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『もしもし興雅? ちょっと今いいかしら?』 「…………………………いや今は」 『大丈夫なんでしょ分かってんのよ』 「…………なんだ…」 タイミングの良すぎる舞からの電話に、なぜ誰からの着信か確認しなかったのか、数秒前の自分を呪う。ほぼ反射的に通話を選択してしまった。 準備を終え、あとは指示待ち…という状態の浅川たちに待て、と手でジェスチャーする。 『あのね、紅ちゃんのことなんだけど』 「あぁやっと治ったのか、なら迎えを…」 『いいえまだよ。それにやっとって……浅川が連れてきてからまだ1日しか経ってないじゃない』 「…早く用件を言え」 『はぁ……紅ちゃん、あの子ちょっとやばいわよ。足首の傷、相当深いから覚醒したらそれなりに痛がるかなって踏んでたんだけどまったくその素振りがないの。いくらなんでも痛みに慣れすぎてるっていうか……。あと、とにかく自己嫌悪、自己否定の塊ってとこよ。心理学なんて取ってなかったから全然わかんないけど。……アンタ、あの子どうするつもりなの…?』 実父の隠し子であった舞。なので『妹』という存在とはいえ、血は半分しか繋がっていない。 最初に会ったのは、自分が成人して3年が経った日のことだった。その日、唐突に「家族全員集まれ」と父親からの召集がかかったので妙だとは思った。だがまさか、隠し子の紹介だとは誰が想像するものか。 凛とした姿勢を崩さず「あぁ、この女は確実に父親の血を引いている」と感じたのは初めての顔合わせの時のみで、それ以降は「本当に隠し子なのか?」という疑念に変わっている。 …………理由は口のうるささだ。 「…おい舞」 『だからね、紅ちゃんが………ってなに?』 「物事は丁寧に且つ簡潔に話せといつも言っているだろう。いつまで続くんだ、それ」 『やぁね、かな~~り簡単に喋ってるわよ? 興雅、もしかして1回で把握できる情報量少ないんじゃない?』 こう、こういう所があるのだ…舞には。 そう言えば俺が聞かざるをえないと分かってて言っている。頭は相当にキレるが、それがどうも厄介な方へ働くことのが多いのでどうしたものかと呆れてしまう。 「それで、あのガキがどうしたんだ」 『だ・か・ら! アンタ、あんないたいけな可愛い女の子、どうするつもりなの?!』 かわいい…? あれが…? 『言っとくけどね、本人はそんなに痛がってないけど暫くは絶対安静よ。足首の傷、膿んだら大変だもの』 …舞ならそう言うということは、端からわかっていた。怪我なんぞ関係ないから早く返せと言っても、そうしない事も。なら、強行突破に出るしか道はない。 あんな得体の知れないガキ、いつまでもうろつかれたら堪ったものじゃない。 「……まぁ、俺には関係ないがな」 『は?! ちょ、興雅っ……』 めんどくさいのでここで通話を切る。指示を待っていた部下に、行け、と目で指示をする。 舞の住んでいるマンションはそれなりにセキュリティが固い。だが正直、その道の人間御用達……というレベルではないので何とかできてしまう。 「ボス、準備整いました」 「さっさと連れてこい」 マンションに併設されている地下駐車場。上階直通エレベーターの1番近くに車を停め、部下を舞の部屋へと向かわせる。 悪いな、舞。種は、種のうちにもみ消すものなんだ。
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