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「…?! おい、なんの音だ!」 山下は取り決めた時間にだいぶ遅れたが取引__ブツと金の受け渡し__は問題なく終わり、また今回も上手く事が済んだ………そう、橋村が安堵した時だった。 倉庫の外から聞こえる大きな音。……何かが、落ちたような……。 「……っ、まさか…!」 倉庫内を見渡し、愕然とした。この倉庫、窓があるのだ。なんなら、人が中を覗き見ることだって可能だろう。 窓の位置はそれなりに高い部分に設置されている。しかし足元に何かを積めば……。 状況を察知した橋村の部下が、慌てた様子で外を確認した。橋村もそれに続く。 「橋村さん、いました!」 「捕まえろ! 絶対に逃がすな!!」 外で橋村が見たもの、それは拍子抜けするくらいに幼い女の子供だった。だが明らかに尻もちをついている様子と、その子供の前にうず高く積まれた粗大ゴミの山。間違いなかった。 脳裏にわいた1つの可能性も相まって、この子供が倉庫の中の取引を覗いていた…という考えに、橋村は確信を抱いた。 「あ、おい……!」 あまりにも幼い。橋村の部下も同じことを考えたようで、逃げようと走り出したのに対して一瞬反応が遅れていた。よく見れば子供は右足首付近に怪我をしている。しかも酷く濡れているとはいえ、制服の上からでもわかる身体の細さ。 「あれじゃ大の男相手に逃げ切れる体力はないだろう。この敷地から出すなよ」 近くにいた部下に、更に細かな指示を出す。倉庫の中を覗かれ、それが子供だと分かった時は相当に焦ったがしかし、幸いにもその子供は予想外にひ弱そうだった。 「あぁそれと。ボスの仰っていたもあるからな。あまり傷つけずに連れてこい」 最近、自分の管轄しているクラブの売上がよくない状況が続いていた。ボスからも、もう暫くこの状況が続くようなら……と言われていたところだった。 しかし、ボス自ら忠告があること自体が幸いなことなのだ。あの冷徹非道な男は、なんの前触れもなしに、自分にとって不利益であると分かれば容赦なく切り捨てる。それを考えれば、今回の橋村への対応はあまりに優しいものと捉えていい。 「これで挽回できる……!」 自分が今まで行ってきた密商売が漏れることもない、それどころかボスにとって有益な土産が手に入る…。それを考えただけで、口元がゆるむのを橋村はおさえられなかった。
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