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「触らないでよ! 汚いなぁ…!」 中学校は、義務教育だから仕方なく通わせてやってんのよ。 いつか、お母さんに言われた事だ。「絶対に休むな」と。「金払ってやってんだから、もったいないでしょ」と。 「アンタがちゃんと学校行かないと私が面倒な事になるのよ。お願いだから何も起こすんじゃないわよ」とも言われた。 私の家はお金がないから、制服は1セットしか買えなかったんだ。部活もできない。だから、帰ったらまずは制服の洗濯をしなくちゃいけない。洗濯機は住んでいるアパートにあるから、それを使える。 夏は好き。制服がすぐに乾くから。冬は嫌い。どれだけ頑張っても朝までには乾いてくれないから。だから、濡れたまま学校に行ったり、洗わないで学校に行ったり。 お風呂は、毎日入れない。お前のために水道代出すのがバカバカしい、んだって。だから、たまにお母さんの機嫌が良いときに¥200を貰って、近くの銭湯に行くの。 1週間に3回入れない時もあるから、頭がかゆくなっちゃう。 「おい、そいつ触ると貧乏になるぜ」 そんな生活をしている私に、クラスの皆は近づきたがらない。 今だって、私の近くに転がってきたシャーペンを拾っただけなのに。それを、渡そうとしただけなのに。 「ごめん…ね」 「もうそれいらないから捨てて! ホント最悪!」 「うん…」 男子からも、女子からも、こんな風。でも別に嫌じゃない。だって、家にいるよりは楽だから。お父さんにタバコを押し付けられないし、拳で殴られない。 昔、1回だけ学校にいるのが辛くて、公園でずる休みをした事がある。その晩、今までの中で1番、という位にお母さんが怒った。ずーっと、叩かれて蹴られた。 「◯◯ちゃんかわいそー。せっかく買ったばっかりだったのにね」 私の手元に転がってきたシャーペンは、私が使ってる短い鉛筆よりずっとずっと可愛かった。 いいな、と思った。あの子はきっと、お母さんに叩かれた事がないんだろうな。お父さんに、殴られたことがないんだろうな。 いいな。私も、シャーペン使ってみたいな。……もう、捨てるって、言ってたよね。もらっても、いいかな。 「…かわいい、このシャーペン……」 かわいいシャーペンが使える嬉しさに、家で1人ごちた。 でも、その子のシャーペンは、中で芯が折れていて使えなかった。
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