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楽しいって感じた。 さっき聞こえた音の正体は、黒いスーツを来た男の人の足音だった。それを辿って、見つからないように、気づかれないようにコンテナの影に隠れながら移動していく。 それが、自分でもびっくりするぐらい「楽しい」と感じた。非日常的な何かに、私はすごく興奮してた。 暫くあとをつけて、男の人が入っていったのは多きな倉庫。学校くらいの高さの倉庫は、隣にいくつも同じくらいのものが連なっていて、男の人が入っていったのは1番端っこ。 もうやめよう。やめた方がいい。もし見つかったら、どうなっちゃうかも分からないんだから____。 頭の中でそう思うのと同時に、どうしても、中を覗きたかった。覗いてどうするの、何があるかも分からないのに。相反する考えがぐるぐるして、結局、好奇心には勝てなかった。 「……、あ」 倉庫の横を見ると、あぁ、なんてラッキーなんだろう。 倉庫の横側には窓があって、その下には粗大ゴミが棄てられていた。机にイスに、冷蔵庫。きっと、あの上にのぼれば……。 雨は未だに強く降ってる。……ちょっと弱くなったかな? でももう全身ぐっしょりで、そんなの気にならない。ちょっと制服汚れるけど、まぁいいや。どうせ、叩かれたり「汚い」って言われるのはいつもと変わらないもん。 「よ、いしょ…」 ちょっと滑るそこを落ちないように登って、窓が見える位置までくる。ゆっくり、慎重に中を除くと、案外窓は綺麗でよく中が見えた。 電気はついてるはずだけどちょっと薄暗くて、でも何人か人がいるのはわかった。……なんか、お話してる。なんのお話してるんだろう。気になるな…。別に知ったから何というわけではない。ただひたすらに好奇心だった。 もしかしたら、今の私は好奇心の塊かもしれない…なんて柄にもなく普段考えないような事ばっかり頭に浮かぶ。 楽しい、本当に楽しい。知らなかった、私が、こんな事を楽しいと思う人間だったなんて。 「、わ…っ」 でも、きっと罰が当たってしまったんだ。こんな、いつもの私なら絶対にしない事をしちゃったから。 知らない人のお話してる所を覗き見るなんて、悪いことをしちゃったから……。 あんまり丈夫そうじゃない、大きめのテーブルの上に乗った冷蔵庫。その上に私はのぼった。そして、今は雨が降っていて、すごく滑りやすい。 窓から覗ける倉庫の中に気をとられすぎて、私は見事に地面へ落ちた。 そんなに高くはなかったけど、落ちた時に怪我した右足をぶつけて、とっても痛かった。 あぁ、いたい、とってもいたい。ちゃんと消毒もしてない。どうしよう、大丈夫かな……。 がらららっ 「…?」 なんか…え、今のって、なんの音…… 「橋村さん、いました!」 「捕まえろ! 絶対に逃がすなっ…!」 …え、え、え……?! なに、まって………なにが、起きてるの…? 状況は飲み込めない。扉が開くような音がしたと思ったら、いきなり現れたスーツの男の人たち。……あ、もしかして倉庫の中にいた人たちかな? ……が、こっち来る…? ………………逃げ、なきゃ。
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