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「……落ちたか」 やりすぎた、とは思わない。だが失敗したな、と多少の後悔をする。 これでは、これ以上聞き出すことができない。 「おい、あとやっといてくれ」 己のみを整えると、そのまま部屋をあとにした。 甚だ信じがたいが、本当に興味と好奇心だけであの場を覗いていたらしい。明確な意思を持ってあの場にいた訳ではないのは確か、ということは理解した。 どれだけ詰問しても何も出てこず、ただただ困惑していたのがいい証拠だ。 「ボス、ただいま戻りました」 「…入れ」 あの様子からして、どこかに雇われてあの場にいた可能性も低い。リスクは低いと判断した。 自分は見当違いをしている可能性がある、という事を留めておく必要がある。 「舞からのメッセージは見ている。そうびくつくな」 「……申し訳ありません」 浅川が戻ってくるすこし前だ。浅川にきつく当たるな、不満なら私が受けてたつ、というメッセージが舞から届いていた。 「あれで強情だからな、今はそっとしておけ」 「…はい……今は、ですか」 そう。今は、だ。 件の子供でもない、橋本の密取引は本当に見ていただけ。とんだ無駄な時間を過ごしたと思っていたが、調べさせると面白いことが判明した。 「お前が舞の所へ行っている間、あのガキについて少し調べさせた。……あのガキ、香賀(こうが)の娘だ」 「! 香賀の、ですか。とんだ結び付きがあったものですね」 主として経営している会社の他に、いくつか個人経営の小さな金融関連の社を持っている。所謂「金貸し」というものをやっていて、どうしようもないクズに金を貸す。 契約をしている(そういう事にしておく)(クズ)の中に、香賀という男がいた。貸し付けた金額は客の中でも群を抜いて高額。予想はしていたが(というかそうにしかならない)、奴の借金額はあっという間に4桁となった。何をしたらそんな額になるのかはまったくの謎だが、今となっては金を返すために金を借りるの悪循環に陥っている。 妻帯者で娘も1人いるが、相手の女も3桁の借金を抱えた驚くほどのクズだった。 なんの躊躇いもなく、金を作るために1人娘を売ると言う女だ。 「…いつ行かせますか」 「…いや、俺が行く。明日、舞が家を出たのを確認したらすぐに出る」 その1人娘はまだ14のガキだ。規制の厳しい今じゃ、どの店にも出せない。 母親は娘を売ると言うが、店に出すまでの2年間にかかる金はすべて借金に上乗せされる。 ……だがそれは『店に出せば』の話であり、『出さない』という選択肢も勿論ある。 「了解です。それでは失礼します」 「あぁ」 報告に事務所へ戻ってきた浅川は、手本のような礼を1つし、部屋から出ていった。 『出さない』具体例をあげるならば、それは1つしかない。 「…誰でもかれでも、医者の言う事はきくと思うなよ」 俺の周囲を嗅ぎ回っているとかいうガキの案件、詳細がまだあがってきていない。 普段はガキなんて一切相手にしない奴らだ。調査に手間取ってしまうのは、今回ばかりは仕方ない。 恐らくまだ時間がかかるとの浅川からの提言があった。その間は、あの女のガキがそうである、という疑惑は晴れない。 ……なら、自分の手元に置いておくのが間違いないだろう。
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