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事務所にいる時、その報告は入った。 「ボス、橋村の部下から連絡が入りました。例の子供を見つけたと」 「……なに?」 下からの報告は決まった時間に上がってくるように指示してある。だがそれを破ってまで上がってきた報告に一瞬顔をしかめそうになったが、 “例の子供” の言葉を聞き、考えが変わる。 「待て。……なぜ橋村がその子供を捕らえた?」 「…申し訳ありせん。理由を尋ねたのですが早くボスを呼べの一点張りでして…」 例の子供。頭に思い浮かべるだけでも嫌気が差す。 最近、何かに尾行されていたり、見られている、と感じる事が多々あった。しかしそれは職業柄、そして立場上で見ればある意味仕方のないものであり、気に留めないようにしていた。 ……が。その直後、敵対組織に機密の情報が漏れた可能性があるとの報告が入り、柄にもなく焦る思いをしたのはまだ記憶に新しい。 よくよく調べると、相手方がこちらの情報を探る為に雇ったのが年端もいかない「子供」であった、ということが明らかになった。 「……車を手配しろ」 こちらとてアホでない。1度そういう情報を入手したのなら、徹底的に潰さないと気が済まない。正直、ガキ相手に何をと思うが機密の情報が向こうに筒抜けなんてのはたまったものじゃない。いくら金を積まれようがもう2度とこちらには手を出さないようにする必要がある。 「おい、寝んなって」 ところがどうだ。現場に到着して明らかになったのは部下・橋村の不正なサイドビジネスだった。自分の社では基本、サイドビジネスは禁止している。それが社にとって悪影響を及ぼす可能性のあるものは尚更だ。それに、自分の会社に勤めている人間に副業を強いらなければならないほど低い賃金は渡していない。 「…っひ」 橋村の顔面を蹴り上げる。顔面はもうこれ以上ないほどに膨れ上がり、果たして視界は良好なのだろうか、と考えた所で、秘書の浅川が声をかけてきた。 「ボス、こちらは整ったとのことです」 「そうか。……コレ、あと適当にやっとけ」 「…かしこまりました」 甚だ面倒だが橋村(コイツ)のおかげで1つ、余計な手間ができてしまった。結局、橋村が捕えたとかいうガキは白か黒かは判明しなかった。100%の否定はまだできない。判明はしなかったが、それは '例の子供' に関してであり、もう1件に関しては決定的だ。そのもう1件、というのが橋村の副業に関して。 「まだ落ちてんだろ」 「どうでしょう、だいぶ加減してたようですが…」 海辺のとある倉庫でドラッグの密売をしていた橋村。これから向かう先にいるガキ__しかも女__は、その橋村の密売現場を目撃していた。しかも状況を聞けば偶然に居合わせたで訳ではなく、どうやらまったくの自らの意思らしい…ときた。他から雇われたが、口に出すなと言われている可能性もある。 「ったく…めんどくせぇ……」 もしも、だ。もしもその、大雨の中ずぶ濡れになりながら倉庫の中を覗き見るような、訳のわからんガキが橋村達の会話を聞いていたとしたら。そして橋村が、その相手に何か要らん事を喋っていたとしたら。 少々特殊な職業、という自覚はある。働いている連中も、複雑な身の上が多い。故に、割と容易に「拷問」というものができたりもする。勿論、まだ年端もいかない女のガキをそこまで痛めつけたりはしない。ただ、情報を握っている可能性がないとも言い切れない。…自分たちが掴み切れていないだけで、もしかするとどこか別の組織から雇われている可能性だって捨てきれない。 「女か…。おい、あれ用意しとけ」 「わかりました。後でお届けします」 めんどくさい…が、種は種のうちに潰すに限る。 「コイツか。…まだ気失ってんじゃねぇか」 「ボ、ボス…! お疲れ様です」 着いた部屋に、窓はない。裸の電球と、簡素なベッドが1つあるだけ。まだ床で転がり意識を飛ばしているそのガキは、想像以上にやせ細っていた。女とは一目で判別しがたい程に。 火傷、青あざ、ミミズ腫れに切り傷。どう考えても、いまいま振るわれた拳が原因ではない傷が大量にあった。 それに、拷問(これ)専用に人を雇っている。跡が残るような痛めつけ方はしていないはずだ。 「お前らもういいぞ、呼ぶまで出てろ」 頭の中で、このガキをどう追い込んでいくかを考え始めた。
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