」 「ずっと、我慢していた。はじめのうちは、色気ある歌姫に仕上げるためだって自分自身に言い訳して、翡翠に快楽を教え込んだ。だけど、俺の手で色っぽくはなひらいていく君を毎日のように見つめていたら、それだけじゃいられなくなった」  ほら、見てごらん、と自嘲するように下半身を示せば、翡翠は信じられないとでも言いたそうに口をぽかんと開けている。  皮膚から派生したそれは、赤黒く、奇怪なかたちをしていて、毒蛇の頭のようにも見える。周の屹立を前に、翡翠は好奇心を持ったらしい、不思議そうに首を傾げて問いかけた。 「……これが、おとこのひとの性器? こんなにおおきいのですか……」 「翡翠が可愛いから、おおきく、かたくなっているんだよ?」 「嘘」 「嘘なものか。先っぽを見て。透明な雫でてらてらと光っているだろ?」 「……まるで、涙みたい」 「そう。翡翠のなかに入りたい、って泣いているんだ」  周の茶化すような言動に、思わず翡翠はくすりと笑ってしまう。あれだけ嫌いだと言い張った男に無理矢理抱かれようとしているというのに、なぜだろう、最初に裏切られたと感じた烈火のような怒りは忽然と消えてしまっている。  きっと、目の前にいる周が、心の底から翡翠を愛したいと頑なになって訴えていることに、気づいてしまったからだ。  歌姫のアマネだって、翡翠が嫌がることはけしてしないで、気持ちいいことばかり教えてくれた。この先には、さらに素晴らしいことが待っているとも言っていた。けれどもそれは、男のひととでなければできないことだとも……  アマネはこうなることを予想していたのだろうか。愛する少女を小鳥遊愛間音の手で歌姫に育て上げると同時に、婚約者の金城朝周として花嫁に迎えることを。  ――だけどそうしたら、アマネもまた、歌姫でいることが叶わないのではないだろうか。  不安そうに周を見上げれば、怖がらせちゃったよね、と申し訳なさそうに翡翠の手枷にしていたリボンをほどき、あたまをぽん、と撫でる。敷布の上に散った栗色の髪の束を掬い上げ、口づけながら、周は慈しむように翡翠を見つめている。  許しを乞うような彼の素顔の前で、両手が自由になった翡翠はふるふると首を横に振る。  周とひとつになることを恐れていたわけではない、と。  けれど、男性器を自分の膣奥へ挿入する行為がぜんぜん怖くないとは言い切れない。  翡翠は考え事を放棄して、おそるおそる、そそり勃つ周のそれへ目をやり、ぽつりと零す。 「で、でもこんなおおきいの、どうやって……」 「はじめは指で翡翠のなかを拓いていくよ。アマネのときは二本までしか入れなかったけれど」  そうっと翡翠の脚をひらいて秘処に指を乗せた周は、さきほどの絶頂で濡れっぱなしの蜜口を確認してから、ひとさし指をゆっくりと膣奥へと侵入させてゆく。 「あっ……」 「ゆっくり息を吸って、吐いて……そう、上手だよ」  反対側の手で秘芽を弄りながら、周は翡翠の蜜洞に入れたひとさし指をくいくいと動かして、なかを拡げてゆく。痛くないかと確認されてから中指が加わり、翡翠のなかでバラバラに躍りだす。 「ぅあ……んっ」 「まだまだ締めつけがキツいね。もう一度、俺の手と口で達かせたほうがいいかな」 「えっ――……ひゃぁんっ!」  膣内に二本の指を差し込んだ状態で、周は翡翠の秘芽にしゃぶりつく。もう一方の手は両方の乳首を交互に、ダイヤルを捻るかのようにきゅっと摘まんで刺激する。 「そ、それダメぇ、また、イ、ちゃうの、……イっ……ゃあぁあ――……っ!」  三方向からの強烈な快感に、翡翠の爪先がきゅっと伸び、ぴゅるっと潮を噴き上げながら、びくびくびくっと身体が弾む。  あたまのなかが真っ白く点滅している状態のまま、濡れた瞳で周を見つめれば、彼は顔を真っ赤にして呟いている。 「あー、やっぱり可愛い……」 「――あまね?」  とろんとした表情で周の名を呼ぶ翡翠を熱っぽい瞳で見つめて、彼は喜びに浸っていた。それを見て、翡翠もこそばゆい気持ちになる。彼にもっと愛されたいと、身体だけでなく、心から強く願った瞬間だった。 「ひすい。ちからを抜いて……いくよ」   いまにもはちきれんばかりの彼の分身を手に、周は翡翠の名を呼びながら、亀頭を蜜口へと滑らせる。快楽を享受した翡翠の身体は物欲しそうにひくつき、周のそれを迎え入れようと淫靡な音を立てる。くちゅり。蜜園の入り口をゆっくりかき分け、蜜襞を擦りながら、彼が息を殺した状態で、翡翠の膣奥へと|挿入《はい》ってゆく。ほぐされた蜜口と異なり、蜜洞のなかはまだきつく、無理にでも腰を進めれば、翡翠の身体を壊してしまいそうだった。  けれど、翡翠は大丈夫だからと周の肩に腕をまわして女神のように微笑む。そのまま唇を重ねて、身体を重ねて。 「んうっ……ふあっっ……あぁあ――っ!」  翡翠は破瓜の瞬間を迎える。  身体を引き裂かれるような鋭い痛みに迸る声は、歌唱指導で発声したときよりも甲高く部屋中に響く。  つながった状態で、きつく抱き寄せられたまま。翡翠は周から降り注ぐ接吻の雨を顔中に浴びる。  そのまま数刻、じんじんする鈍い痛みに堪えていた翡翠だったが、やがて痛みだけではない不思議な感覚に気づき、こわごわと周の顔色をうかがう。 「痛かったよね、ごめんね……翡翠?」 「アマネ。なんだかわたし、変。むずむず、するの」 「そう? そっか……じゃあ、俺がいつものように、君のなかを気持ちよくさせてあげるよ」  ふふ、と笑って腰に手をまわした周は、ゆうるりと上下に身体を動かしはじめる。はじめのうちはゆっくりとした蠕動だったが、翡翠が甘い声を発すると同時に勢いを増してゆく。彼のふとくてかたい熱杭に貫かれる都度、翡翠は痛みよりも強い官能の波に浚われ、きゅん、と蜜筒を締めつけてしまう。膣奥から泉のように愛液がこぽりと湧きだす。もっともっとと求める身体の要求に、周の劣情もまた素直に応じ、ずんずんと腰をぶつけてゆく。言葉では言い表せない鮮やかな快感を与えられ、翡翠は彼とつながったまま、愛される悦びを味わった。   「んぁ、なにか、きちゃいます……あ、ま、ねっ! ゃあ――……っ」 「いいよ。一緒に、達こう――俺も、限界だ……っ!」  余裕を失った周に追い討ちをかけられるかのように激しく責められ、翡翠もまた、この日何度目かわからない絶頂に身を投げる。  そんな彼女をきつく抱きしめたまま、周もまた、汗を散らしながら、ぐっ、と腰を突き出す。  ともに息を切らし、艶めいた呼吸をして、ひとつになったふたりは、天国の門を開く――……        * * *     「翡翠」 「……もう、いい加減にしてください。朝ですよ、アマネさん」 「呼び捨てでいいのに」 「劇団員として雇われているいまはまだ、呼び捨てになどできません」 「ここでは俺の花嫁さん、だろ?」  翡翠を自分のものにした周は、浅い眠りを経てから、確認するように何度も翡翠を抱いた。  それがあまりにしつこくて、翡翠はこれ以上するならまた嫌いになりますとぷりぷり怒ったが、その顔も可愛いと囁かれ、なし崩し的に抱かれてしまう。  そんなことを繰り返していたから、翡翠の身体はもう、くたくたになっていた。 「でも、わたしと結婚するってことは、歌姫をやめるってことなのでは?」 「そんなことはさせないさ。翡翠は何も心配しないでいい……ただ」  翡翠の陶器のような肌には、周が刻んだ数多もの接吻痕が残っている。服から隠れる場所だけにわざとつけられたその印は、いまのいままで彼が我慢していた独占欲の現れだ。それは敷布に散った破瓜の血同様、もはや、男を知らぬ|処女《おとめ》ではない証ともいえる。  周は翡翠の肌に刻んだ赤い薔薇の花のような痕を指でつつつと辿りながら、淋しそうに告げる。 「公演が終わるまでは、俺のことを嫌いなままでいて……」
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