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婚活ウォー?!ズ!

気付けば、プライドが邪魔ばかりして可愛げのないまま29歳まで来てしまった。 引き返せないなら、プライドを守りつつ一生の幸せを掴もうと決めたんだ。 「ここのラム肉は、ワインにあうんだ。君、知ってる? ラムとマトンの違いを」 さっきからぺっちゃくちゃぺちゃくちゃ、蘊蓄を垂れるか肉を食うか唾を飛ばすかしかしないこの男に、笑顔を貼りつけていた頬の筋肉が崩壊してきた。 年収一千万以上の男となら、とりあえず寝てみようと決めてホテルにやってきたがこの男は失敗だったかもしれない。 もし結婚したら、食事中こいつの蘊蓄を聞かなきゃいけなるわけで。 どうしよう。エッチ中に『君、知ってる? ここが性感帯なんだよ』とか言われたら、濡れるものも濡れやしないじゃん。 「ねえ、聞いてる?」 うお。次は聞いてる、かよ。韻踏まなくていいって。 「うんうん。博識なんだなあって関心してたの。凄いなあ」 早く食えよ、と本当は思ってたんだけどね。 T大出身の商社マン、おまけに東京23区にマンション持っていて、兄弟なし。顔も悪くない。若干頭が薄くなりそうな傾向があるが別に育ててやるから問題はない。 ただこんな良い物件が36歳まで無事だったって怪しいよね。 合コンで知り合った人の同じ会社の先輩、としか聞いてなかった。 でもなかなか悪くないな。  ラム肉を切った後に、一口食べてワインを口に含み食べた方はどうなんだって思うけど、それぐらいいつでも調教できるだろうし。 「それでね、君に言っておきたいことがあるんだ」 「何―?」 耳に髪をかけながらワインに手を伸ばす。 すると、彼はワインで光った唇を、満足げに揺らす。 「三年以内に男の子が生めなかった場合は、君に慰謝料請求するよ」 「なあんだ。三年以内に慰謝料……は?」 「俺はまだ自分の子種を女性に渡したことがない。結婚まで大切にしたいからね。母にもいわれているんだ。三年以内に跡取りを産めなければ」 「――は? 童貞? 36で? は?」 ホテルのレストランに来たってことはこのまま上に部屋取ってるんじゃないの?  てか初めてのデートでデザート前になんで慰謝料の話? 「ここっていくらでしたっけ」 「ラム肉?」 「ラム肉はもういいです。ディナー代です。お支払します。で、帰ります」 私が財布から一円単位まできっちり出してテーブルの上に置き、彼の前に差し出す。 「私には時間が無いの。女を産む道具としか思ってない男には興味ないから」 ごちそうさま、と笑って立ち上がると、蘊蓄を言いたそうな口のままフリーズしていた。 気持ち悪いんだよ。子種発言童貞野郎。
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