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「きっと貴方は悪い呪いにかかってるだけなのです」 「まあ既に生まれた時からそのような、竹を粉砕して川に捨てるような性格でしたが」 「でも仕方ない。それでも貴方だけじゃないのです。貴方は戦いでも、彼も戦っているならば、それは戦争」 「一方的な戦いではなく、互いに平和になりたいがための、自分の正義を掲げた戦争なのです」 ごちゃごちゃと、喋るな。 フライパンをカンカンとおたまで叩いているように、頭の中に響いている。 戦争じゃない。私は、私だけでこの婚活を勝ち抜いていく。 だから。 「うっせー」 ガバッと勢いついて起き上がりながら、ぶつぶつ陰気に喋り腐ってる方角へ拳をひりあげる。 ヒットしたのか、確かな手ごたえの中、カツンカツンと床に何か当たって転がっていく。 「二日酔いの頭に響くんだよ、ゲロっ」 飲み過ぎた酒のせいか、蛙みたいな声が出る。 それと同時にブワッと目の前にヴァージンロードが浮かびあがる。 ヴァージンロードの向こうには、新郎が白のタキシードを着て立っている。 その新郎のイケメンたるは否や、鷲上さんもラム肉野郎も凌駕する勢いだ。 まさに空から舞い降りた天使。ダビテ像。 鼻梁高く、その上ちょっと釣り上がった目はどこか野性的で鋭いのに、後ろへ流す様にセットされた髪が知的な雰囲気を醸し出し、私のタイプ、高学歴高収入そうなオーラを放っている。 先ほど床に落ちたのは眼鏡だったのか、眼鏡をかけたその人は、頬に手を当てながら私に微笑んでいる。 「いい加減、馬鹿な夢から覚めて頂けませんか?」 「え?」 「いつまで蛙みたいにみっともなく足を広げて眠ってるんですか。痴女ですか、汚いですよ」 ばっちーんと音が鳴り響くほど勢いよく足を閉じさせられた。 「何度も締めても開くんです。建てつけが悪いのか本当に蛙になったのか」 「えっと……?」 ズキズキと痛む頭を押さえながら周りを見渡す。 どっかの会社から配布されてそうなカレンダーが貼られ、荷物置きの箱の中には私のバッグやコートがぐちゃぐちゃに入れられている。 私が眠っているのは、鷹上さんのホテルのベッドではなく、硬くて寝心地の悪い安そうな簡易ベッド。 おまけに新郎のタキシード服姿の天使かと思っていた相手は、白衣を着て頬を押さえている。 「……病院?」 「ゆるゆるの頭でも、理解できるのですね。正解です」 偉いですねーと子どもみたいに褒められ拍手された後、その人のちょっと赤くなった頬を見る。 間違いない。さきほど寝ぼけながら振り上げた拳がクリーンヒットしている。 「昨晩、酔いつぶされ体よくタクシーで追い出されそうだった貴方を私が保護しました」 「貴方が……」 凄く私の事を見下しているのは分かるのだけど、でも。 『あの、医者ですよね? 収入いくらですか?』と思わず聞いてしまいそうになるほど、格好良い。 私の理想が全て揃っている。 「あの……お礼を」 「お礼なら身体で結構です」 整った顔が近づいてくる。 やはりこれはまだ夢を見ているのだろうか。 私の身体でいいのなら勿論オッケーだ。 しかもこの状況って、私に一目ぼれして保護してくれたのかもしれないし。 突発的な行動だとしたら、避妊せずそのままデキ婚を狙えるかもしれない? また安っぽいベッドに押し倒されて、イケメンな医者の顔を見上げる。 「いいんですね?」 「はい」 もちろん。願ったり敵ったりということはこの事だろうか。 「ですが、抱いたら蛙になるかもしれませんよ」 「……蛙?」 首を傾げる私に対し、目の前の金のなる木はクククっと拳を口に当てて上品に笑った。 「貴方が眠っている時に、貴方の腕に注射をしました。――蛙になる薬を」
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